守る相手がいるから戦える 『RATMAN』 12巻

さらわれたミレアを助け出すため、
シンとの最終決戦へと向かったラットマン。
圧倒的な力と対峙する中、
一つの絶望は巨大な災厄へと変貌し・・・

真のヒーローとは、正義とは一体何なのか。
勧善懲悪とは異なる視点で一石を投じた本作ですが、
今回でいよいよ完結となります。
6年間の長きに渡る連載でしたが、
巻を増すごとに右肩上がりで増してゆくテンションには、
子供の頃に特撮ものを見ていたときの気持ちを思いだすかのような感じで、
毎回盛り上がらせてもらいました。
ラストバトルも単純な一騎打ちだけに終始することなく、
今までに登場したキャラが一同に集結したりと、
二転三転するため最後まで気が抜けません。
異色である一方でバトルものとしてド直球の熱さで、
読後はまさしく完全燃焼したって状態に。
一体何回目頭が熱くなったことやら。

中の人は人間なんだから悩みもするし葛藤もする。
こういう泥臭いヒーロー像もあってもいいと思うんだ。
しっかりと大団円で終わってくれましたし、
ありがとうとお疲れ様という気持ちでいっぱいです。
しかも最後を締め括る帯書きコメントがみつみ美里先生という・・・
犬威先生もこみパのオフィシャルコミック(カバー下では瑞希が!)とか、
更に遡るとPiaキャロ2のアンソロとか描かれてましたし、
まさに最後を締め括るに相応しいサプライズですね。


真のヒーローとは・・・
世間的には正義の味方という体面をしていても、
行動原理もそうとは限らない。
例え悪と呼ばれようとも行為は何も間違ってはいない。
そして英雄の血を受け継ぐ者が英雄であるとは限らない。
世の中のあらゆる事に通じる現実を浮き彫りにして、
ヒーローとは何か、正義とは何か、
既存の観念を根底から覆す命題にずっと考えさせられてきましたが、
本作なりに導き出された答えにもまた色々と思うところがありますね。

大切なものを守るために戦うとき、誰でもヒーロー足りえる。
身近な例で言えば家庭を守るために働く父親なんてまさにそれですね。
元々確固とした定義や唯一解なんてものは存在しないのだから、
人それぞれで考えが違うことなんて当たり前のこと。
しかし本作で提示されたそれは、
間違いなく模範解答足りえるだけの説得力を持ってますよ。
それは時として己の信念であり、恩義であり、好きな人であり。
暴走したラットマンを止めるために戦うために集結したヒーローたちは、
まさしくその名に恥じないものでした。

バトルものとして見ればまさに王道とも言える直球ぶりはやっぱり熱いですよ。
「倒す」のではなくて、「守る」ために戦う。
これだけの想いが一つになったのを見て、
修斗が今までやって来たことは間違っていなかったと思えますね。

もう、三枚目キャラのファットマンとかヤヴァイスも、
ギャグ要員だったジャッキー軍団も全員格好いいぜこんちくしょう!


想いはきっと伝わるもの。
バトルもさることながら、各々の心理描写も盛り上がります。
何はなくともミレアさん抜きには語れませんよ。
前回からして囚われの身になってたり、
今回も暴走のトリガーにされてしまう一方で、
心の底からの訴えで闇から引き戻す立役者でもある。
終始ヒロイン要素満載ですし、修斗とも・・・ね。
物静かなキャラが最後の見せ場で声を張り上げるシーンってたまらんよね。
ミレアさんは実にいい至高のクーデレキャラでした。
(中盤くらいで既にデレデレだった気もするけど)
ラスボスのシンもまた重い背景を持っていたキャラでしたが、
エピローグを見た感じではシャイニングマンだった父親に対して、
ある程度の心の整理が付いたようだし、
最終的に救われたってことでいいのかな。
ラストバトルからエピローグの間に何があったのかはわからないけど、
修斗の真っ直ぐな想いが伝わって、
自らを見つめ直す機会ができたと解釈しておきましょうか。
戦った相手、協力した相手、
皆の心を一つに束ねるに至らしめたラットマンはまさしくヒーローでした。

一から再スタートを踏み出した修斗は今後どんなヒーローになるんでしょうね。