何気ない行動は時として救いとなる 『あまねあたためる』 1巻

生きていることに意味を見出せずに自殺をしようとしていた男がいた。
そんな彼を踏み止まらせたのは何気ない少女とのやり取りであった・・・
これまでギャグに冒険ものに熱血空手道な部活動ものと、
様々なジャンルの作品を手がけてきた佐渡川氏が新たに手掛ける本作は、
今までのどれとも違うハートウォーミングな癒し系日常コメディとなりました。

既存作品は何かしらのバトル要素が絡むこともあって、
相当に異色な感じもしたのだけれどもどうしてこれがなかなかにほっこりできる。
誰にでも優しくてやや天然なあまねさんを見ていると、
身近にこんな娘がいたら殺伐とした日常の中でも、
優しい気持ちで平穏に過ごせるのかなーって気分になれますね。
これはきっと、そう、自分から気持ちを伝えたりするなんてことはせず、
憧れのクラスメイトを眺めているだけで元気を分けてもらえる、
そんなアイドル崇拝的な初恋のような感情に近いかもしれない。
温かくなりつつもどこか懐かしくも切なくもなる複雑な気持ちになりました。
佐渡川作品として見てみると、あまねさんたちが通っている学校が蓮城校と、
前作ハンザスカイのライバル校だったりするのにも思わずニヤリとさせられますね。
もしかするとそのうち空手部との絡みが出てくる可能性もあるやもしれません。


優しさとは進んで与えるものではない、結果的に与えているものである。
全てにおいて超自然体で、手助けしようとしてしているわけではないのが、
こういう系統の話の中では珍しいところ。
裏表の無い行動が誰もが深層に少なからず持っているであろう良心を掬い出しており、
関わった人みんなが最終的に自分の意思で一歩踏み出してるんですよね。
それこそ自殺を踏み止まるという結果的に人命救助していることもあれば、
フェチズムの違いで言い争っていた変態二人の意見を一致させたりと、
完全にどうでもいいレベルの話までピンキリなので、
毎回どういう方向性で攻めてくるのか段々楽しみになってきます。
節分の回に至ってはいきなり本物の鬼が登場して、
現代社会に馴染めなくて泣いてるところを助けたりなんかもするという、
とんでもない変化球が唐突に飛び出してくるあたりは、
ギャグ作品を描いてた頃のノウハウを活かしてるなーと。
構ってもらえることに荒ぶった鬼が変態チックで笑った。


無自覚なる行動の中に感じるエロスによる精神デトックス
間違いなく本作は癒し系日常コメディであるとは思います。
が、その癒し成分の一角をお色気要素が担っているのもまた事実。

決して裸シーンとかがあったりするわけでもないし、
それ以前にパンチラシーンすら一切存在しません。
しかしそれでも性的な何かを感じずにはいられない。
クラスの中で可愛い娘を見て、
それだけで色々と想像してしまう想像力と言うか妄想力豊かな若かりし頃。
ちょうど中学生〜高校生くらいの思春期にはよくあることですが、
同じような気分になれるあたりがきっと懐かしさを感じる要因の一つなんだろうなー。
エロス感じるのに脱ぐ必要なし、
ただ一言それらしい発言と行動さえあればいい。

何しろ一話目の開幕からしセミのおしっこ顔射BUKKAKEですからね。

そりゃこんなショッキングなシーンを目の当たりにしちゃった日には、
いくら自殺願望があろうともおちおち死んでちゃいられませんって。
全体的に見て感じるけど、恥ずかしいって考えすらもしないんでしょうね。
そういう周りの目を全く気にせず常に自然体でいられること。
これこそがあまねさんの最大の魅力なんじゃないのかなと。
結果それが見えそうで見えない絶妙な領域を演出することにも繋がってるわけですし。
毎回それっぽい描写が出てくるあたりも既存作品と大きく異なるあたりかも。
勿論全力でウェルカムですよ。