旅は大波乱へのフラグ立ち!? 『がんばれ!消えるな!色素薄子さん』 6巻

一日だけ保育園のお手伝いをすることとなった薄子。
予想以上の子供パワーに終始圧倒され・・・
まったりした日常コメディであると同時に、
将来に思い悩み成長してゆく若者たちの姿を描いた本作。
大学生活も三年目となって折り返しを迎え、
各々の考える将来も徐々に形を成してきている頃合となり、
少しずつながらも前進している様子はまさに人生。

薄子本人のみならず、周囲の人たちも個別の想いを持っていて、
それぞれの考えを持って悩む姿も多角的に及び、
人生にサブキャラなしを地で行く展開には、
ほんわかした和み描写において深く心に響くものがあります。
見た目によらず山あり谷ありの波乱に満ちた展開だったりしますからね。
京都旅行なんて開幕から重大なトラブルが起こってどうなるものかと心配でした。
薄さが災いして一人バスに乗り遅れてしまうだなんて・・・
現実にそうなったことを考えると途方に暮れてしまうところだけど、
この件を通して全員の友情具合とか、
周りからもはっきりと確認できるほどの自身の存在アピールとか、
確かな成長具合が見られたことは大きな収穫ですね。

再会できて涙ぐむ雲ちんは可愛かった。

本編の中で京都の街そのものが出てきたりはしないけれども、
それでも京都散策に出かけてみたくなるわ・・・


悩めるうちに大いに悩め、将来を悩めるのは若者の特権だ。

やっていきたいこと、将来志したいこと、
思い返してみれば幾らでも選択肢なんてものは存在していて、
その上で決定した現在ってものが満足できているかどうか、
そう考えてみるとなかなか肯定できるものでもなかったり。
さすがに今から自分の人生を省みるにはあまりに遅すぎる自分だけど、
将来にこれから無限の可能性を秘めて思い悩む若人なれば、
色々と教わるものがあるのではないでしょうか。

今回は実に様々な形で自らの選択に対する考えが描かれています。
薄子は保育園の一日お手伝いや、
事務の手違いで当初志望したところではないゼミに配属されたことを契機に、
次第に自分がやっていきたいことが明確になり始めてきている成長具合を。
画太からは家族の中で自分だけが無個性であることに対するコンプレックスと、
未来への選択を決定するきっかけなんてものは案外身近なものにあると言う、
灯台下暗しな発想を。
撫子からは自分が選んだ選択そのものに対する恐れと、
それを確認することの勇気を。

本当に全員主人公だなーと。
進路の選択を悩んでいた頃も、これくらい悩んで決定できるだけの意思があれば、
何となくでここまでやって来てしまった自分の人生も少しは変わったのかな。


6巻目にして初の限定版登場!
ドラマCD自体は一年ほど前に単体で発売されたものがありますが、
今回はそれとも違った新規オリジナルストーリー。
絵がなくて声だけでイメージするしかないものを、
聴くだけで情景が浮かんでくるのは、
やっぱり声優の演技ってすごいよなと思う次第。
早見さん演じる薄子の消え入りそうなトーンとか、
声だけで『薄い』ってのを体現してますしね。
花澤さんの撫子も、あの声で京都弁は破壊力高かった。
薄子&撫子は丸一日聞き続けられそうな気がしてきたり。
それと、薄子&雲ちんのドナドナデュエットは一聴の価値ありです。


しかし本作の男キャラは濃いのが多いなー。
画太とかみたいな例外はいるにせよ、
画子親父と撫子親父が書道家と陶芸家とか、
設定も濃ければ見た目も濃い。

これに濃造も加わったら全く別の話になってしまいそうな・・・