新たなる人生のスタートラインへ 『ヒナまつり』 5巻

現代日本へやって来てからずっとホームレス生活を送っていたアンズ。
ヒナとは正反対の人生ハードモードな彼女に一大転機が訪れ・・・

あらゆる常識が通用しない超能力者のヒナに振り回され、
YAKUZAもすっかり気のいいおじさん状態になってしまう、
世知辛さと不条理の交わる特異なる日常ギャグも5巻目。
気が付けば巻を増すごとに超能力要素の比率が下がってきて、
今回に至っては終盤に久しぶりに能力発動したくらいですが、
既にそういう要素を差し引いてもこの特有の世界に入り込んでいると、
会話とかのやり取りだけで笑えるから不思議なものです。
新キャラで新田の兄貴分が登場して、
当初こそ珍しくYAKUZAらしいキャラだと思ったら、
おまけエピソードで既に残念具合を窺わせたりしてますからね。
様々なシーンにおけるリアクションとか間の取り方とか、
ネタのこなれっぷりこそがある種の超能力ですよ。
ラストでは第三の超能力者登場を漂わせる終わり方をしていますが、
アンズのときの前例を考えるとまた妙なノリで一悶着あってから、
何事も無かったように普通に生活始めそうですね。
バトルなんかとは程遠いし、
「いい話」はあっても「シリアス」は似合わないし。
関わるみんなが苦労人になる、
この異様な日常を不憫と思いながらも笑ってしまう本作です。


ホームレスからの人生脱出大作戦!?
YAKUZAということもあってそれなりの暮らしをしている
新田のところに転がり込んだヒナとは違って、
学校にも通えずに公園でホームレス生活と、
どこまでも人生ハードモードすぎたアンズさん。
住んでいた公園のテント村が解体されることとなり、
引き取り先の家で始まった地に足の付いた新生活。

恐らく本作の中で一番の苦労人だった彼女に訪れた出来事は、
どんなエピソードでもギャグ方向に向かってしまう本作の中において、
珍しくちょっと泣けるいい話でした。
うん、やっぱこれくらいの救済が無いとあまりにも不憫すぎて・・・
と言うか、後半は珍しく新田が色々と活躍してたりもするのだけれども、
間違いなく今回の主役はアンズさんですよ。
未だ金銭感覚とか浮世離れしながらも、
特攻服から割烹着へと衣装も変わり、
勤労少女へとクラスチェンジを果たしたことで雰囲気も変わりましたね。

超能力者ってことを除けば相変わらずの世界名作劇場ですが、
引き取ってくれた夫妻も情に脆いいい人たちだし、
新しい家族と共に幸せになってもらいたいです。


ヒナに訪れる危機と新田の奮闘!?
全体的に話のノリとかキャラが濃い上に、
今回はアンズ絡みのエピソードもあったことで、
相当に地味な存在になりつつあるヒナではありますが、
そこはメインキャラということもありますから、
ちょっとした(?)トラブルで危機に陥るなんておいしい役どころが回ってきてます。

今までも新田を怒らせて家を追い出されたり、
常にトラブルメーカーとして全力で機能しまくりだっただけに、
誘拐されたり超能力が使えなかったりと、
逆に新鮮に感じてしまいますね。
と言うか、超能力使えなかったらただの変人・・・
はしゃいで振り回して足ぶつけてと、
ほんのギャグとしての1シーンだけだと思ってたのに、
入院して誘拐されてとここまで話が膨らむなんて想像してませんでした。
直接的な原因となってしまったこともあったからなのか、
珍しく新田も保護者として頑張ってたし、
何だかんだでしっかり家族として機能してるんだなー。

でもなきゃ身代金かき集めて用意なんてしませんって。