2011年度漫画マイベスト10〜既作編〜

いつも毎年最後には個人的に良かった漫画ベスト10を挙げたりしていますが、
基本制約としてその年が初出の作品に限定していたため、
今回は新たな試みとして、既作部門を作ってみました。
こちらの制約は新作部門と正反対で、

  • 2011年以前に1巻が発売されていること
  • 2011年内に2巻以降が発売されていること

の2点に限定したものとなっています。
で、ランキングの前に新作部門と同様に、
薦めておきたい作品をピックアップしてみます。

RATMAN 01 (角川コミックス・エース 152-2)

RATMAN 01 (角川コミックス・エース 152-2)

企業と契約したヒーローが宣伝活動や慈善活動を行う世の中。
ヒーローに憧れる少年は悪の組織に所属することとなってしまった。
今年ヒットしたアニメの一つにTIGER&BUNNYがありますが、
実在の企業ではないにせよ、企業契約したヒーローが活躍すると言うのは、
既に本作が4年前に基本設定として構築済み。
それのみならず、正義のためのヒーローのはずなのに、
中には目的のために手段を選ばない者もいる。
主人公も悪の組織に所属しながらも、正義の心は忘れずにいる。
ええ、とにかく話が熱いんです。
特に本年にリリースされた最新2巻分は、
初期からの因縁のライバルとの最終決戦と決着など、
非常に燃える内容になっており、今だからこそ薦められる一作なのです。
個人的には本作を読まずしてヒーローものを語る勿れと思ってるくらいですので。


それではここから本編のベスト10に入ります。

私のおウチはHON屋さん(1) (ガンガンコミックスJOKER)

私のおウチはHON屋さん(1) (ガンガンコミックスJOKER)

実家の仕事はエロ本屋。
そこで働く小学生の世間体とのせめぎ合い。
普段は家の仕事を恥ずかしいと思って必至で隠そうとしていながらも、
エロ本ソムリエとしての才能は天賦のものを備えていたり、
他人から馬鹿にされれば逆に論破してしまう誇り。
ただのスケベなだけではない客たちの人間としての温かみ。
特殊な環境で繰り広げられるハートウォーミングなヒューマンドラマに、
思わずほっこりとした気分になれる一作です。

ゆるゆり (1) (IDコミックス 百合姫コミックス)

ゆるゆり (1) (IDコミックス 百合姫コミックス)

ゆるゆり (7) (IDコミックス 百合姫コミックス)

ゆるゆり (7) (IDコミックス 百合姫コミックス)

アニメ版も放送され、既に二期が確定している絶好調な本作。
しかしてその本領は原作にこそあります。
特に作者の執筆速度は『神』と呼ばれるほどであり、
単行本の三ヶ月連続刊行、しかも三ヶ月目はオール描き下ろしと言う伝説は、
神格性を決定付ける逸話としても知られています。
本当は放送期間中毎月描き下ろすつもりだったのを編集に止められたとか・・・
タイトルの通りのゆるい展開によるギャグが中心ですが、
時折入るガチ百合の本領発揮するところが侮れません。

嫁姑の拳 (秋田レディースコミックスデラックス)

嫁姑の拳 (秋田レディースコミックスデラックス)

嫁姑の拳 5 (秋田レディースコミックスデラックス)

嫁姑の拳 5 (秋田レディースコミックスデラックス)

2009年度の新作マイベストに選定した本作。
本来なら泥沼の重苦しくも陰湿な展開になりそうな嫁姑戦争。
それを超人的な身体能力を有した武闘派二人をメインにしたことで、
陰湿さの欠片も無いド直球な格闘ギャグになっています。
物事は拳でこそ語られることってあるんですね。
家庭内のみならず、あらゆるところで巻き起こるトラブルを、
その拳と身体能力、常人外れた思考とで解決してゆく姿は、
笑いと共に爽快感をももたらしてくれます。

高杉さん家のおべんとう 1

高杉さん家のおべんとう 1

亡くなった従姉弟の娘と一緒に暮らすことになったことから始まる家族劇場。
当初は遠かった二人の距離が、
弁当を通じて縮まってゆく不器用な関係。
同居生活によって互いの心境にも変化が訪れ、
人間的にも成長する姿がとにかく温かい。
直接の親子ではない関係ではないにせよ、
家族ってのはこういうものなんだと教えてくれます。
徐々に恋愛的なフラグも立ってきているところも目が離せません。

ドリフターズ 1 (ヤングキングコミックス)

ドリフターズ 1 (ヤングキングコミックス)

ドリフターズ 2 (ヤングキングコミックス)

ドリフターズ 2 (ヤングキングコミックス)

