決して譲れないラインがそこにある 『なれる!SE』 3巻

なれる!SE(3) (ファミ通クリアコミックス)

なれる!SE(3) (ファミ通クリアコミックス)

飲み会の夜の一件をきっかけに梢さんと知り合った工兵。
同じ会社の人間でもある彼女は、工兵の上司である立華と犬猿の仲であり・・・

ブラックさで飲食業界と肩を並べて筆頭に挙がることの多いIT業界。
その生々しさを余すところなく盛り込んだ衝撃のラノベのコミカライズも3巻目。
今回は原作2巻ラストにあたる部分までが描かれており、
互いに一歩も譲れない完璧主義者として、
プロとしての意識を持つ者同士であるが故の女の戦いが凄まじいことになってます。
元々立華と梢さんの対立っぷりは、
キャットファイトなんて言葉で済ませられるような生易しいものじゃなかったけれども、
やっぱり絵が付くとキャラが動く分、激しさを増してますね。

仕事の話はかなりガチな内容なので、
文章だけでは理解するのが難しいんじゃないかと思われることについても、
噛み砕いてわかりやすくなってますし、
如何に大変な仕事であるかどうかおわかりいただけるのではないでしょうか。
業務引継に限ったことではないのだけれども、
工数とか期間とか作業負荷とか、妥協ラインの違いで対立するなんてよくあることですよ。

まぁ大体こちらが折れることになって死線を渡ることになるんですがね・・・
対立っぷりもさることながら、
後半に訪れる業務トラブルとかは他人事じゃないので、
これほどまでに見てて胃が痛くなる作品もそうそう無いですよ。
自分自身、最近はリアルタイムで修羅場の時期真っ只中ですが、
工兵とか見てるとやっぱりどこも同じ・・・むしろ自分はまだマシな方とか思えてしまうから怖い。
下には下が居ると言いますか、ちょっと頑張れる気がしてきた。


意思疎通の難しさ。
IT業界なんてPC前で作業してるだけでコミュニケーションなんて無い、
そんな風に思っているのであれば大きな間違い。
自分が作成した資料を人前で発表することに物怖じしない胆力、
相手に意図した通りの内容を伝えるための対応力、
時には対立・舌戦となったときに対等に張り合うだけの精神力。
何だかんだでヒューマンスキルは相当に必要だし、
作中のヒロイン二人みたいなレベルまではいかないにしても、
ヒートアップしてしまうなんてことも珍しいことでもない。
そういう点に関しては業界の実情ってものをしっかりと描かれてますよね。

さすがにここまで細かいレベルまでは求められないにしても、
納品時にマニュアルを作成してシステムが出力する
エラーと警告レベルのメッセージに対する対処方法を書かされたことだってありますよ。
業務引継に限らず、開発案件でも結合試験レベルの項目は、
素人が見ただけで実行できるように書けとはよく言われることです。
(実際運用するのはそれこそ素人のオペレーターですからね)
逆にフィクションだからこそのツッコミどころもあるにはありますが・・・
納品したら大抵3ヶ月くらいは保守期間とかあったりするのが普通なので、
引き継いだら開発担当ははいさようならなんてことはありえませんし、
酒を飲んでる場で重要案件の資料を手渡しすることを示唆するような発言なんて、
本当にその場で受け渡しなんてしてたら始末書もの。
一番ヤバいのは障害復旧のためとは言え、
商用環境で稼動中のサーバを手続きもなしに独断で落としてるところ。
実際作中でも運用監視に引っ掛かったり社長に無茶苦茶怒られたりしてますし。
そもそもノートPCから普通にリモートで繋いでるあたりも気になったりはしますがね。
フィクションなんだからそれくらい気にするなよって感じだけども、
重箱の隅をつつくように何かあれば指摘してしまうのもこの業界に生きる人間の性です。
そして何よりもこんなに女性社員なんかいねぇ!
9割、否、95%〜99%は男しかいない業界なんですけど・・・
紛う事なきブラックな作中の会社において、
唯一羨ましいと思えるところですわ。
しかし入社一ヶ月半とは思えないほどに工兵が有能すぎるわ。
技術屋が集まりやすい世界だし、全く違う視点でものを考えられるのって貴重ですけどね。


戦友?それとも・・・
何はともあれ今回は徹頭徹尾梢さん三昧。
最初こそ声をかけられた、目が合った、それだけで逃げてしまうくらいだったのに、
最後のあたりじゃ生涯のパートナーを公言するほどになっちゃってますし、
経緯が経緯とは言え、実にデレるのが早かった。
まぁ電車に轢かれそうになったところを助けてくれた命の恩人だし、
工兵本人は全く違う意図だったにしても、
立華とどっちを助けるかの二択で迷わず自分のことを選んでくれたとか、
そりゃ普通の人ならイチコロですよ。
仮に自分が梢さんだったとしてもやっぱり惚れてたと思うわ。
デレたら一直線な上にドリーマーなところもあるので、
言い寄られたいなーと思う一方でちょっと怖いと思ったりも。
絶対ヤンデレの資質あるもんなぁ・・・
ぃゃ、でも想ってもらえることについてはすごく羨ましいですよ?
手作り弁当を作ってきてもらえるなんて都市伝説を体現してくれてるし、
猫耳シーンとかもめっさ可愛かったし。

小動物系ってキャラが一層引き立ちますなー。
絵が付いたことで可能となった表現はパロ方面にも存在しており、
仕事でストレス溜まってソウルジェムが濁るって繋がりなのかどうかはわからないけども、
梢さんが唐突にまどマギのさやかコスで登場してるシーンはさすがに驚きました。

すぐ後に出てくる杏子コスの立華と合わせて必見の価値ありです。