どこまでも続く灼熱地獄 『てんむす』 6巻

てんむす 6 (少年チャンピオン・コミックス)

てんむす 6 (少年チャンピオン・コミックス)

熱い料理のセオリーを無視して口内に火傷を負ってしまった天子。
気力を振り絞って再び食べる手を動かし始めるが・・・

大食いの奥深さと共に、ライバル達の背景描写もあって、
毎回クライマックスな盛り上がりを見せている本作ですが、
今回は前回からの流れを引き継ぐ三回戦の後半戦が描かれており、
試合に挑む者にとっても見ている側にとっても辛い展開となっております。
極限の秒単位で繰り広げられる駆け引きなど、
非常に際どい接戦ばかりで最後の最後まで結果がわからない熱さがある一方で、
それ以上に料理そのものの熱さがヤバすぎる。

食は楽しむことができれば天国だけど、
そうじゃないと地獄であることを思い知らされました。
あまりにも過酷すぎてひたすら辛くて涙さえ出てくるほどでしたよ。
この地獄っぷりは言うなれば給食で嫌いなものが出たのだけれども、
完食するまで許さないと昼休みも一人食べさせられているときのような、
そんな感覚に近いものがあるかもしれません。
兎にも角にも、大食い勝負と言うものの
厳しい一面をまざまざと見せつけられる今回でした。


地獄のような勝負の次に待ち構えていたのは更なる地獄だった・・・
一番最初のタッグマッチで行われたチンジャオロース勝負は何だったのかと、
そう思わずにはいられないほどに残り二戦が険しすぎます。
二戦目の麻婆豆腐とか餡も豆腐も熱が逃げにくくて、
実際天子が火傷で勝負続行不可寸前にまで追い詰められるレベルだってのに、
三戦目は更に熱を内包するあんかけおこげとか、
これ考えた主催者はドSなんてレベルじゃないですって。

普通に店で一皿だけ食事するのであれば音も楽しむ料理ではあっても、
大食い勝負ともなれば話は別。
食べても食べても制限時間まで補充が続けられ、
最後まで冷めることのない火傷必至な熱いものを食べさせられるなんて、
地獄とか拷問以外の何物でもありません。

自発的に食べるのではなくて、
食べさせられることが如何に辛いものであるかは想像に難くありません。
こうして見ると、大食いって相当なエクストリームスポーツだよなぁ。
天子とか試合後が完全にレイプ目で熱い料理がトラウマになっちゃってるし。
スポーツに試合に挑む姿は美しいけれど、
苦痛に歪む顔を見るのはそれだけでつらいものがありますよ。


勝負を決したのはほんの僅かの覚悟の差。
一番最初の数合わせだった二人はともかくとして、
残り二戦はどっちが勝ってもおかしくないほどの超接戦。
しかもしっかりと冷まさなければ火傷は必至の料理ですから、
激しさも伴って二重の意味で「熱い」です。

片や前半に付けられた差を埋めるため、
片やスローペースで進まざるを得ない中で決定打を与えるため、
いずれもスパートをかける段階になってからの駆け引きが実に絶妙。

がっつけば天子のように手が止まってしまってスパートどころではなくなるし、
かと言ってセオリー通りでは横一線で停滞してしまう。
ならば熱さに耐えうる限界はどこか。
この際どい境界を巡る争いが静かにして激しい。
格闘技じゃないから直接的な描写が無いにしても、
確かに全力でぶつかり合った様子が伝わってきて、
感情移入して心動かされてばかりでした。
だからこそどちらにも負けてほしくないし、
負けて涙する姿がまた非常に痛々しくてたまらない。

あと何回こんな気持ちにならなければならないんだろう・・・