進みたい道、進むべき道 『高杉さん家のおべんとう』 4巻

いつもの無茶振りがエスカレートして、皆で生徒会に立候補することになった三人組。
信任投票だけで終わると思われていた中、対立候補が現れて・・・
弁当と家庭料理が繋ぐ家族の絆を描いたヒューマンコメディも4巻目。
話は三年目の春を迎え、新キャラも登場して賑やかになると同時に、
着実に成長し、距離も近付いてきている各々の様子が微笑ましい今回。

舞台も池袋へ行ったかと思えば海外へまで飛び出し、
ハルと久留里の間にもちょっとした事件が起こったり、
『静』なる『動』が数多く展開しているので、
僅かな変化であっても、何てことの無い日常の一齣であって、
一時たりとも目が離せません。
ハルにとっても、久留里にとっても、
今後を決めるにあたって大事な時期を迎えたこともあり、
皆がこれからどのような道を選ぶことになるのか。
未だ答えは出せていない中で揺れ動く心や、次第に形を帯びてくる将来像。
悩みながらも徐々に将来を考えて決断へ向けて進んでゆく様子を、
微笑ましく堪能できる今回でした。
そのささやかなる癒し効果は漫画テラピーに最適です。
久留里もモフりたい表情が可愛いし。
プールでの競泳用水着姿も、巻頭カラーの不思議の国のアリスのアリスコスも威力高いです。


様々な想いが交錯しているようで全くしていないような関係。
作中には色んな形で誰かに対する想いってものがあって、
少なからずそれが変化したりしながら成長してゆく姿が描かれるのですが、
通じているようで通じていないそれは非常にもどかしくなりますね。
気付けばハルは小坂さんといい感じになっているシーンの比率は増えてきたけれども、
一方で久留里の気持ちには何一つ気付かない鈍感さは、
そこは気付け!とか察しろ!とかモヤモヤっぷりがもうね。
結局その鈍感さが災いして一時はハルと久留里が喧嘩してしまう場面なんかもあったりして。

そう言えばこの二人が明確に喧嘩したって場面ははじめてですね。
想いに気付いていようといまいと、家族としては確かに近付いていたってことなのかな。
本当に心が離れていたりしたら、喧嘩以前の問題ですし、
親愛の情ってものがあるからこそ怒ったわけですし。
見ていて微笑ましい喧嘩ならば、一つのコミュニケーション手段としてどんどんやるべきです。
ぶつかり合ってはじめてわかる気持ちってものもありますからね。
色々と久留里のことを知っているようで知らないハル。
既に気持ちは家族に対してのそれを通り越して、
一人の男と女としてのものへと変わりつつある久留里のハルへ対する気持ち。

近すぎるからこそ逆に伝わりにくくなってしまうものってのもあるんだなぁ。
はてさて、ハル自身がそれに気付くのはいつになるのでしょうか。
自分の研究テーマは久留里だとか、いたずらしてみるのもありだとか、
変態紳士っぽい発言してる場合じゃないぞ!
まぁ、それはそれで妄想が暴走した小坂さんの反応は面白かったですが。

何気に小坂さんって想像力逞しいです。


この春、新しく友達ができました。
当初は友達もいなくて自ら作ろうともせず、
今でこそ久留里にベッタリのなつ希とも仲が悪かった頃を考えると、
この二年間で得てきたものが如何に大きなかけがえのないものだったかがわかりますね。
しかも久留里自身の方から歩み寄るのだからなおのこと。
いつも3人でいるのが自然だったのが4人となり、
対人スキルのみならず、人間としても着実に成長していることを、
目に見える形として垣間見ることができますね。
件の新キャラことソノカさんですが、これがまた清々しいまでの脳筋キャラ。

初登場時こそ生徒会選挙で久留里の対立候補でしたが、
結果として全てに全力でぶつかるストレートなキャラが実にわかりやすかったかなと。
そもそも立候補したきっかけが、丸宮弟への恋心だったってのがもう・・・
本編のみならず、あとがきでまで魔女だ妖怪だと言われてるなつ希とは、
また違ったアクティブさでこれからも話を面白い方向に牽引してくれそうですね。
食事シーンでいつも食べてる直径10cmの爆弾おにぎりの存在感もすごいし、
家族みんなが同じ男らしいノリだから見ていて飽きません。
実際に友達にしたら、多少暑苦しいながらも、いつもが楽しくなりそうだなぁ。
つまり修造的な何かか!?
本編では描かれなかった4人で行く修学旅行の様子は是非とも番外編期待です。
学校内でできたソノカとはまた別に、海外でもまた一人友達が。
ラオスに行った際に現地民の少女・ニイと交わした確かな交流。
同年代ながらも国も風習も違う二人が仲良く笑い合う様子がいいなぁ。

既に嫁入りして自らの生活を持っているニイの姿は、
進路に悩んでいた久留里に与えた影響は大きいです。
そのうち日本にニイが遊びにやって来て、なつ希あたりと対面するところを見てみたいです。