普段のままの貴方が好き 『ひとりみ葉月さんと。』 2巻

ついに告白に踏み切ったことで本格的に付き合うようになった二人。
しかし互いに大きな問題を抱えたままで・・・
25歳会社員女性と17歳男子高校生による、
奥手同士が紡ぐラブコメストーリーの完結編となる今回。

形式的にはカップルとなったことで一気に距離が近付いてゆき、
最後までニヤニヤものの展開と思わぬ描写の数々とで、
全力で駆け抜けていってくれましたね。

元々一巻完結予定だったものが二巻構成になっただけあって、
展開が多少早すぎると思わなくも無いけれども、
変に冗長な構成にならない分、むしろすっきりしてるかも。
葉月さんのみならず幸丸サイドの視点からも描かれたエピソードもあり、
感情移入度が半端ないです。
ラストには衝撃のサプライズが待ち受けていたりもするし、
最後の最後までラブコメ的にもヒューマンストーリー的にも楽しませていただきました。
ちなみに終盤でベトナム料理屋へ行くシーンがありますが、
日本ではあまり知られてないけどフォー以外にもブンもお薦めです。
ブンチャーもブンボーナンボーも現地でよく食べてましたよ。


付き合うからこそ知らなければならない秘密。
今後ずっと付き合っていくのであれば、
秘密なんて隠し通せるものではありませんから、
いずれは明かさなければならないもの。
今回は互いに隠していたものを打ち明けて本当の意味で恋人になるまでが中心。

葉月さんに関しては言わずもがなですね。
歳を取るとどこまでもズボラになれるものなんて我が身でも自覚してますし、
家庭に入れば色々と変われるところだってあるものだろうから、
本人が思っているほど大した問題でもなかったりします。
それよりも問題なのが幸丸の方。
初登場時から左のこめかみあたりにアクセサリーを付けていて、
ちょっと違和感あるなと思っていたら実は・・・

高校生の身空でストレスでハゲるとかヤバいだろ。
と言うか、幸丸の家が厳格ってレベルじゃない。
いわゆる年頃の子供が嗜む娯楽をことごとく禁止されてるし、
籠の中の鳥も同然じゃないか。
本人にとっては歳の差を気にしてのストレスが一番大きかったみたいだけど、
こんな家庭で育ったら確実につるっぱげになる自信あるわ。
将来的には両親とも対面することもあるでしょう。
そのときに苦労しそうではあるけれども、
自ら籠から飛び立つ一歩は踏み出せてるからきっと大丈夫。


驚くべきところで繋がる伏線と作品間リンクのメタ描写。
本作のメインがラブコメであることは間違いありませんが、
それだけでは済まされないほどのメタ展開には衝撃を隠せませんでした。
当初から実也が度々出てきては描いていた漫画のタイトルが、
本作の前に連載されていた「はつきあい」であることは、
よくあるパターンかなとそれほど気にしていなかったのですが、
最終回で漫画家になった実也の新作タイトルが・・・

本作そのもの!
確かにはつきあいでもラストのエピソードは、
それまでの話を読んだ読者って設定だったけども、
二作品続いての天丼で来るなんて思いもしませんって。
ペンネームもしっかりと一致してるし、完全にしてやられましたわ。
前作からの伏線なんて気付くわけがない。
しかもこのあたりのくだりでの台詞を見る限り、
実也も実は幸丸のことが好きだったことを示唆してますね。
姉の恋を応援していたのに、
その成就は自らの失恋を意味するってこととはまた心苦しい。
しかし、つい最近リアルの方の本作作者のカザマアヤミ先生が、
こえでおしごと!で知られる紺野あずれ先生と結婚したというニュースもありましたから、
リアルとリンクしているのであれば、
きっと近い将来実也にも春が訪れると信じてます。