それ即ち自然界の掟 『CRIMSONS〜紅き航海者たち〜』 1巻
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CRIMSONS 紅き航海者たち 1 (少年サンデーコミックス)
- 作者: 菅野孝典
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2011/09/16
- メディア: コミック
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そこに棲む若き紅鮭たちは、新天地を目指して海へと旅立つことになるのだが・・・
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ぇーと、どこからどう見ても鮭です。
ええ、鮭なんです。
クリムゾンとは紅鮭の紅。
まかり間違っても『悔しいっ・・・でもっ・・・ビクンビクンッ』なクリムゾンじゃありません。
自然界を舞台として、様々な動物が人間のように動く話は色々ありますが、
題材的にもキャラ的にも非常に濃くてシュールな世界が出てきたものです。
確かによく考えてみると、魚を題材にした作品になると、
どうしても釣りがメインで、その中の知識として生態とかが語られるものばかりでしたからね。
陸と違って水棲生物は全容が明かされていないところもあるし、
題材として取り扱うのにも難しいからでしょうか、
色んな意味ですごい斬新すぎる内容ですね。
一生のうちに淡水と海水の両方を旅するその生態は、
自然界のみに限らず、世界そのものを知るにも近いものがあり、
非常に熱い展開の中にもアカデミックな切り口もあって、
シュールな見た目に反して非常に盛り上がれる一作でした。
想像以上に熱くなれる内容には、
むしろこっちが『悔しいっ・・・でもっ・・・ビクンビクンッ』ってなってしまいます。
クリムゾン的な意味で。
常に生きるか死ぬか、それが自然界。
一生を旅する鮭ですが、生涯はとにかく壮絶の一言に尽きます。
最終的に故郷まで帰り着くことができるのはほんの一握り。
海へと無事に到達できる数すら稚魚の頃のわずか一割。
ある者は急流に流され岩に激突し、またある者はえらにゴミが詰まって呼吸ができなくなり。
一匹また一匹と脱落してゆく中に現れる鳥と言う絶対的な捕食者。
最初からクライマックスすぎてヤバいです。
バトルものとすれば既にラスボスの居城で、
突入時に脱出時に仲間達が死んでゆくくだりですって。
そしてご都合主義など当然存在せず、死ねばそれまで。
メインキャラですらあっさりと死にかねないこの世界。
海に出たことで更なる脅威に晒されることになる今後は、
一体何が待ち受けていることになるのでしょうか。
と、自然界の厳しさを教えてくれる中にもちょっと和めるシュールな展開も。
毎回冒頭でちょっとしたモノローグが入るのですが、
語り手がミジンコだったりする罠。
出てきては食われたり押し潰されたり、不憫な役どころが逆に笑いを誘います。
しかもミジンコのくせに語りが妙に哲学的だったりするし・・・
生そのものに疑問を抱くわ、神は残酷だとか批判するわ。
こいつ、実は前世は人間だったりしたんじゃないんかね?
メインは鮭たちが生き残るための奮闘を描く内容ながら、
さりげなく登場する人間のキャラが何気に目を引きます。
それが海洋生物学の大沖教授とカナダ人留学生助手のクリスさん。
本編での鮭側からすれば生きるために必死なシーンであっても、
見ている側の教授側にとっては観察と研究の対象。
一転してのどかな風景で思いっきり対岸の火事すぎる。
まぁ人の手で介入してしまうと生態系を乱すことになりますからね。
しかしこの教授たちが登場することで、
鮭の生態について自然な流れで詳しく解説してくれてるんですよね。
と言うのは建前、実際のところはクリスさん可愛いってなるお時間です。
まだ留学生ではあるにせよ、立場的に助手に近いことや、名前がクリスって・・・
どこぞの未来ガジェット的なものを思い出さずにはいられない。
で、このクリスさんですが、最初から教授に対しての好感度がMAX状態で、
ことあるごとにアプローチして迫ってくるもんだから、
途端にラブコメ作品のフィールドを展開してしまう恐るべき能力を有しています。
露骨に告白同然の台詞ばっか連呼するんですからもうね。
案外教授も満更ではなさそうだけど、あくまで師弟関係としての理性で抑えてる感じかなー。
これは陥落するのも時間の問題ですぜ。
ただ、その想いが恋愛感情なのか否かが難しいところ。
クリスさん視点の番外編も収録されているのですが、
教授を父親と重ね合わせている節もありますからね。
何気にこっちのラブコメ展開も今後が楽しみです。