勤労少女と猫又の送るスローライフ 『のりタマ』 1巻

のりタマ 1 (電撃コミックス)

のりタマ 1 (電撃コミックス)

昔から猫神信仰が根強く残っており、多数の猫が暮らしている猫待坂に居を構える
築百年を誇る見紛うことなきボロアパート猫待荘。
そんなアパートで17歳にしてフリーター生活を過ごしている
勤労少女のりえの元に一匹の猫又が舞い込んできて・・・

猫又が出てくる作品としてはつい先日飼い猫が人間の姿になれるようになり、
姉として奮闘するネコあね。が記憶に新しいところではありますが、
それとはまた全く異なった方向性で猫らしさ全開。
完全にスローライフを地でいっており、
こんな生活一度送ってみたいとか思ってしまいます。
雰囲気的にはNieA_7に近いものがあるかなーと感じつつ、
宇宙人を猫にするとこんな風にのんびりした雰囲気になるのかーと。
食事に関するネタになってくるとのんびりした空気に
実生活でもありえそうなシュールさが上乗せされてたまらない気分になります。
ペヤングとかカップ焼きそばの湯切りに失敗して流しにぶちまけてしまって、
そこにソースをかけて混ぜて食べさせようとするとか
同じ失敗をしたときについついやりそうになってしまいそうであり、
同時にそれをやってしまったら色んなものが失われるような葛藤に見舞われることとかありますし。


いろいろわけありな境遇でもこんな毎日なら楽しく過ごせる?
17歳で学校に行っているわけでもなく、
一人暮らしな上に日雇い労働で生計を立ててる時点で
普通に考えられないくらい凄まじい状態なはずなんですが、
それでも前向きに生きるのりえの性格と
タマのいかにも猫らしい世間のしがらみなど知ったことのないのんびりさとで
境遇による悲壮感など微塵もなく、漂うのはひたすらにまったり感。

所々にスローライフを匂わせる描写が散りばめられていて、
これが更にまったり感を強めています。
ついつい緩衝材を潰すのに夢中になってしまったり、
自分の手が届かないところを孫の手で代用してみたり。

猫待荘そのものもさすが築百年なだけあって昭和のレトロな雰囲気抜群ですからね。
日本人なら掻き立てられずにはいられないノスタルジーにただただ浸るばかりです。


百年の歴史は伊達ではなく、思い出も多ければ謎も多い。
今から百年前と言うと丁度明治と大正の境目頃ですから、
存在そのものが歴史を物語ってます。
どうやら最初は何かの研究施設に使われていたようですが、
このあたりを巡るエピソードが今後展開されていきそうですね。
空き部屋のはずの部屋に並んでいた何かの機械ともカプセルとも取れるモノや、
管理人のヤコさん自身にも謎が見え隠れしていますし。
そもそもヤコさんは本当に人間なのかが疑問です。
何か猫耳とか出てきてますし!

実はヤコさんもまた猫又だったりするのでしょうか。
憑かれて不老になったとか、当時いた猫が記憶をそのまま引き継いで猫又となり、
飼い主の姿を取ったとかって説とかもなきにしにもあらずだけど、
やっぱり普通に猫又だけど人間社会に馴染んで生きてきたのかな。