てるてる天神通り 3巻

福を齎す対象は人間だけとは限らない。


ちょっとした異変を機に、天志もそろそろ会長としての自覚が芽生えてきて、
それに伴い、おフク以外の神様など新キャラも登場し、
話の幅を広げ、それでいて変わらぬお気楽商店街の下町人情。
基本ドタバタ騒ぎのテンションが多いものの、
そこから人情話に持っていく流れもメリハリ利いてて相変わらずうまいなー。
途中、どんなに沈みがちの展開を迎えたとしても、
必ず最後はみんな笑顔になれる結末で、今回も心が温かくなれます。


ドタバタ劇の最たる例が頼子姉絡みの話。
調合に失敗して、その結果として子供の姿になってしまったり、
かと思うとその直後の回では逆に子供である志乃(小一)が大人の姿になってしまったり。
マッドサイエンティストキャラならばこの手のネタは避けて通れない道ですが、
まさか連続して正反対の展開になる回をやるとは・・・
描き下ろしのおまけエピソードとかじゃないってところがすごい。


とにかく商店街みんなの一枚岩な結束ぶりが顕著であるのがクリスマスの話。
イヴ生まれだけれども、ケーキ屋と言うこの時期が最も忙しい家の息子であったが故に、
誕生日を祝ってもらったことのない天志をみんなでお祝いするのは最高です。
近所付き合いとかそういう枠を超えて、住民皆家族なノリ。
みんながみんなを信頼しているから、誰かが困っていても他の誰かが助けてくれて。
五十鈴お嬢曰く『人情三文芝居』だけれども、三文芝居大いに結構。
でもクリスマスは子供にとっては誕生日になりたくない日ナンバーワンかもしれませんね。
どうしてもセットにされてしまってお祝い事を一回損した気分になりますし。
同じくらい子供にとって気が悪いのは8月かな?
夏休みだから祝ってくれる友達がいなくて・・・ってのはあると思います。


皆が幸せな商店街、そのご利益は人間以外にももたらされ。
とある事情のために、幸せ運ぶと謳われているものの、その実非常に不幸な道化人形。
付喪神となったそんな彼をも救うのだから、やはりこの幸せ旋風はただ事じゃない。
読むだけでほんの少しだけ幸せになれる、そんな人生の清涼剤としてこの一冊。