マスクに込められた熱き思い 『ガスマスクガール』 2巻

激闘の果てに強敵ヘルメット・ドラーイヴァーズ・ハイを倒したものの、
束の間の日常を味わう間もなく戦いの運命は巡り巡り・・・
ヒロインがガスマスクを装着しながらガスボンベで殴ったり、
可燃性ガスを合成して爆破したりと、
強烈な印象を与えてくれたバトルヒロインが魅力な本作も2巻目にして完結。
熱い展開を物語るかのような帯書きがこれまた熱く、
裏表紙側の一言も含めて一々心の琴線に触れてくるから困る。

前回裏で動いていたDMDことデスメタルドールが本格的に登場したり、
袋と同化した人間の所有するマスクを巡る数奇なる運命、
意外な人物の再登場や迫り来る袋人間たちとの戦いと、
非常に熱くて盛り上がる展開だっただけに唐突に終わってしまったのがちょっと残念。
結果として俺たちの戦いはこれからだ的な風になってしまいましたが、
『いつか』がありそうな含みのある終わり方は
いつだって我々の心に期待を抱かせる楔のようなものですね。
連載でなければ創作同人誌と言う手もありますし、
恋焦がれるような思いで『いつか』を待ち望むのみです。
何気にカバー下が一昔前の特撮っぽい雰囲気を漂わせてるのもまた熱いですね。


『袋』と同化した人間たちの所有する『マスク』に込められた想い。
結局袋人間たちは一体何者であり、その根源は何なのかと謎も残ったままですが、
一つ明らかになったことが袋人間たちの行動目的。

同化した相手の願いを叶えることとあるけれど、
これまた難しい行動原理ですね。
単純に願いを叶えるだけであれば同化する必要もないし、
一度望んでしまったそれを変えることもできず、
成就しても頓挫しても先に待ち受けているのは死・・・

何かを望むのであれば、自らの手でどうにかすることこそが一番ってことか。
こういう立場になったとき、自分だったら一体何を願うんだろう。
いざ叶ったところで死んでしまうって残酷極まりないです。
そう考えると全てが終わることなく完結したのもありなのかもしれませんね。
本当に最後の時を迎えることは一つの別れを迎えることと同じことですし。
しかし氏家さんの自己犠牲精神には泣けてきます。
袋人間による強制的な願いの執行を異常であると感じ、
その全てを殲滅することこそが願いだとは・・・
ヘルメット・ドライヴァーズ・ハイとかはナンバーワンであることと、
実に本能に忠実だっただけになおのこと。


運命に翻弄される三人のヒロインと一人の主人公。
敵か味方かわからない存在だったデス・メタル・ドールも
本名もわからなかったけど、第三のヒロインの素質十分だったし、
『袋』と同化してそのまま退場かと思われた天野さんは再登場するし、

氏家さんのワンマンヒロインって状態ではなくなってますね。
あとの二人についてももっと掘り下げどころはあっただけに
魅力が引き出されきっていなかったところが残念でなりません。
特に天野さんは最初から明らかにワッタに気があったし、
その願いも根本は氏家さんと同じであることもあって、
何気に三角関係が確立していただけあってなおのこと・・・ね。
本作のメインヒロインはあくまでも氏家さんですが、
あえて天野さんを推しますよ。
袋人間と同化してしまったときにしてもあえて身を引いてしまう行動にせよ、
中途半端に身に付いてしまった能力故に悩む姿にせよ、
展開次第ではメインに据えてもおかしくない素質を多分に含んでますからね。

当の願い自体は明言されていないけれどもワッタのことを意識しているのは間違いないし。
あれですね、某さっちんとか好きなら確実にハマれるかも。
願いの成就=死であるとは言っても、『半面』である天野さんの場合、
実際に成就された場合にどうなるかと考えさせられる含みもあるところが大きいです。

デス・メタル・ドールの方もフラグは多分にあったし、
願いも色々と気になるところではあったけれども、
彼女の言う『あいつ』とは一体何者だったんでしょうかね。

袋人間に関する黒幕なのかそれとも・・・
いずれにせよ、命を賭してまで叶えたい願いがあることはある意味美しいです。
無味乾燥に生きてた身には人生観そのものを考えてしまうくらいに。
それでもやはり氏家さんは強かった。
明確に目的を持っている者、非現実から現実に帰れる拠り所を持っている者、
両方有しているのは隙がありません。

こんな熱いバトル展開にして、ボーイミーツガールな終わり方って素敵じゃないですか。
兎にも角にもバトル的にも恋愛要素的にも非常に熱く、
まさに帯書き通りExplosion1200%な一作でした。