戦場で死んだ筈が異世界で戦うことになっていた。
あらゆる時代と国を超えて英雄たちが繰り広げる大戦争
どこぞの聖杯戦争を彷彿とさせる展開ながら、
独自の解釈と演出によって一味も二味も違う内容に。
ダークヒーロー的としての信長の存在感が圧倒的で、
基本悪人的な考えなんだけども、とにかく格好いい。
謎も多いし、どう転んでゆくかわからない戦いに今後も注目です。

のんのんびより 1 (MFコミックス)

のんのんびより 1 (MFコミックス)

のんのんびより3 (MFコミックス アライブシリーズ)

のんのんびより3 (MFコミックス アライブシリーズ)

文字通り何も無い、東京なんて都市伝説な田舎町。
非常に大らかな環境で繰り広げられるまったりゆるゆるコメディ。
本年に出た全作品中、最も再読した作品だったりします。
飛び抜けた何かがあるわけでもないのだけれど、
頭を空っぽにしてついつい繰り返し読んでしまう中毒性がありますね。
ボケとツッコミのテンポが心地よい。
老後の余生を過ごすのは、こんな風のまったりした環境がいいなと。

そんな2人のMyホーム 1 (アクションコミックス)

そんな2人のMyホーム 1 (アクションコミックス)

そんな2人のMyホーム(4) (アクションコミックス)

そんな2人のMyホーム(4) (アクションコミックス)

よくできた娘と超親バカ親父の親子が繰り広げる、
様々な愛情の形が描かれるホームコメディ。
いつも来る宅配業者の兄ちゃんが娘の幼馴染だったことが判明してからの、
恋愛的にも親子的にも事情が一変して一気に話が加速してからは、
とにかく見逃せない展開の数々。
最終的に親から巣立つ決意をする娘と、
娘に依存しすぎていた自分を見つめ直すことになる父親。
あらゆる障害を乗り越えて辿り着いた結末は感動の一言です。

慶太の味 渡職人残侠伝 (ジャンプコミックス デラックス)

慶太の味 渡職人残侠伝 (ジャンプコミックス デラックス)

慶太の味 4 渡職人残侠伝 (ジャンプコミックス デラックス)

慶太の味 4 渡職人残侠伝 (ジャンプコミックス デラックス)

本編がどれだけシリアスでも、スピンオフや番外編ではっちゃけることがある。
料理漫画のスピンオフでここまでぶっ飛んだ作品はそうそうありません。
これでも最初の頃はまだマシだったのが途中から下ネタと筋肉全開になり、
最終巻では慶太の筋肉が出ない回が無いと言う有様。
でも料理漫画と人情ものって本分は忘れていなくて、
ただのギャグに成り下がっていないあたりがすごいです。
ぃゃ、完全にギャグであることは間違いないんですがね。
何故料理ものって笑えるものが多いんだろう。

みそララ 1 (まんがタイムコミックス)

みそララ 1 (まんがタイムコミックス)

みそララ(5) (まんがタイムコミックス)

みそララ(5) (まんがタイムコミックス)

ライター業としても段々慣れて来た頃に待ち受ける罠。
社会人であればわかる仕事の楽しさと辛さ。
誰もが一度はやってしまうような失敗。
学生の頃やバイトならある程度許されることであっても、
地に足を付けて働いている身である以上は許されないことがある。
取り返しの付かない事態を招いていたことに気付いたときの絶望感。
あの痛さが忠実に描かれていて、身を切るような思いでした。
そこからのリカバリも含めて、これぞ仕事って感じなので、
社会人なら経験を省みることができるし、
学生ならこういう失敗だってあることを事前に擬似体感できる。
そういう意味でも印象が強かった一作です。

おたくの娘さん (第1集) (角川コミックスドラゴンJr. (KCJ100-1))

おたくの娘さん (第1集) (角川コミックスドラゴンJr. (KCJ100-1))

おたくの娘さん 11 (ドラゴンコミックスエイジ す 1-1-11)

おたくの娘さん 11 (ドラゴンコミックスエイジ す 1-1-11)

独身オタク男の下に突然娘がやって来た。
長く続いた本作も衝撃と感動の完結を迎えました。
とにかく随所に盛り込まれたネタと伏線が半端なく、
最後の結末ですら意味深なところで終わっていて、
衝撃と疑念が吹き荒れると言うすごい置き土産。
オタクと言う存在自体を全否定する相手との親権を巡る対決も、
一人の親として成長した父と、
そんな父を親として信頼するようになった娘の絆は、
2011年の今年の漢字が『絆』だった点からも感動できます。
色々と偏見と勘違いで見られがちなオタクへ対する認識を
真っ向から否定する実にいい人間ドラマでした。


と、今回はじめて既存作品を取り上げてみましたが、
こっちは選択の幅が広い分、かなり好き勝手に選んでます。
やはり完結した作品が終わり方ってものもあって、割合が高いかな。
こちらの部門の方も恒例化していければと思う次第です。