支配するのは世界か人か 『ビッグオーダー』 1巻

十年前の大災害によって半壊した世界。
一人の少年の願いを発端としたそれは全ての序章に過ぎなかった・・・
現在もアニメ版が放送中の未来日記を手掛けたえすのサカエ氏による、
完全新作能力バトルの本作。
前作では話が後半になるにつれて世界規模に拡大していったものが、
最初からいきなり世界が滅びかけたとか、
スケールがとんでもないことになってます。
バトル描写や心理描写は相変わらず凄まじいものがありますし、
早くも世界を敵に行動を開始する展開もあって、
これからどんな風になっていくのか今から期待が持てますね。

妹のため、世界のため、あえて悪になった主人公が、
己の目的を達成する手段としての悪を貫き通せるのか、
単純に全てを支配することが目的の純粋なる悪へとなってしまうのか。
能力バトルとしてもダークサイドヒーローとしても、
なかなかにテンション上がります。

これでもかってくらいストレートな中二的バトルは、
やっぱり盛り上がるよなー。
加えて氏の作品ならではのイカれたキャラも登場して、
いつ誰が殺されてもおかしくない緊張感があります。


最大の敵はヒロイン!?
結果的に世界を相手取って戦争をおっ始めることになったわけですが、
それ以上に手強い一番の敵は最も近くにいる存在であるヒロイン自身。
未来日記由乃も主人公のためなら手段も相手の生死も問わず、
最終的にラスボスとして立ちはだかることになったりと、
終始ぶれないイカレっぷりを見せてくれていました。
が、本作におけるヒロインの鈴さんも
負けず劣らずのイカレっぷりを発揮しています。
由乃がいわゆる『ヤンデレ』であるのに対し、鈴は言うなれば『キルデレ』。
ぃゃ、『キルキル』でもいいかも。
勿論『キル』とは『kill(殺す)』であり、
両親の仇である主人公の命を常に付け狙う超危険人物。

己の目的のためなら手段を問わないあたりも相変わらず。
同じ戦いの土俵に上げるためにいきなり主人公の妹を・・・

本当にイカれたヒロインってところは歪みねぇわー。
しかしこの鈴さん、己の能力故か、以外に抜けたところもあります。
主人公の能力で直接攻撃できないからと、
跳弾狙いで銃を撃てば自分に当たり、
高いところから落ちることに期待したら足を滑らせて自分が落ちる。
不死身の再生能力持ってるからって無茶しすぎです。
ぁー、これからの基本は割りとこんな感じになりそうだなー。
でも手榴弾で自爆は勘弁な。
まぁ個人的には未来日記で言うムルムル的な立場っぽいDAISYが気になってますがね。
何しろファンタジーっぽいヒラヒラ衣装に黒スト・・・

能力を与えた彼女が何を企んでいるのかが重要になってきそう。


異色の能力が新たな世界観として惹きつける。
ぃゃー、全方位から漂う中二臭がたまらんですね。
何たって世界観からして一度滅びかけた世界ときたもんだ。
能力名も『拘束する支配者(バインドドミネイター)』とか、

『再生の炎(リバースファイア)』とか、いかにもな感じで突き抜けてます。

この手の能力バトルがそんな風になってしまうのは仕方がないし、
王道ジャンルの一つとしても確立されていますから、
そこから独自の色を出して突出するためには、
如何に奇想天外な能力と、打開策とを打ち出せるかになってきますね。
そういう意味では本作はかなり高度な領域。
基本的に劣勢なところを引っくり返す逆転劇は、
さすが未来日記で培ってきた構成力の成せる技だなと。
何と言っても主人公の能力がかなり特殊であることが大きいです。
自分の歩いた跡が『領土』になって、
領土内にある全てを人や物を問わず支配下に置ける。
考え方によっては強力だけど、制約も大きいから、
扱い方一つで優勢にも劣勢にもなってしまうんですよね。
これでも能力範囲が『一万分の一』ってんだから、
制限解除されたらチートなんてもんじゃない。
そんな能力が暴走したらそりゃ世界も滅ぶわ。
一応は味方となった十三人衆とか、
他の能力者がどんな能力を持っているかも気になるところですね。