絶望の中だからこそ変わらずにいたい 『がっこうぐらし!』 1巻

校内で自給自足の寝泊り生活を過ごす学園生活部。
何気ない平和な日常は非情なる絶望と言う名の現実の渦中に有り・・・

タイトルも平仮名表記で末尾に「!」まで付いていて、
表紙の絵柄も相まってゆる系日常コメディー作品かと思い、
それを疑うこともなく手に取って読んでみたら、
想像を遥かに超越する内容で驚愕を隠し得なかった本作。
原作に海法紀光氏の名前や、
ニトロプラスの表記があった時点で甘い考えは捨てるべきでした。
確かに表紙の背景もガラスが割れてたりで廃墟みたいになっているし、
着ている制服もボロボロで内容を示唆する要素は散りばめられていたのに、
違和感を気のせいだと思い込ませてしまう萌え系のキャラ絵柄。
いい意味で騙される形となったわけだけれども、
嗚呼なるほど、表紙詐欺ってこういうことを言うんだなと。
だってね、この表紙を見て一体誰が実はゾンビものでしただなんて信じるよ!?

完全に荒れ果ていつ決壊して大量に侵入されてもおかしくない中、
極めて絶望的な状況においても普段通りに生きようとする姿には、
不屈の精神を持とうと奮闘する強さがありますね。
一体世界に何が起こったのか全く不明なままだけど、
ニトロプラスが関わっているからにはとんでもないどんでん返しが待ってそうです。


彼女は本当にそこに実像として存在しているのか否か。
学校の外は崩壊したゾンビの跋扈する町で、
何とか生きてる姿がメインであることは間違いないのだけれども、
意外と精神面的なところなんかもかなりの重さでのしかかってきます。
主人公のゆきさんが見ているのは現実か、それとも妄想か。
最初の時点からして本人は普通の学校生活を送っていると思い込んでる節があって、
誰も居ない荒れた教室の中で空想のクラスメイトに話しかけている姿は、
傍から見れば危ない人にしか見えないほど。

読み進めると、どうやら辛い現実から逃避するために、
無意識のうちに記憶を隠蔽してるようにも見えるわけですが・・・
このあたりと絡んで顧問のめぐねえのくだりは特にキてるものがあります。
ゆきさん以外に話をスルーされたりしてて、
どこか噛み合わないところがあったりで違和感があったと思ったら・・・
さて、4話目の時点でりーさんが拝んでいるのは、
果たして誰の墓なんでしょうねぇ?
供えられているのも身に付けていたのと特徴が一致してしまっているわけで。
と、気付いてしまうと一気に話が重くなってくるのですよ。
この手のサバイバーな話では全員生還なんてまず有り得ないものだけど、
そもそも話が始まった時点で既に・・・とは思わなんだ。
しかしゆきさんが現実逃避しているのだとすれば、
意外とあっさり今のゆるめの話の流れなんて崩壊するやもしれない。
残り二人も心の底では限界間近でふとしたきっかけで発狂しないとも限らないし。

今回だけでもこういう衝撃展開がだったりするから、
これからはもっと凄まじいことになりそう。


世界に何が起こったのか、それは未だ知る者はいない。
話が始まった時点で既に世界は終わっているために、
どこで何が起こって現在に至るかが全く不明なのが怖いところ。
この変わり果てた世界の規模も周辺だけなのか世界中全てなのかもわからないし。
一般人にとって災害ってものは唐突に結果のみが訪れるようなものです。
いずれ原因が明かされる時はやって来るとは思いますが、
バイオハザードの発生によるものか何らかの兵器によるものか、
それとも全く未知の生命体が関与していたりするのか否か、
どれもありそうなだけに逆にそれはなさそうと思えてくる。
もしかしたら世界が変わり果てたってことが間違いで、
実は世界の方こそが正常だったなんて可能性すら否定できない・・・
作中で呼称はされていないけども、
恐らくゾンビ化してる人たち自身も何が起こってるのか理解してないのかも。
雨宿りで校内に侵入してきたり、下校放送に反応したり、
どこかで意識とか自我は持ってるように見える節もあるんですよね。
そんなSIRENの屍人的な説も考えながらもやはり真相は謎。
確かなのはそうそう手を出してはならない存在であることと、
対峙するなら死をも覚悟する必要があるということ。

実際くるみさんも1対1なら何とかなっても複数相手に死にかけてますし。
それにしてもスコップの殺傷力は侮れませんね。
ゾンビ化した好きだった先輩を手にかけた得物となればなおのこと・・・