珍客あっての商売です 『パーツのぱ』 5巻

パーツのぱ 5 (電撃コミックス EX 130-5)

パーツのぱ 5 (電撃コミックス EX 130-5)

倉庫代わりに使用していたビル2階テナントにサンドイッチ屋も開店し、
着実な商売とニッチさが共存するこんぱそは今日も絶賛営業中。
そんな中、集団万引きグループを発見した天戸さんだったが・・・
秋葉原と言ったら人によって様々な印象がある玉虫色のような街ですが、
世界屈指のPCの街としての側面をこれでもかってくらいにリアルに描く本作。
週間連載に加えて前回から一話あたりのページ数が倍増したこともあり、
着実に刊行ペースも上がって気が付けば5巻目ですか。
リアルタイムで変動する街と業界だから、
ネタの引き出しも一体どこまであるんだと奥深さに驚かされるばかりです。
今までは値引き競争や客引き戦略のような、
店側を中心とした話が多かった感がしますが、
今回は色々と個性的な客が多く、ユーザー側を描く話が多かったかなと。
店員も店員で商売そのものよりも、手木崎ならプラントPC時代の話、
本楽さんも珍しく落ち込んでしまう一面を見せたりと、
一人の人間として描かれることが随分と増えてきましたね。
PCにまつわる非常に怖い話も入っていたりして侮れません。
毎回そうなのだけれど、今回もラストの引きが凄まじく気になるところで終わっているので、
一体続きはどうなったんだ!と早くも生殺し状態ですよ。
狙われた天戸さんの運命や如何に・・・
しかし、店そのものと言うよりも店舗営業する商売である関係上、
ほとんど休みってものが存在しないってあたりはかなり怖いかも。
店長10連勤ってこの歳でそれは過労死するぞ・・・


店員だって人間です。
本当に今回は店員も人間としての個性を存分に発揮してたなーと。
2階にオープンした『こんぱん』の詩緒洲さんと武度ですが、
ずっと恋人関係かと思っていたらまさか姉弟だったとは・・・
ってことは、詩緒洲さんって実はフリー!?
ちょっとこんぱん行って来る!
武度の特製サンドだって食ってみせるさ!
ビジュアル的にも毒物な特製サンドの新たな犠牲者となった編集長さんご愁傷様です。
それを美味いと他人にまで薦めてしまう吉田記者の味覚の限界が気になるところ。
嗚呼そうか、この一件があったから今回は吉田記者の出番が少なかったのかな?
手木崎の場合は以前働いていた店にいた頃からの逸話がまた一つ出てきました。
これまでも『パスタ事件』と称された
西福田さんが惚れる要因となったエピソードなどもありましたが、
今回出てきたのは買出しにまつわる話。
ジャンケンで負けて全員の食事を買いに行かされるのはいいとして、
その店がサンボ・・・だと・・・!?

いわゆる『裏メニュー』を一切受け付けていないあの店で、
あろうことか持ち帰りを注文するとかどんだけ勇者なんだよと。
渋々ながらもちゃんと包んでもらってるし。
現実に頼もうもんなら、作中みたいに寸胴投げつけられてもおかしくないです。
相変わらず底が知れない存在だわ。
本楽さんも失敗続きで見積もりに対して自身を失ってしまう場面なんかもあり、
個人の持つ悩みに至るまで深く掘り下げられてきています。
最終的には立ち直ってくれますが、やっぱいつもの気丈な方がらしいですね。
特徴的なツインテールを外して髪を下ろした格好も見せてくれますし、
実に新鮮な感覚がありました。

そりゃ吉田記者に記事で年増だの書かれたり、
菜瀬美にもおばちゃんって呼ばれるのが固定化されてたり、
たまにはイメチェンしたくなる気持ちもわかりますがね。
ちなみに今回のカバー下表紙で年増と書かれた件の記事が閲覧可能。

その中にあるライバル店・パーツライブスの広告が・・・
『うわ・・・このPC、安すぎ・・・』
って、例のバナー広告かよ!


客の濃さも秋葉原ならでは?
いつにも増して個性的な客が多かったですね。
昨日の今日で数十万単位の買い物を平気でする金持ちの人もいれば、
対応ドライバがないからまともに動作しない周辺機器を購入し、
自作でドライバを作成・公開するような超人もいる。

保障外のジャンク品でハズレを引いて駆け込んでくるクレーマーもいるし、
価格調査に来た店員は店員でも自作PCを組もうとしてる喫茶店の店員まで。
どこのどんな店だって変わった客なんて必ずいるものですが、
ここまで特徴的な人が多いのはやはり秋葉原と言う街と、
PCパーツ店と言う一般的とは言い難い店であることがあるのかな。
以前本作に触発されたと言ってもいいくらいの勢いで、
本当に全体的にパーツ一式買い換えて組んだのが既に2年以上前。
当時の準ハイエンド級クラスのスペックで揃えたから、
現状動作的な問題はないにせよ、
近い将来にHDD増設とかはしたいかもなーなんて思ってきたりします。
客を見て自分も客になりたくなったってところでしょうか。


勿論PCパーツ店ならではのシーンも盛りだくさん。
ディスプレイのデモ映像に夢中になってしまって、
本来の目的を忘れてしまう罠にこれまで何度ハマったことか・・・

何故か店で見るムービーってすごく綺麗でクオリティ高く見えるんですよね。
これは店員がハマってしまっても仕方が無い。
ウチもそれなりのディスプレイを使ってはいるけれど、
有効活用されるのがBD再生するときくらいしかないのが悩ましい。
ちょっとこんなん見せられたら3Dディスプレイが欲しくなっちゃうじゃないですか!
今買い換えるとしたら間違いなく対応してるやつにするだろうなー。
他にも次期モデルのグラボサンプルをベンチマークにかけて壊してしまったりとか、
こんな店でもなければ絶対なさそうな一幕もあったり。

実際あるんですかね?
発売直前でこうした不具合が見つかってファームウェアのアップデートで対応するってパターン。
でもあるからこそ描かれてるんだろうなー。
一般ユーザはあまりここまでやることはないかもしれませんが、
この手の数字を出すことに全力を注ぐ人とか、やる人はやりますからね。
経営戦略としたうまいと思ったのはこんぱんのイメチェン。
客入りが悪い状況へのてこ入れも舵一つで化けるんだなと。
店内にPC-88のXanaduとかやべぇ・・・

往年のゲーマーにとっては必殺の威力があるんじゃなかろうか。
同じレゲー専門店のスーパーポテトとかたまに行くとテンション上がりますしね。
そんな中で最も強烈であり、最も怖かったPCにまつわるエピソードが一つ。
突然起動しなくなったPCを持ち込んで修理依頼に来たお客さん。
調べてみると電源の中に『G』の死体が・・・

ぃゃ怖い怖い怖い!
奴は密閉してるはずの隙間にさえ入り込む。
体験したことはないし、したくもないけど、
ケース開けたら干からびたそれが入ってたなんてこともあるみたいですし。
身近なだけにPC関連のホラーは恐ろしや。