そして彼女は狼となった 『ベン・トー zero〜Road to witch〜』

ベン・トー zero Road to witch (愛蔵版コミックス)

ベン・トー zero Road to witch (愛蔵版コミックス)

高校入学と共に一人暮らしを始めるも、どこか物足りなさを感じていた槍水仙
偶然立ち寄ったスーパーで『狼』たちの争いを目の当たりとし・・・

現在アニメも放送中のベン・トーですが、
本編の一年前を舞台とした番外編に当たる本作。
既に本編では『氷結の魔女』の二つ名で呼ばれている仙を主人公として、
狼たちの世界を知り、自身も狼としてデビューを果たすまでが描かれています。
番外編とは言っても話は本作だけで完結してますし、大方の世界観も把握できるので、
原作未読でも単体で十二分に楽しむことができますね。

現にタイトルだけは聞いたことがある程度で、
内容は一切知らなかった自分が楽しめましたから。
既読者にとっても、本コミカライズを原作の絵師である柴乃氏本人が手掛けていることもあり、
さほど違和感なく、一つの過去回想として楽しめるのではないでしょうか。
コミカライズとしても番外編としても完成度高いです。
とかく、誰でも金銭出費は少なければそれに越したことはないもの。
半額と言う魅力的な値段に全てを賭けて戦う狼たちが熱い内容でした。

『アッー』だの『せっかくだからこの赤の〜』とか、
何気にパロ描写もこれでもかってくらい出てくることもありますし。
確かに本編最初も火垂るの墓ネタでしたっけ。


勝利の味と敗北の味。
本編にあたる一年後こそ『氷結の魔女』として狼たちの中でも恐れられる存在となっていますが、
狼どころか犬にすらなれていないデビュー戦でいきなり勝てるほど、
狼たちの世界は甘いものではなく・・・
初参戦で惨敗を喫し、豚には誘拐され、烏頭先輩には徹底的に否定される。
悔しさと無力さを痛感して何度も涙し、とにかく苦難の連続。

特に烏頭先輩の存在は越えなければならない壁としてあまりにも大きいです。
明らかに『魔導士(ウィザード)』さんのことが好きなのが丸わかりで、
だからこその私怨が全力で出まくってるせいで
仙が狼としてやっていくことを否定しているようにしか見えませんがね。
最終的にHP『部』に入部したのが一年後にはHP『同好会』になってるのも、
一年間で三人の間に何かあったのかな。
原作ではそのあたりの経緯とか書かれてるのかもしれないけど未読なので。
紆余曲折を経てついに手にした初勝利。

それが本編ではじめて洋が勝ち取ったものと同じ、
ジジ様特製の鯖の味噌煮弁当とは何たる運命・・・
初勝利のインパクトと感動が大きければ大きいほど強くなれる。
狼の世界は実に奥深し。


食事を題材とすることは、如何にそれを美味そうに見せるか。
作中に出てくる弁当については言わずもがな。
スーパーよりもコンビニを利用することが多い身の上ではありますが、
それでもその場で作る手作り弁当があったりすると、
最初に目が行くのはそれですし、
やっぱり手作りものは工場ラインで生産されるのとは違って見えるんですよね。
本作における弁当にはそれに近いものを感じるのです。

普段わざわざ弁当で野菜炒めものとか買ったりしないんだけども、
ウィザードさんのゲットした野菜炒め弁当は食ってみたい。
それを一口ならと受け取って迷わずエビフライを取ってしまう仙さんは容赦なさすぎですが・・・
弁当以外の方面にもやたらと食いたいと思わせてしまう表現は使われており、
どん兵衛ソイジョイの推しっぷりはもはや企業宣伝レベル。

前者は本編でも敗北した狼たちが空腹を満たすための代替手段としてたし、
後者は腹持ちの良さについて熱弁してるし、
何よりも商品名を実名で思いっきり出してるし。
仕事の合間に小腹が空く時間帯にソイジョイ食いたくなるじゃないか。
本作は日清食品大塚製薬を応援しています。


酔いしれるは表情か、それとも脚線美か。
つり目、短髪、白色と、見た目からするときつめのキャラと思ってたのですが、
想像していた以上に表情がよく変わること。
全体的に見ていて普通に可愛いと思えますわ。
あとは何と言っても脚。
ラストのページに至ってはそのまま踏んでくれそうな勢いがあったりして、
黒ストフェチとして非常に見逃せないものがありますよこれは。