長門有希は二度恋をする 『長門有希ちゃんの消失』 4巻

たくさんのやりたい事に思いを馳せ帰宅する雨の日。
長門の目の前に一台の車が迫ってきていて・・・
八ヶ月待った!
前回のラストがあまりにも衝撃的すぎて、
完全な生殺し状態という拷問のような待ち続ける日々は、
単行本派には非常につらいものがありましたよ。
しかし待った甲斐があっただけの切なくも素晴らしい内容でした。

色々と衝撃的な今回だったけど、
根本はラブコメであることはしっかりと守り通してくれましたしね。
まぁ何はともあれ前回ラストで最悪の事態すら想像してしまっていたので、
轢かれて大怪我して入院とかって流れじゃなくて安心しました。
これで長門がどうなってしまったのかを案じて気が気じゃない日々を送るのは終わったけど、
今度はまたラブラブっぷりにニヤりたい期待に胸を躍らせて、
やっぱり気が気じゃない日々を送ることとなるのですね。
今回全く出番の無かったハルヒも次回はまた大暴れしてくれそうだし、
再び訪れるドタバタ劇と共に紡がれる恋愛劇が楽しみでなりません。
どっちに転んでもハートをがっちり掴んで離してくれませんよまったく。


長門長門じゃなくなる、しかし長門長門だった。
結果として轢かれたということもなく軽く接触して転んだくらいで、
怪我も擦り傷程度で無事だったから良かったのですが、
そのときのショックで一時的に人格が変わってしまった長門を中心に描かれる今回。

ヤングエース購読してリアルタイムで追ってたとしたら、
これはこれできつかったんだろうなー。
本作のタイトルに「消失」と付いてるもんだから、
いつ何が消失するのかってところがいつでも気になってるところですし、
これであのちょっとぽんこつさん気味なキャラの
長門という人格が消失してしまったとも取れてしまいますからね。
そんなわけで変わってしまった人格がどんな風になったかといえば、
表情変化に乏しく口調もどこか無機質的、
ゲームじゃなくて本を好むようになって全体的にスペックが向上している。
キャラ的な感じで言えば原作版に近い風になった感じですね。
記憶喪失したわけじゃないから記憶もしっかり残ってるし、
大食いキャラなところは変わってなかったりするから、
やっぱり長門長門であることに間違いないんだなとは思いますが。

最終的には一時的に変わった長門の人格が「消失」し、
元の長門へと戻ることになるわけだけれども、
もはや叶わぬ願いと知りながらももう一度あっちの人格も見たいですね。


人格関係無しにラブコメ進行中。
確かに人格チェンジで大変なことになってしまった今回です。
が、やっぱり根本はラブコメなので話も重くないし、
しっかりとラブがコメってくれているのですよ。

今回の長門は自分の記憶が自分のものじゃないように感じてしまって、
自分自身の感情を横から眺めたように捉えているから、
逆に普段の長門がどれだけ想い想われているかが際立つんです。
しかも話が進むごとに段々人間味が色々と見えてくるし、
「こっちの長門」も悪くないなと思えてきてしまうんですね。
勿論それはキョンと朝倉さんの二人によるものが大きいのだけれども。
変わってしまった自分は本来あるべき存在ではないと思う本人をよそに、
いつもと変わりなく接してくれる二人と触れ合ううちに芽生える気持ち。
普段の長門じゃない「こっちの長門」も確かに恋をしました。
それを朝倉さんにしてきされたときの表情がもうね。

間違いなく本作の長門の顔です。
例え人格が変わっても長門には変わりないんですよ。
とは言え、結局は一時的なショック症状によるものだからいずれは元に戻るもの。
その時が近付いて告白にまで踏み切る長門がとにかく切ない。

「こっちの長門」からすれば決して叶うことがない願いであると同時に、
決して願ってはならないものだから・・・
切なさも愛しさも見せてくれて本作の長門の素敵さを改めて教えてくれてありがとう。
本作の世界にもう一つの長門有希という人格が存在したことを決して忘れません。