殺人遺品を所有する異常者たちの宴第二幕が始まる 『断裁分離のクライムエッジ』 2巻

突如襲撃してきた『破砕粉壊』を退けて以降、
一時の平穏な日々を送り、一つ上の学年に進級した春。
そこには新たな権利者達との出会いと戦いの幕開けでもあった・・・
殺人鬼を先祖に持つ者たちの殺人ゲームを巡るバトルと
ヒロインを守り抜こうとする主人公との恋愛描写とが熱い
ラブ・バトルストーリーと銘打たれた本作も今回で2巻目で、
メインキャラとなる権利者たち以外にも新キャラが多数登場し、
バトルものとしても段々盛り上がってまいりました。
ちょっとしたすれ違いによる孤立、
単独行動になった状況を見計らっての敵の来襲、
ヒロインのピンチを救うべく復活した主人公による反撃の開始。
後半の展開は本作ならではの狂った恐怖による描写と
戦いに挑まんとするバトルものとしての熱さとが共存していて非常に盛り上がります。


新たに登場した殺人遺品の権利者たちは揃いも揃って曲者ばかり。
そりゃ生前に数十人からの殺人を犯した人間が愛用していた品を所有している時点からしてあれですし、
それが殺人衝動を駆り立てるってんですからまともな人間なんかいやしません。
本当にこの狂気っぷりには恐れ入りますよ。

遺品そのものも鞭の『愛玩屠殺』ように直接的でわかりやすいものもあれば、
ピアノの『交響歓喜』や裁判書の『判決執行』ように一見すると遺品となった経緯や
実際にどのような特性を持っているのか判別し難いものもあり、
非常にバリエーションに富んでいるのと共に、
人を殺す方法にも様々なものがあるんだと改めて思い知らされました。
殺人ゲームには直接参加する意思は見せない中立の立場を取っていながらも、
されど必要以上に詮索しようとする『醜聞』の回し者は容赦なく殺している『交響歓喜』や、
自らの正義を貫くためにあえてターゲットの現行犯の現場を抑えようと
やり口はかなり過剰の域を超えている『判決執行』とが
今後どのような動向を見せるのかが気になりますね。

『破砕粉壊』のように殺人衝動が暴走しないとも限りませんし、
相当にアクが強くてイカれてる連中ですから、今のスタンスだけで終わるわけがありません。
と、こんな殺人遺品持ちのイカれたキャラが新たに多数登場する中で、
数少ない非権利者の小桜さんはとても見ていて癒されます。

見た目小学生にしか見えないロリ体系の祝もいいけれど、
基本ドジのぽんこつ婦警さんも捨て難いです。
とは言っても『判決執行』を止めようと奮闘する姿には胸を打たれます。
いいですよね普段はドジでもこういう風に揺るぎない信念を持っている人ってのは。


今回、前半パートは新キャラの顔見せや次の展開への布石が主ですが、
一気に話が動き出すのが後半のオリエンテーリングに突入してから。
『髪の女王』である祝を狙う明確な殺意が動き出して、
執拗に、そして陰湿な手口で追い詰められてゆく様はまさに恐怖の一言に尽きます。

異様に性的な発言が急増するのもこのあたりからですし。
切や祝たちは全員中三なわけだけど、見た目小学生にしか見えない祝
(実際1巻のときはランドセル着用とかしてたりもしましたし)
をあわやレイープ寸前な状態にまで集団で襲われるとか表現的にもヤバいです。

アグネス的な意味だと相当にアウトだよなぁ・・・
今回はラストまで『愛玩屠殺』のペースではあるけれど、
最後の最後で反撃に出る我らが『断裁分離』こと切の活躍と、
裏で判決のタイミングを窺っている『判決執行』の動きと戦いの行く末が気になります。
しかし敵に操られていた切の目を覚まさせる祝の言葉。

ヒロインを救い出すのがヒーローであるならばその逆も然り。
この流れは非常に熱くてたまりませんね。