希望と絶望がぶつかり合う最終決戦 『年中無休★サンタさん!』 4巻

年中無休★サンタさん 4 (IDコミックス REXコミックス)

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自分こそが黒いサンタであることを明かした会長と、トナカイとしての覚醒した高尚。
二人を追って始まりにして終わりの地、ドイツへと向かう一行だったが・・・
夢を叶えるサンタ少女たちのバトルもいよいよ完結。
最終局面なだけあって、ギャグ描写も少なめに、
まさに最終決戦とでも言うべきシリアスさと熱さによる重厚さが詰まった今回。
今までずっと戦い続けてきた敵であるプレゼンツの正体や、
黒いサンタが人間を憎む理由、全ての発端にして元凶である黒幕の登場、
燦が『最強』と言われ続けてきた本当の理由など、
随所に撒かれ続けてきていた伏線を一気に回収するラストバトルはとにかく熱い。

最近は某魔法少女のように見た目に反して、
異色な展開を見せる作品が増えてきたようにも見受けられますが、
それこそ今の時代が求めているものであり、
これからの作品はそうあるべきであると思わせてくれます。
もはや萌え成分だけの変身ヒロインは時代遅れなのか!?
熱く燃え上がる展開こそが今後の王道たりえるのか!?
一つの答えがここにあると言ってもいいかもしれませんね。
それくらいに見た目に反した王道バトルの燃え展開でした。

表紙が若干露出高めだからと言って、そういうものを期待していると、
色んな意味で裏切ってくれる本作です。
同じくREXで連載されていた前作のろりぽ∞メイド喫茶の皮を被った燃え作品でしたが、
今回もそれに勝るとも劣らぬ熱さに燃えさせていただきました。


彼女は、そして彼は、何故人間を憎むようになったのか・・・
形こそ違えども、共通する感情は『絶望』ただ一つ。

人間誰しも気分が沈んでしまう時、落ち込む時ってのはあると思います。
が、志半ばにして全てが絶たれてしまった者、
良かれと思い信じてきた相手に裏切られた者、
自らの力だけでは抗いようのない状況に立たされてしまい、
本当の意味で絶望した人が一体どれだけいるでしょうか。
自分もわりと後ろ向きのネガティブ寄りな考えをしてしまう方だけど、
全てに絶望したことがあるかと問われると難しいです。
近い状態になったとしても、逃げ道や抜け道は存在していた上でのことですし。
実は最初から滅亡寸前だった本作における世界。
その世界を滅ぼそうとした黒幕こそがサンタクロース自身。

良い子の願いを叶え続けて来たサンタが人間に絶望したその理由は、
一人の少年の願いを叶えてしまったがために招いた結果なのですが、
その少年と言うのが・・・
ぃゃ完全にしてやられました。
ここでそれを持ってくるのか!?と。
確かに自分が神的な存在だったとしたら滅ぼしたくなるのもわかりますよ。
と言うか、ドイツには黒いサンタってのが本当に存在するらしいですね。
良い子にはお馴染みの紅白サンタがプレゼントを、
悪い子にはなまはげ的な黒サンタが鉄槌をって、
今回の展開まんますぎでびっくりしましたわ。
ぇ?少年が誰かって?
最終決戦の地から察してください。
あと、カバー下の表紙はネタバレ全開なので読み終わってから見ることを推奨します。


勝つのは長年蓄積され続けてきた希望か、それとも世界を滅ぼすほどの絶望か。
まさに勇者と魔王が対峙するかのような展開は熱いですね。
如何な状態に立たされようとも決して希望を捨てないこと。
それは紛れもなく一つの最強の武器でした。
自らの願いさえも力に換えて戦う燦、
全てを諦めた絶望の中でも希望との葛藤に苦しむ会長。
特に会長はダークサイド面から見たもう一人の主人公とも言えるほど、
泣きたくなるほどに想いが激しく揺れ動いています。
絶望と諦めに染め上げられた黒いサンタとしての自分と、
確かに生きていることを実感できた学校で楽しく生活していた会長としての自分。

どっちも否定できない自分で、希望を持ちたくても叶わぬ身だからこそ、
最後に一人の人間として願った心の底からの願いは、
ささやかながらも非常に染み入るものがあります。
敵として戦ってきた相手が自らの葛藤に板挟みになるのもまたバトルものだなぁ。
他にもラストバトルを髣髴とさせる演出が満載で、
全ての願いと希望が込められた最後の一撃にしても、
燦が二段変身して某アルティメットまどかっぽい姿になるのも、
完全にヒーローや戦隊なノリですね。

ラストバトルが盛り上がった後にきっちりと締めてくれる最終回もまたニクい。
サンタに絶望を抱かせたのが人間だったのならば、再び希望をもたらすのもまた人間の役目。

希望さえ捨てなければ、きっと願いは叶うはず。
そう常に思いながら生きていきたいと思えるラストで最後まで盛り上がりっぱなしでした。
果たしてギャグがくるか燃えがくるか、次回作にも期待です。