皆泣いて笑って迎えた卒業式 『けいおん!』 4巻

けいおん! (4) (まんがタイムKRコミックス)

けいおん! (4) (まんがタイムKRコミックス)

思えば1巻が出たのが2年前の4月末。
それから1年後にはアニメ版が開始され、
今原作とアニメ2期が同時に終わりを迎えようとしています。
1巻当時は確かに面白いとは思いながらもアニメ化なんて夢にも思わなかったものですが、
気が付いてみれば主題歌のオリコンランキング入り等、
きらら作品史上一番の大ヒット作となっていた本作もついに完結。
3年目の夏休み明けから卒業まで一気に駆け抜けた青春の軌跡がここにあります。
ゆる系として、部活動ものとして、注目が集まり難い4コマ作品業界に遺したものは大きいです。
以後このような方向性の作品がかなり増えてきたりするのではないでしょうか。
全体的にアニメ版でも出てきたエピソードが大半を占めますが、
本誌掲載当時話題となった律っちゃん彼氏疑惑や

平沢家両親登場などこちらでなくては見られないエピソードもあるため、
互いに互いを補完しあって楽しむことができますね。

あと地味に大きな変化だと思ったのが中扉を開けたところにある登場人物紹介。
1巻のときは軽音部4人組に憂、和、さわちゃんと含めた7人でした。
それが2巻と3巻であずにゃんが加わり8人に。
そして今回、最後の最後で純ちゃんが9人目として食い込んできています。
アニメ版と併せてここに至るまでの経緯を見ていると実に感慨深い。
ただ、ここの人物紹介、さわちゃん一人だけ自分の世界に入りすぎです。
尤も、さわちゃんはここに限らず本編でもキャラがぶれてませんけど。
生徒より自分の食欲優先で考えてしまうとか本当に現金な御仁ですよ。
嗚呼、こうしてツッコむのも最後なのかぁ・・・


部活動のみならず普通の学校生活も見ていて懐かしくなることばかり。
学園祭終了後はどちらかと言うと受験に向けての話が中心となり、
元々まともに活動していることが少なかった音楽活動が更に比率を減らすものの、
高校三年の秋なんて言ったら既に推薦枠では本番であり、
早ければ年内には合格が決まっていたりしますからね。
自然と受験寄りになってしまうと言うもの。
そういう意味ではすごくリアルなんだよなぁ。
そんな中でも送るのんびりライフが受験特有の緊張感を和らげており。
ここに来て定番の組み合わせではない初見のカップリングエピソードが多く出てきて
思い入れと妄想を深めてくれています。
アニメでも実際に出てきたムギ&あずの妙にズレた感覚の漫才みたいな関係もあれば、
唯&憂&和の幼馴染トリオの姉妹のような関係もあり。
家で素になって和のことをちゃん付けで呼ぶ憂は何だか新鮮でした。
他にも描き下ろしのカラーページでは全員の髪型ネタで
律っちゃんをどつくあずにゃんとか、髪型をいじられまくる律っちゃんとか。

・・・って、あれ?カラーページって何気に律っちゃん大勝利?
本編でも彼氏疑惑の回とかありましたからね。
このくだりもちゃんとオチが付くことになるけど、律っちゃん恐ろしい子っ!
そしてある意味集大成となる学園祭ライブ。

アニメ版でも一期の最終回でアンコールで盛り上がりましたし、
二期でも20話で盛大に盛り上がったのは記憶に新しいところ。
三年目にしてようやく全力やり切り、完全燃焼した感がいいなぁ。
嗚呼やっぱり学生時代に徹底的に打ち込めるものを見つけておけばよかった。


卒業するのは悲しいけれど、今生の別れではない、新たな始まりなんだ。
何年も過ごした場所を離れることになる感慨深さで泣きました。
春から始まる新生活に胸を高鳴らせて笑顔でいつもの帰り道を往き、またねと別れました。
実際に生活していた間にどんなことがあったかは人それぞれではあるけれど、
最後の節目である卒業式ってものはやはり特別ですね。
勿論最終回単体でも十分すぎるほど心にくるものがありますが、
この卒業式を迎える最終回、本巻や以前の巻を読み返すと、
いくつも細かな仕掛けが施されていることに気付き感慨深さが倍増します。
例えばあずにゃんの心情の変化。
二学期の始まりと共に学園祭ライブに向けて
全力でやる気満々の活力にあふれていたところに始まり、
学園祭終わってもう部室に来ないのではと焦燥感に駆られ、
受験が近付くにつれて寂しいのに寂しくないと強がり、
確実に卒業していなくなってしまうんだって実感が
少しずつ色濃くなってゆく様子が非常に切ないです。
そして卒業式当日にとうとう溢れ出してしまう想い。

切ない・・・あまりに切なすぎて刹那五月雨撃ちで切なさ乱れ撃ちで切なさ炸裂です。
それをなだめて高校生活最後のシークレットライブは4人の成長の証であり、
先輩としての最高の置き土産ですよ。

在校生面子もさっそく新生軽音部として胎動し始めてますし、
これから先の軽音部はどんな風になっていくんでしょうね。
ここでのやり取りもフラグ回収がさりげなく潜んでいたり。
純が言っていた『約束』とは3巻ラストで純自身が口にしていることであり、
作中の時系列で言うと実に半年越しの約束を果たしていることになります。

そう考えるとすごく義理堅い性格してますね。
ぅーむ、親友っていいなぁ。
更には早速新部長として確保に走ったときの行動、台詞、リアクション、
これらは紛れもなくあずにゃんが初登場したときに律っちゃんに確保されたときの光景そのまま。

歴史は繰り返す。
きっと新生軽音部もまた新メンバーを加えて素敵な部になってゆくんでしょうね。
新生軽音部に限らず、元祖軽音部4人組も同じ大学で
今後どのような大学生活とライブ活動を送ることになるのかな。
いずれにせよ希望に満ちた船出となることには間違いないでしょうね。

良き思い出と大好きをありがとうございました。