近くて遠い背中合わせ 『せなかぐらし』 3巻

せなかぐらし (3) (まんがタイムKRコミックス)

せなかぐらし (3) (まんがタイムKRコミックス)

友達以上恋人未満の関係まで距離を縮める中で着実に近付く夏の終わり。
今の生活が終わってしまう焦りと、うまく気持ちを伝えられない照れから、
最後の一波乱へと事態は発展してしまい・・・

隔てる距離はガラス一枚、普通なら親御さんがとても許しそうにない、
極めて近距離密着型シチュエーションにて繰り広げられるラブコメストーリーも、
今回でいよいよ完結となります。
二人を隔てるものはガラス一枚。
近いようで遠く、遠いようで近い。
相手の体温さえ感じられるほどの距離なのに、
なまじ近いが故に遥か彼方に居るかのような感覚すら覚えますよ。
ゼロに等しいほどに急接近したかと思いきや、
天の川を挟んだくらいにまで離れかけもしてしまう。
既に前回の時点からして超いい感じにまで仲は発展していて、
あとは一歩を踏み出すだけの段階まで来ていたものの、
こういう話はむしろそこからが茨の道だと言わんばかりに、
うまくいきそうでいかないもどかしさに、ひたすらやきもきさせられます。
果たして二人がどうなったのかは、前二巻がガラス越しだったのに対して、
直で背中合わせになっている表紙である程度推察できるかと。
菓奈さんの雰囲気もどことなく大人っぽくなってますし、
二人の恋の行方を是非見届けてあげてください。

そして、せーので壁ドンいきましょう。
すごく冷え込んできてる時期なのに部屋の風通しよくなって寒いくらいですよ。
まったく、悶絶級のやきもきラブコメを描かせたら匠の職人っぷりが半端ないです。


急いては事を仕損じる、されど残された時は僅か。
今の生活が終わるタイムリミットが目前であることが今回の重要な要素。
もう夏が終わって約束の期限だから引き払ってはいさようならなんて、
そんな簡単に済むような関係でもなくなってしまっているし、
何よりも本人同士がそれを望んでいない。
しかし本音で思ってることをストレートに表せないのが若さ。
傍から見てればさっさと告っちまえよ!って映ったとしても、
一世一代の告白ってものが如何に難しいものであるか。
言えず終いでその後ずっと後悔する人だって少なくないんですよ。
自分もそういう部類の人間だったので、
自身の高校時代と共に甘酸っぱい思い出が蘇りますね。
全体的にいい思い出の無い三年間だったけども、
そんな中でも今なら好きと言えるほどに気にかけてた娘の一人や二人いましたからね。
当時形はどうあれそれを口にできてたとしたらまた違った人生歩んでたかも・・・
なので自らの言葉を間違えてしまったときの巡の気持ちは何となくわかるなー。
ヘタレだと自覚していようとも、恥ずかしいと思ってしまったが最後、
本当の気持ちはどこまでも深遠へと沈んでしまい、後悔したときにはもう遅い。

実際に後悔してる身なので、そこから取り戻したくだりはやりやがった!
やってくれやがったぜこいつめ!と異様に盛り上がりました。

ヘタレキャラは普段の状態にマイナスイメージを抱きやすい分、
一歩踏み出したときの反転っぷりが半端ないです。


菓奈さんの方もずっと押し隠してきた、我慢をしてきた。
クライマックス直前になってそういえば明かされているようで、
明かされていなかった菓奈さんが夏の間一人暮らしを始めた理由。
想像してた以上に重いものがありました。
仕事が忙しい親を気遣って自分を押さえつけ、
人並みの家族愛を求めることすらせずにきた。
だからこそ巡本人にとっては照れ隠しの発言だったとしても、
菓奈さんには拒絶の意志として相当なダメージだったんだろうなぁ・・・
このあたりは感情を無理矢理押さえ付けてる感が全力で漂ってて、
ひたすらに見てて痛々しかった。


展開は重くても、つとめて明るく。
ブコメものの終盤は重めの展開があってからの大逆転でハッピーエンドが、
話を盛り上げる効果もあって半ばお約束になってる感もありますが、
そういう流れを踏襲しつつも大事そうなところで締まらないという、
コメディ部分はしっかりと最後まで引き継いでいてくれました。

最後の波乱が発生する直前の時点で菓奈さんが告白しようとしてたのに、
ずっこけたり横槍入ったりで不発になってしまうところもそうだし、
何と言ってもあらゆる障害を乗り越え、
晴れて両思いとなったはずの最終回で第一話目の出会いシーン再現ときたもんだ。
ええ、頭にパンツをかぶってるあの変態シチュエーションを・・・

最後に最初の天丼は常套句と言えども、まさかこれをやるとは思わなんだ。
コメディ成分もさることながら、菓奈さん最後まで可愛かった。
回想シーンで出てくる幼少、小学生、中学生時代に、
少し髪が伸びて大人っぽさが出てきた表紙や最終回。
色んな菓奈さんが最後に見られてご満悦でしたよ。