金は無くともエンゲル係数下げる気無し! 『くーねるまるた』 1巻

くーねるまるた 1 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)

くーねるまるた 1 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)

築70年のボロアパートで単身貧乏暮らしをするポルトガル人の女の子・マルタ。
生活費を工面するのにも一苦労ながらも、
食生活だけは飽くなき探究心と工夫をもって充実を図っており・・・
ヤングガンガン読者にはんぐるわ会報やオシエシラバスでお馴染みの高尾じんぐ氏。
スクエニ関連誌の枠を飛び越えて登場した本作は、
異国の地で一人暮らしながらも日本文化に溶け込んでいるギャップと、
貧乏人の味方とも言うべき低予算料理が数々登場する、
実用性日常グルメ作品となっております。

某番組企画のような一ヶ月一万円生活レベルでも、
上手くやりくりすればいくらでも美味しいものを作ることができる、
そして美味しいものが食べたい、食べれば幸せな気分になれるということが、
世界共通の幸せサイクルであることがよくわかります。
下町情緒溢れる風景や、温かみを感じられる人との交流。
楽しく過ごせればオールオッケーな独特のゆるさは、
何かと忙しなくも世知辛い世の中において、
心にゆとりをもって生活することの大切さを教えてくれますよ。

作中には食事ネタ以外にも絵本や文学ネタも所々あるので、
そのあたりに詳しいとニヤリとできるかも。


低予算でもいくらでも美味しいものは作れる!
さすがに一食の予算が数十円なんて極貧ではないにせよ、
高くても材料費に千円はかかっていないものばかりが目白押しなので、
キャベツばかりを齧るような生活レベルでも、
実践できる品目が数多く揃っているところが大きいですね。
マルタさんの場合はこれでも相当に高いエンゲル係数になってしまうほどだけども、
作中に出てくるような料理なら色々と切り詰めて食費以外にも費やせそうな、
一人暮らしに嬉しいスペックを持ってますよ。

サワークリーム238円が高いから、
7割引のおつとめ品な生クリームとヨーグルトの予算100円で自作してしまったり、
ラーメン屋のチャーシューメンを食べたいけど値段的に手が出せないから、
商店街で特売の豚肉を買ってきてチャーシューを作ってしまったりと、
店で食べようとすると倍以上するような代物も、
自分で作れば意外と安く済むものなんですね。

パンの耳を生地にしたエッグタルト、日本酒入りカップうどん、
ロバート・キャパ式ベリーニ、鶏油入り特製チャーハン、
どれも簡単に材料が揃う上に何と言っても美味しそう。
勿論作中で流れに沿って作っているので再現しやすいし、
幕間にレシピも載っているので気になったらレッツ!クッキング!ですよ。
中には町田で降りて店を探して小籠包を注文するだの、風呂上りのビールだの、
それレシピ違う!ってツッコミを入れたくなるボケがあるのもご愛嬌。


貧しくとも心と腹は豊かであれ。
とにかく全編に渡って貧乏っぷりが際立っているマルタさん。
そもそも住んでるアパートからして築70年ですからね。
部屋には風呂もエアコンも無いし、
電車賃で食事をしてしまってヒッチハイクで帰る羽目になったりもする。
時にはザリガニを釣り上げて自給自足の食材調達してしまうくらい。
大学院は卒業してるみたいだけど、仕事とかやってるんですかね?
特にそういう描写も無いから完全な自由人にしか見えなかったりするけど。
でも貧しい以外に悩みも無さそうだし、
人生満喫してるよなーと少し羨ましくも思えますね。

仕事一辺倒の暮らしに疲れたときに、ふとこんな生活に憧れるときがあります。
いいよねボロは着てても心は錦を地でいってる感じで。