願望を阻む世界の理との二律背反 『セカイ魔王』 2巻

セカイ魔王 (2) (まんがタイムKRコミックス)

セカイ魔王 (2) (まんがタイムKRコミックス)

勇者のルーツを辿る旅の最中、魔物の襲撃を受けて重傷を負ってしまった勇者・アルシャ。
魔物が育ちすぎている現状を危惧し、今度は己の在り方を求めるため、
アルシャに別れを告げて魔物の少女・ニッカと旅を始めた魔王・マオだったが・・・

シリアスなようでいてノリはゆる系、
しかして根底には非常に重い世界観を抱えていて、
表と裏の両面から楽しみ、考えさせられる本作。
前回を勇者編とするのであれば今回は魔王編とも言える内容で、
正反対の立場から物事を見たことによって生じる矛盾により、
如何にすれば妥協点を見出すことができるのか、
本当に相容れないものであるのかと思い悩む姿を背景に、
基本的には前にも増してのゆるさで食べ歩きの旅が描かれています。

どこか退廃的な雰囲気すら漂うのに、
軽いノリで進行する話の進め方は相変わらず引き込まれますね。
所々で重要な要素が出てくる度にハッとさせられますよ。
互いの道を求め進んでゆく二人が再会するとき、
そこにあるのは修羅の道か共存の道か。
旅の行く末が進行すればするほどに気になる今回です。
何気にカバー下ではコミティアカタログの
注意書き漫画のあの人たちがゲスト登場していたりして、
そちらのネタ方面でも目が離せませんね。
ビジュアル的にはそのうちコミティアちゃんが本編に登場してもおかしくないわ。


勇者と魔王、倒す者と倒される者。
初代の頃から永く続く因果関係が世界の理と共に明らかとなり、
互いにそれを知ったことによってこれから何を結論として導き出すのか。
歴史は繰り返すのか、それとも・・・
本人同士の意志に関係なく世界によって定められた宿命。

共存することは本当に不可能なのか否か。
もしかするとこれまで辿ってきた中に答えの糸口が隠れているのかもしれないけども、
今は全く答えの見えない五里霧中。
一体どうすることが最良の結果と言えるのかさえもわからぬ現状、
読んでいる側も推理もので犯人を捜すくらいの勢いで悩ませてくれますね。
なら戦わないで何もしなければいいじゃないかと結論付けるには早計で、
例え本人たちがそうありたいと願っても周りが許さない以上は、
全てが机上の空論でしかないというのが重苦しい。

魔物にもマオさんやニッカのように普通に人間と接することができるのがいても、
人間からすれば魔物は倒すべき存在でしかないし、
知能の無い下級の魔物はただ暴れるだけの獣と何ら変わりは無い。
一部の少数の考えより圧倒的に多い大多数の考えによるものに加え、
ただ隠居しているだけで良いかというものでもない。
何もせずとも魔物は増殖し、種族間の溝は広がる一方。
課題はこれで出揃った。
最終的な決断の時は近い。


人間も魔物も突出した者は個性も突出。
今回は魔王サイドということで様々な形で生活する魔物たちが登場するわけですが、
全体的に濃いですね。
見た目は人間と何ら変わり無いのもいればドラゴンだっている。
そして妙に高い変態率。
過去の魔王がドン引きするほど踏まれることに喜びを感じるドMの変態、

何故か変態仮面よろしくパンツをかぶってて至高のパンツを求める変態、

魔王の側近は常にぶれることなくナチュラルに変態。
見た目とか能力とか以前に、その変態性を持ち合わせてることこそがある意味魔物だよ。
しかして人間サイドの方も鍬一本で低級魔物を駆逐する、
どこぞのずしおうまるとタイマン張れるライフコッドの住人ばりの農夫がいたり、
アルシャが出会った剣士も色々とわけありな感じだったりで、
世界って広いよなーとか、その広い中を見るのだから、
もっと変なのがいっぱいいるんだろうなーとか思いますね。
果たして次にはどんな変キャラがシリアスなはずの世界に、
ゆる系の空気をもたらしてくれるのでしょうか。