新生活に胸膨らませ 『けいおん! college』

けいおん!  college (まんがタイムKRコミックス)

けいおん! college (まんがタイムKRコミックス)

全員揃って同じ大学へと進学し、寮生活を始めた四人。
何もかもが新しい生活で、新たな友達もできて大学生活は順調なスタートをし・・・

原作全4巻、二度に渡るアニメ化と劇場版も放映され、
特にアニメの学校モデルとなった旧豊郷小学校校舎に至っては、
つい先日登録有形文化財に答申されたりと、
漫画やアニメの枠を超えて文化的にも大きな役割を果たした、
きらら作品の中でも最大の出世株となった本作。
アンコールに応えて大学生編がお目見えとなりました。
一度完結した作品なだけに、
後日談ともなると期待と不安が入り混じるものでしたが、
そこにあったのは進学しても変わらないいつもの放課後ティータイムでした。

今までと全く違う生活への期待に満ち溢れたエネルギー、
切磋琢磨し合える存在との出会い。
サークル活動以外の部分でもしっかりと大学生していて、
四人の新たな一面を窺える新鮮さもありながら、
自分が大学入りたての頃を思い出す懐かしさもありますね。
これで来月に発売されるhighschool編とをもって本当に終わるんだなぁ・・・
始まりがあれば終わりがある。
今後また違う形で何かが展開されてゆくことになるのか、
それとも完全新作が始まることになるのかはわからないけれども、
今は再び巡り会えた奇跡に浸るばかりです。


はじめて尽くしのキャンパスライフ。
放課後に音楽室でお茶会ってわけにはいかなくなったものの、
それに代わって寮でのガールズトークにとにかく花が咲きまくり。
毎日がお泊まり会でパジャマパーティーみたいなお祭り状態な日々。
学業に打ち込むのも一つの過ごし方ならば、
こういう談話に盛り上がるのもまた一つの過ごし方。
やっぱり大学ともなると生活スタイルがフリーダムになってきますね。
実際、サークル活動やお喋り以外に関しても、
ちょくちょくと学生ならではの描写が含まれています。
講義のコマ取りで失敗してレポートに追われたり、
試験の過去問情報を取引ネタに使ってみたり、
合宿行ったり、バイトを探してみたり。

普通に大学生してるなー。
レポートとか卒研は大変だったけど、四年間楽しかったよなー。
これだけ生活環境が変わってくると人も少なからず変わるもの。
全員微妙ながらも少し成長しているところが窺えます。

唯はプロを目指して努力する晶の姿に自分たちも音楽は続けていきたいと決意し、
澪は自分から幸と友達になることに成功し、
律は上達する周りに焦りを感じ、
紬はケーキが駄菓子になって箱入りから外へと踏み出し。

本当にさりげない日常描写ではあるけれども、
数々のドラマはそうした中にこそ潜んでいるものですね。


もう一人の主人公は強気総受けのツンデレ!?
今回の大学編を最も象徴するのが晶という存在。
ある意味メインの四人以上に目立っていたとも言えますね。

見た目も今までに居なかったタイプだし、
終始ツンデレ具合が盛り上がりっぱなしでした。
外見に加えて名字が「和田」だったりするもんだから、
どこのゴッドねーちゃんだよ!と思わずツッコんでしまったけども。
入学式でのトラブルで出会い、実は同じ寮生で、
同じ軽音部へと入部して、心の底では相手のことを認めながらもライバル宣言。
ツッコみ三昧のオラオラ系と思わせておいて、実は総受けな恋する乙女。
昔は可愛かったのにねぇ・・・

これだけ濃い要素を持ち合わせているのに加えて、
舞台も高校から大学に変わっていることもあったので、
当初こそ違和感を感じたりもしたのですが、
尖ったところが次第に丸くなってく様子がリアルタイムに感じられて、
やっぱり根本的なところは変わらないノリなんだと安心です。
そんな晶のライバルとして、友人として、恋する一人の女性として、
全般的に深く関わってきているあたりにこそ、
もう一人の主人公たる所以がある、そう言えます。
しかし放課後ティータイムに対して恩那組(おんなぐみ)って聞いて、
男闘呼組を思い出したのは他にもいると思うんだ。


けいおん!という作品は一つの大きなコンサートに例えられると思うんだ。
アニメ化決定までの細々と続いていた頃は開催までの宣伝と営業。
一期目と二期目がそれぞれ本番当日午前と午後の部。
劇場版がアンコール。
そして後日談となるcollegeとhighschoolがカーテンコール。
夢のような一日だったとはこのことを言うのかな。