ゲーセンで出会った超絶ゲーマーな子の話 『ハイスコアガール』 1巻

ゲーム大好きな少年・ハルオはスト2で7連敗を喫していた。
対する目下27連勝中の相手は、クラスメイトのお嬢様だった・・・

押切蓮介氏と言えばホラー作品以外にもゲームネタの話を得意としており、
全く同じ世代故に共感しまくりのピコピコ少年シリーズで
ゲーマーとしての側面を存分に見せつけてくれていましたが、
そんなゲームネタをエッセイ形式ではなくラブコメにしてしまった本作。

作中の時代設定も格ゲー全盛期の先駆けとなるスト2が稼動を開始した91年。
主要キャラの年代も自分や作者と同じ当時小学6年生世代と、
見事に直球ストライクでやってくれましたよ。
リアルなゲームネタと、プロ級ゲーマーな少女とのゲーセン通いの非リアルによる、
奇妙な融合っぷりが見事にハマった一作。
氏の作品としてはこれまでにないタイプの内容なだけあって、
ホラー作家としての氏しか知らない人にこそ勧めてみたいですね。
勿論現在32歳の79年〜80年世代にも。
ゲーセンが主な舞台で、女の子との出会いって内容は、
少し前に「ゲーセンで出会った不思議な子の話」が話題となりましたが、
そういうのとは全く異なるコアなネタが満載な上に、
ヒロインが死んだりすることもありませんので、
例の話を想像していると色んな意味で裏切られることとなりますのであしからず。


今見ても輝かしき90年代ゲームの数々。
91年と思いっきりピンポイントで年を指定している時点からして、
その年の主だったゲームのネタを語り尽くさんとする勢い満々で、
当時の最新作のみならず80年代作品に至るまで
ゲーセン通いしていたならば誰もが一度はプレイしたことがあるようなゲームが
これでもかって勢いで続々と登場してきます。
最初からスト2を持ってくるのは至極当然の流れなのですよ。
筐体にプレイ予約でコインを置き重ねる光景なんて
今じゃ絶対見られないですからね。
どれが誰のかわからなくなってしまったり、
気付いたら誰かに取られてしまっていたりなんてトラブルもまた懐かしい。
しかも一話目からガイルを使って待ちガイルだの投げハメが飛び出る凄まじさ。

最近の格ゲーは攻めたもん勝ちの傾向が強くて待ちなんてそもそも成立しないけど、
当時はチキンプレイの代名詞として悪名高かったんですよね・・・
後にサムスピにおいて更にタチの悪いサルロットが横行することになるのだけれども、
今回の時系列ではそこまで進まないのでそれはまた別のお話。
と、こんな禁断のプレイを取り上げてしまうあたりが、
リアルタイムでゲーセンでプレイしてきたんだってことを実感できますね。
一番多いネタはスト2であることは確かだけれども、
別に格ゲーオンリーの話ではなく、他にも盛り上がったゲームの話題が満載。
ファイナルファイトスプラッターハウス
大型筐体では初代ストリートファイタースペースハリアーにスペースガン、
コンシューマー機はあえてPCエンジンと非常にコア。

個人的にはギャラクシアン3が出てきてくれると嬉しいんだけどなー。
6人同時プレイで90年にして最近のカードゲーム筐体にも勝る大型スクリーンと、
90年にしてはすごい前衛的だった反面、
プレイ料金の敷居が高くていつもギャラリーしてた思い出があります。
本当にスト2関連だけでも十分なのに、
この時代のゲームの話題だったら本当に一晩持つわー。
はい、本田で春麗にさば折りでハァハァなんてのもやりました・・・


ゲームを通じて芽生えた想いの正体とは・・・
前述の通り、これでもかとゲームの話題が満載なわけですけれども、
あくまで本作がラブコメであることを忘れてはなりません。
ブコメと言っても相当に特異なのは間違いありませんがね。
兎にも角にもヒロインの大野さん。
何を考えているのかよくわからないと思いきや、
段々と以外なまでに単純なところが出てきたりするんですね。
91年当時としてはそういう単語以前の全く未知の世界であるタイプのキャラです。
ツンデレ」じゃなくて「クーギレ」とでも言うのかなこの場合。
全体通してハルオがボコられるシーンが多いですし。

単純にハメプレイにキレたのが始まり。
後半では照れとか怖いとかの感情を隠すための暴力がメインになってきて、
確かにムカつく奴から違った想いへと変わってきてるんです。
キレキャラであるのと共に超絶ゲーマーでもある一面も。
開幕のスト2連勝記録もさることながら、
ファイナルファイトで最初にわざと残機ゼロにしてからの錬金プレイ、
しかもハガーを使ってワンコインクリア。
脱衣麻雀にすら興じてしまう。

やだ、この娘ったら完全に人間ゲーメスト状態じゃないのさ。
こんなどつきどつかれの日々が続くと思っていたら唐突に訪れる別れの時。
最後の最後で一貫して何も喋らなかった大野さんが発した泣き声。

結局まともな台詞が一度も無かったことが別れのインパクトを増大させてますね。
果たして二人の再会は今後ありえるのか否か。
2年後となる中学生編の展開に期待大です。