真実は教わるものではない、見極めるものだ 『風評破壊天使ラブキュリ』

風評破壊天使ラブキュリ (チャンピオンREDコミックス)

風評破壊天使ラブキュリ (チャンピオンREDコミックス)

ごく普通(?)のヤンキー女子学生だった主人公・七海。
突如として現れた宇宙人の手によって否応なしに風評被害と戦うこととなり・・・

表紙やロゴの雰囲気だけ見ると、
どことなくプリキュア的な感じがしないとも限らない感じで、
一種の変身ヒロインものかと思った人は残念でした。
そこはかつて邪道魔法少女三部作の一角にあたる、
大魔法峠とかを描かれていた大和田秀樹氏のことですから、
当然のように普通の作品であるわけがない。
かと言って単純に肉体言語で傍若無人に振る舞うでもなく、
振るう拳はあくまで真実のため。

見てくれとかギャグのノリが全開だったりとか、
紛れもなくいつもの大和田作品であることは間違いないのだけれども、
それ以上に全編に渡って展開される放射能知識がガチという、
実用書としての側面も持ち合わせた何だかとんでもない代物でした。

本編でも人体に危険な濃度に達するにはどれくらいの食品摂取量が必要とか、
非常にわかりやすく解説しているのに付け加え、
エピソード間のコラムではよく耳にはしたけれども、
その実意味をよく知らないシーベルトとかベクレルとか単位の意味も、
細かに説明してくれていたりもして、
放射能についての基礎知識は確実に身に付きます。
これで福島に対する見方が変わってくれれば・・・そう思います。


最近は下火になったとは言え、
先の震災以降誰しも心のどこかに引っ掛かっている放射能への不安。
まともな代替策の一つも無い状態で、
馬鹿の一つ覚えみたいに原発ゼロと洗脳でもする勢いで連呼される現状も、
結局はこうした風評被害の産物と言えるのかもしれませんね。
同氏の作品では、ほんの数日前にムダヅモ無き改革の最新刊が出て、
よりにもよって民主党が惨敗した選挙の翌日に、
鳩山と戦う内容が洒落になってないなんて話もありましたが、
本作も加わるとそれに更に拍車がかかりますね。
元を辿れば楽観視と隠蔽とでメルトダウンも認めず、
米国の援助を断って意味のない放水で無駄に時間だけ経過させて、
結果としてスリーマイルやチェルノブイリに匹敵するレベルまで悪化させたのは、
東電と民主党とに帰結してしまいますし。
改めて本当に酷い3年間だったなと思うと同時に、
情報というものは受動的に受けてマスコミの偏向報道に踊らされるのではなく、
能動的に自ら得るものであると意識を変化させるべきであることを実感させてくれます。

如何に世間が偽りの情報で氾濫しているか恐ろしくなりますね。


真面目なところは真面目に、馬鹿なところはどこまでも馬鹿らしく。
放射能に関する話は思いっきりガチではありますが、
そこは大和田氏ですから真面目すぎて堅苦しい内容にはせずに、
笑えて学べるように世の中への皮肉もたっぷりに込めて描かれてます。
敵が何故か海パン一丁に水泳帽と水中眼鏡なんて格好のやつばっかりで、
見るからに変態チックなのがドヤ顔でデマを振り撒くとか、
シュールを通り越してある種のホラーに感じるくらいどぎついビジュアルで攻めてきます。
何でそんな格好なのかはツッコんではいけません。
しかも最終回に至っては、デビルマンのラストシーンをパロって、
前述の海パン男が大量発生する光景が出てきたり、
もう一体自分は何を見ているのやらわからなくなるレベル。

デマってる連中もアホ顔をさらして堂々と嘘を口にする表情もノリノリ。
たぶん描いてる側としてはすごく楽しそうなんだろうなー。
そういや作中にはモブキャラとしてムダヅモのタイゾーもどきも登場してますね。