戦う意義の自覚、第三勢力の暗躍 『めだかボックス』 15巻

めだかボックス 15 (ジャンプコミックス)

めだかボックス 15 (ジャンプコミックス)

次期候補生オリエンテーションの一件でめだかとの対立を決意した善吉。
直接対決の舞台は着々と整いつつあり・・・
前回の善吉が反旗を翻した急展開によってどう転ぶかわからなくなった中、
いよいよアニメ版も放送開始となる本作。
どちらの側面からも目が離せない旬の作品なだけに今期は要注目ですね。
一体どのあたりまでの内容をやるのか、
いわゆるお色気枠にはなってほしくないなとか、
楽しみであると同時に不安な気持ちになるのはメディアミックスの常です。
しかし当初は2〜3巻くらいで終わるようなものかと思いきや、
気付けば二桁到達した上にアニメ化に至るとは
色んな意味で意外性をもって常に我々を驚かせてくれますよ。
そんな本編は前回「主人公」となることを決意しただけあって、
善吉が自分の気持ちに整理をつけて本格的に主人公っぽくなってきたり、
毎回安定の裸エプロン先輩こと球磨川が相変わらず大活躍だったりと、
男サイド寄りの話になってますね。
と言うかめだかちゃんが完全に悪役状態になってきてる・・・
元々完璧超人すぎて主人公らしくない主人公だったりしたし、
世の中には自分が勝つためには何でもするような
生粋の悪役が主人公の作品だってあったりするから、
ある意味ジャンプらしい内容になりつつあったりはするんですかね。


バトル展開転じてラブコメパートへと突入!?
最初期の頃はお悩み解決ものだったし、
それがいつの間にやらバトルものになってた転換っぷりにも驚いたものだったけど、
ここにきて更にラブコメとしての転換フラグが立つとは実に驚きです。
学園ものの格闘バトルがいきなりファンタジーものになってしまった、
某タカヤな超展開ではないにしても、
10巻以上続いた定型句を崩すのはかなり大胆な手法ですよ。
あれだけソロプレイ特化しまくっためだかに子供の頃から連れ添っていた理由。
何気にマザコンな一面も見せながら、親よりもめだかを選ぶであろう確信。

それは恋愛感情という実にシンプルな一点に集約されていて・・・
ずっといることが当たり前のような関係だったから、
改めてそういう自覚をすることって実は難しいのかもしれませんね。
その事実に気付いたときの善吉のリアクションは
凄まじいまでの自己嫌悪に陥っているわけですが、
好きの一点で連れ添ってたことで見開きで凹むとかどれだけピュアなんだよ!

いまどきの純ラブコメですら滅多にお目にかかれないほどの、
天然記念物級の純粋さですねまったく。
ここで「下心」ではなくて「恋心」と一喝した江迎さんがまたヒロイン指数凄まじく・・・

過負荷として初登場したときは見開きを文字で埋め尽くすほどの病みっぷりだったのに、
普通に可愛くなってますね。
涙ながらに語るのは色々と複雑な感情を持ってたんだろうなー。
自分がどれだけ愛しても善吉の心はめだかに向いている事実故だと思うと切ないです。
直接的に想いを向けた江迎さんに対して、また違う価値観を持った半袖は格好いい。

少なくともこれで四角関係ではあるわけですか。


もう一人の影の主人公は今回も大活躍。
ある意味本作において最も主人公らしいとも言われる球磨川
人気投票で二位以降に圧倒的大差を付けて一位に輝いたり、
オリエンテーションでは裸エプロン先輩の二つ名をゲットしたり、
前回も宗像とバトルして「大嘘憑き」が復活して
第三勢力として裸エプロン同盟を設立したりと、
既にシリアス要員としてもお笑い要員としても欠かせない存在になっていますが、
後半は完全に彼の独壇場でした。

巻末には箱庭学園に転校してくる前の番外編まで収録と、
球磨川のターンは尽きることはありません。
戦局を引っ掻き回すためにいくら戦力増強と影響範囲拡大を図るためとは言え、
海千山千揃いの委員会連合相手に改めて勝負を吹っかけるとか、
もう第三勢力なんてレベルじゃないだろこれ・・・

勝負方法に用いた七並べとオセロを融合させた、
特殊ルールの「赤黒七並べ」のゲーム性もさることながら、
巧妙な仕込みっぷりや絶妙な駆け引きもあったりと、
これ単体で話が成立するくらい完成度が高いですね。
いつの間にやら福本ワールドにでも迷い込んでた錯覚すら覚えますよ。
しかしこんな勝負の最中でもいつもの「紳士」っぷりを見せる裸エプロン先輩マジクールです。