全ての点は線となる 『RATMAN』 11巻

爆破事件に巻き込まれたときの記憶が偽りのものだったことを知り愕然とする修斗
一方、クレアと対峙した姫崎は全ての真相を語り始め・・・
毎回右肩上がりで半端ない盛り上がりを見せる本作ですが、
今回は今まで伏線としてばら撒かれていた伏線が全て一つに繋がり、
過去の真実と共に怒涛の勢いで押し寄せてきてくれます。

予告でも次巻完結と謳っているだけあって、
終盤だからもう一切の隠し事は無いとばかりに、
最初から最後までの全てが見所で目が離せませんよ。
変に内容に触れてしまうことによって、
ネタバレしてしまうことが心配になるほどの一大展開のため、
正直なところ、あえて今回は何も語るまいとするか悩んだくらいです。
勧善懲悪ヒーローものではないので元から黒い部分や、
時として正義そのものの意義すら考えさせられることもあったけれども、
改めてヒーローって何なんだろうと頭を抱えさせてくれます。
それほどまでに本作は人間臭くて現実的。
表向きに脚光を浴びても進む道全てが華やかとは限らない、
本作のテーマとしての全てが凝縮されていると言っても過言ではないですね。
目立ったバトルシーンは今回は無いけれども、
そっちの面では次巻の最終決戦で全力全開で展開してくれることでしょう。

直近でプリキュアの同人誌でガチバトルものを描ききっているだけに、
熱いことになるのは必至なので今から胸が高鳴りますね。


全てを救うことはできない、それが現実。
ストーリーもので過去の話が出てくるということは、
話が佳境に差し掛かってきていることを暗に示していたりするものですが、
確かにこれは終盤じゃないと描けませんわ。
それほどまでに過去の出来事は世界設定の全てが詰まってます。
前回の修斗の事故に関する出来事ですら十分すぎるほど衝撃的だったのに、
一気に押し寄せる今回の展開は軽くそれを凌駕してきやがりましたよ。
水島姉妹の両親の死の真相、「Sの因子」の秘密、
シャイニングマンの栄光と凋落、
修斗の記憶改竄に秘められたメッセージ、
そして最後の敵となるシンの正体。
全てが今ようやく一つに繋がりました。
しかしシャイニングマンに関する出来事はひたすらに重いなぁ・・・
一のために十を捨てるか、その逆かを迫られることだってある、
不可抗力によって救いの手を差し伸べることができないこともある、
全てを救うことなんて不可能なんてわかりきっていた。
彼の人は正義の味方をやるにはあまりにも正義感が強すぎた。

強すぎる理想を持つが故に現実を受け入れられず、
末路は何とも無残なことに・・・
世の中って何でも上手くいかないから楽しくもあり苦しくもありますよ。
勿論理想を追い求めることは悪いことではないけれども、
現実に納得いかないことがあっても如何に許容できるかというのも、
生きていく上では必要ですね。
本当、「正義」って何なんだろう。
ある種の哲学のように答えがわからず頭を悩ませるばかりです。


二人の後継者、正しいのはどちらか・・・
真実と共にヒーロー協会とジャッカルとの戦いは終結し、
全ては丸く収まって・・・と思ったら一人残ってましたよ。
悪の組織のヒーローとして活躍するようになったから、
基本的に相手は正義に属する側だった中でも、
明確な悪として暗躍していたシンを倒さない限りは、
本当に終わったとは言えません。
しかも修斗と同じSの因子を受け継いでいるだけではなく、
過去の因縁全てに繋がるその正体は、
ラストバトルの相手としてこれ以上に相応しいものはいませんよ。

今回の登場の仕方も修斗がヒーローとして戦う必要が無くなって、
普通の生活に戻ろうとした矢先ですからね。
唐突に出てきてヒロインを人質っていかにもな行動パターンは、
実にわかりやすい悪役ライバルって感じですよ。
もうストーリー的なものは語り尽くされたので、
恐らく次巻はエピローグを除いて全編バトルになることを予感させます。
バトル方面の一方でヒロイン争いはほぼミレアさんに軍配が上がることで決定かな?
梨緒先輩は今回最後の方に少し出てきたくらいですし、
ヒーローデビューした時点で真のヒロインは決定してたのかも。
まさかここから先輩の逆転は無い・・・はず。
シンに人質に取られたり、その直前まで修斗とデートしてたり、
ミレアさんの扱いが完全に正ヒロイン化してましたからね。

真実を知って愕然とするクレアさんに優しく声をかけたり、
修斗と指切りしたり何この天使可愛い!?
こっちの恋愛事情がどうなるかも楽しみです。