男子校&女子校出身者よ、これが現実だ 『共学高校のゲンジツ』 1巻

共学高校のゲンジツ 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

共学高校のゲンジツ 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

変わったことなど何も無いごく一般的な普通科の共学高校。
同じ環境に男女共存しているのだから自然と彼女ができるものだと思っていた・・・

タイトルからして8割方くらい内容が把握できてしまう本作。
彼女が欲しいと言いつつも実際にできる気配すら感じられない男三人を中心に、
平坦な日常が描かれる内容となっているのですが、
ヤバい、何かがヤバい。
最初から最後までずっとボディブローを喰らい続けているような、
例えようの無いモヤモヤ感でいっぱいになります。
全てにおいて描写が生々しいのに、
空気のように自然と流れてしまう平坦さが更に拍車をかけてくる。
嗚呼、自分が高校生の頃に一体どれだけのフラグを取りこぼしてきたんだろうか。
過去を顧みて塞ぎこみつつ「ああああああああああ!!!!!」と叫びたい気分ですよ。
中二病的な痛さとは別のベクトルでダメージが大きすぎるわ。
雰囲気は男子高校生の日常とかに近いものがあるんだけど、
根本的なところで違うんですねこれが。
およそ9割の人がこういう高校生活を送ってたんだろうなと考えると、
色んな意味で複雑な気分になってきますよ。
自分の青春時代って一体何だったんだろう・・・

だからと言って男子校にしてればよかったとは思わないけども、
気力をごっそり持っていかれてしまいました。
男子校や女子校出身で共学に夢を抱いている方、
共学出身だけど何も無い灰色の青春を送ってきた方、
たまには苦い思い出に身を任せるのも乙なものですよ?


全編において繰り広げられるフラグブレイカー。
よく二次元的な話だと恋愛フラグだの死亡フラグだの、
それっぽい挙動や発言でその後の展開を示唆することはよくあります。
が、現実ではそう簡単にいかにもな事が起こるわけではなく、
起こったとしても気付かずに流してしまうことの方が全然多いのです。
本作でも作中に何度もそれらしいフラグが立ちかけているのですが、
その全てを完膚なきまでに破壊して突き進む様子は、
ある意味清々しくもあり、鬱でもあり・・・

  • ケース1

女1は男1のことが好きで、
話しかけるきっかけと自分の存在アピールを兼ねて、
男1の足元にわざと消しゴムを転がし、
「ごめーん、それ私の」
と、接近を試みる。

これがラブコメだったら、
「実は俺のこと好きでわざとやってんじゃないのか?」
とか言って距離が近付いたりするところを本作では、
「消しゴム落としすぎだろ。俺のとこに何回落とすんだよ」
と、ぞんざいに放り投げて消しゴムを返して終了。

  • ケース2

女2は男2のことが好きで、
所属が同じ委員会が遅れることで話しかけ、
共通の話題から頑張って会話に持っていこうとする。

話しかけてくること自体がフラグなのだから、
そのまま雑談に突入して楽しい談話時間と急接近してもいいところなのを、
「ゲームしてるから時間になったら呼んでね」
と一言返して会話終了。
しかもプレイ中のゲームがギャルゲーという追い撃ち。
(このケースでの女子側である新里さんは他エピソードでもフラグを折られてる)

  • ケース3

女3は男3のことが好きで、
日直なんだから仕事を手伝ってよと話しかけ、
共同作業をするべく接近を試みる。

ここは男であれば勿論、
「じゃあ協力してさっさと終わらせちまおうぜ」
とか言って一緒に作業をするところでしょう。
が、本作での返しは別々の方が効率いいからと、
「じゃんけんで日誌と黒板消し決めよう」
と、完全作業分担で共同作業終了。


以上3つの作中に出てくるケースを挙げてみましたが、
何が恐ろしいって、これが同じ一話のたった3ページの間で起こっているということ。
身近にはこんなにもフラグに溢れているというのに、
自分は三年間の間に一体どれだけのそれをブレイクしてきたのだろうか・・・
しかし逆に狙いすぎても全く機会が訪れないという罠。
各エピソードの間に小劇場的な短編が入っていて、
やや中二病の気がある一人の女子がフラグ求めて奔走するのですが、
これがまた痛々しいわ全く成立する気配もないわで、
本編で感じるモヤモヤ感を更に増大させてくれること請け合いです。

もしかして自分はとんでもないものを読んでしまったのではないだろうか。
そんな気分でいっぱいです。


へし折られたフラグのサルガッソーを往くはA級フラグ建築士兼A級フラグ破壊士。
一応本作のヒロインになるであろう保延さん。
男女関係ってものを全く意識していないのか、
髪がボサボサだったり、
鼻かんでるシーンがやたらと多かったり、
普段から制服のスカートの下にジャージを着ていたりと、
女子力と呼べる要素はほぼ皆無に近いほど。
缶ジュースの回し飲みで間接キスかと思いきや、
口を付けずに流し込むような無意識ブレイカー。
そんな恋愛とは全く縁が無さそうな保延さんが、
ちょくちょく思わせ振りな言動をすることが多くて、
思わずドキリとさせられてしまうんですねこれが。
前述の通り、本編がフラグ破壊の上に成り立つ不毛の地ですから、
まるでオアシスのように感じますよ。
草野が他の女子といい感じになってるところに対抗心燃やしまくりだし、
何よりも破壊力が高かったのが巻末のカラーページ。

特に変わったことなど何も無い立ち姿だけれども、
いつも下にジャージを着ていることを考えると、
生足が一体どれだけ貴重であることか。
それに全く気付かない男三人の無頓着っぷりも相当アレだけども、
現実はこんなもんなんだろうなぁ・・・