裏の顔に隠れた殺意 『瑠璃垣夜子の遺言』 1巻

瑠璃垣夜子の遺言 1 (BLADE COMICS)

瑠璃垣夜子の遺言 1 (BLADE COMICS)

過去に殺人を犯した秘密を持ちながら暮らしてきた兄妹。
それから7年後、兄の誕生日に殺したはずの相手の遺品が送られてきて・・・

最近ではよくわかる現代魔法とかとなりのランドセルwとか、
ギャグとかコメディ色の強い作品傾向が強かった宮下未紀氏ですが、
一から十まで何もかもが真っ黒なダークな世界観となる本作。
シリアス方面の話では今までも(未完だけど)ピクシーゲイルとか、
同人誌でも割りと暗めの話とか描かれてはいたものの、
本作は主な登場人物が揃って狂っていたりするもんだから、
全体に漂う黒いオーラが半端ないです。

のっけから殺す殺しただのって単語が飛び交ってますからね。
陰湿さもストレートな殺意も含めたあらゆる黒い感情が満載。
ただの殺人ストーリーかと思いきや謎の幽霊も登場したりして、
何がどういう方向に転ぶかわからなくなっており、
次は誰が死ぬのか狂うのかって変な視点で楽しみになってきますよ。
しかしタイトルに「遺言」って付いてるってことは、
やっぱり最後は主人公の夜子さんも死ぬんでしょうか・・・


見渡す限り広がる狂気の狂い咲き。
本作に登場する主だった人物の中でまともなキャラなんて存在しません。
夜子さんの時点からして過激なまでのブラコン故の狂気キャラですしね。
殺した筈の相手の遺品が送られてきたってだけの理由で、
送り主を探し出して殺すなんて極論に到達しちゃってますから相当なもの。
まぁ確かに誰かもわからぬ送り側からすれば、
明らかな脅迫の意思が見て取れるから、
殺られる前に殺るなんて考えに及ばないとも限りませんがね。
やり口も過激に陰湿で、情報を聞き出すために
確実に来させるために相手の携帯を盗んで呼び出しをかけ、
素人が持つ危険さを振りかざした日本刀を頚動脈に当てつつ尋問。

その相手が事故で死にかけたら逆に利用して
共犯者とも言える相手を更に呼び出して第一発見者に仕立て上げて脅迫する。

一日足らずの間にこれだけのことを実行してしまうのだから、
推理ものの犯人だってびっくりの行動力ですよ。
しかして他の連中も大概なもの。
話の主軸になる人たちは、かつて夜子の兄が殺した少女
「雷花」の取り巻きだった連中だったりするのですが、
過去の回想でも現在でもとにかく黒くて陰湿な連中なんですね。
今回ラストのあたりに登場した二三さんは完全にイカれてますし。
携帯を濡らされただけで飼ってる鳥を殺して食べちゃうんですからねぇ。

当の雷花本人に至っては夜子の右目をモップの柄で・・・
失明してるのか義眼なのかわからないけど目を潰すとか子供って怖いわー。
ここまでサイコなことになるとは思いもしなかった。


真相は未だ闇の中。
とにかく黒い人間ばっかりで陰湿な人間関係に目が行ってしまうけれども、
あらゆる謎が秘められていて話がどういう方向に転ぶのかが想像できません。

簪を送り付けてきた犯人は誰なのか、
死んだはずの雷花が生きていたりするのか、
夜子の前に現れた幽霊の正体は何なのか、
ほとんど出番の無い兄は何か知っていたりするのか、
二三の言う「神」の正体は何なのか。
列挙しただけでもわからないことばかりで、
これらの謎がいつどんな形で明かされていくのか気になりますね。