もう、狩りですらない・・・ 『ディアボロのスープ』 1巻
- 作者: 岡崎純平
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/04/09
- メディア: コミック
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貧しいながらも平和な日々を送っていたとある辺境の国。
その平和は、突如として侵攻を開始した帝国によって打ち砕かれ・・・
魔法と科学が共存する世界で巻き起こる侵略戦争を描いた本作。
某まどマギとかの関係もあって、一言で単語だけを聞いてしまうと、
あまりいい印象を持たれない「魔女」。
本作の魔女は普通の人と少し違う能力を持っている以外は、
普通の人と何ら変わりない少女たちであり、
それぞれの土地を治める領主でもあります。
そんな魔女たちが近代兵器の前に容赦なく蹂躙され、
抵抗虚しく虐殺される様子には、
ただただ無常感が溢れていて何とも言えぬ気持ちにさせてくれますよ。
悪魔と契約して特殊な能力を行使できると言っても、
結局はただの人間であることを思い知らされる現実。
慎ましく生活していただけなのに何故こうも無残に殺されねばならぬのか。
某魔女育成のソーシャルゲーをやってる身としてはなかなかに複雑な気分ですよ。
とある人物の手助けを借りて反撃の狼煙を上げるも到底勝ち目があるようには思えない。
世界の理不尽さに気分は沈んでしまうのに思わず読んでしまう、
不思議な強制力を持った作品です。
本作のみならず、今期アニメ版の放送が開始された進撃の巨人に、
マガジン本誌へと移籍して連載中の神様の言うとおりに、
別マガは絶望的シチュエーションの作品比率が高くて熱いですね。
異能力が決して万能とは限らない。
魔法vs科学という最強の盾と最強の矛にも近い関係を取り上げつつも、
全く対等ではないあたりに色々と無常感が漂ってますね。
あまりにファンタジーがぶっ飛んでたりすると、
銃撃が無効だったり、そもそもの物理法則が捻じ曲げられたり、
魔法無双な展開になる事が多いのですが、
本作の場合圧倒的に科学が有利である点は大きいです。
やはり現実に実用化されて世に普及されたものは強かった。
確かに悪魔を召喚して行使する能力は強力である一方、
使うのはあくまで生身の人間であり一般人であること、
相手は最新兵器で武装した軍隊であること、
回復魔法なんて都合のいいものがあるわけではないことが、
絶望的な状況を作り出すことに一役買っています。
その様子は時の欧州で執り行われていた魔女狩りさながら。
帝国側連中が揃って野生動物のハンティング感覚ですからね。
つけ込む隙があるならばその増長っぷりなんだけども、
それにしても戦力差が違いすぎて勝てるビジョンが全く浮かばない。
其の男は救世主足り得るか、それとも・・・
戦いというものを知らないがために、
一方的に虐殺され、既に戦争とすら呼べないほどの状況。
危機に瀕した国を救うために投入された最終手段として釈放された一人の男・天魔。
こいつがまた非常に曲者でして、
確かに少なからず対等な条件へと持ち込むことで、
ようやく「戦争」となるほどの状況を作り出すことには成功しました。
が、果たしてそれが本当に正しい選択であったのかどうか。
徹底した合理主義っぷりで魔女たちのことを駒としか考えてなくて、
およそ人間らしい部分を全て切り捨てたかのような立ち振る舞い。
最初に生き残ってる人数を聞いたときの発言も、
ゲームの残機程度にしか捉えていないし、
これじゃどっちが悪かわかりません。
まぁ実際10年間投獄されてた凶悪犯なんですけどね。
毒をもって毒を制すとは言ったものだけれども、
強すぎる毒はただの自殺と同義。
平和主義者の魔女たちを如何に御して絶対的不利な戦況を覆すのか、
そして色々と謎が多いこの男の正体が何者なのか、
全てのキーとなる存在だけに今後の動向が気になります。
どう転んでもバッドエンドにしかならなさそうですけどね・・・