血塗られた愛が引き起こす奇跡 『唐傘の才媛』 2巻

唐傘の才媛 2 (電撃コミックス)

唐傘の才媛 2 (電撃コミックス)

一度は地震によって倒壊したものの、
新たに契約を為したことにより真の姿で復活した細縁亭。
しかし、連帯保証人となった六助は代償として宿から出られなくなってしまい・・・
一週間余り前に出たばかりの断裁分離のクライムエッジの記憶も新しい中、
もう一つの連載作であった本作も完結編として登場です。
季刊誌だった黒マ王連載だったこともあって期間が開きましたが、
そのインパクトと異常なキャラたちが繰り広げる騒動は変わらずでした。
開幕から目玉を抉り出しているけれど、その対象がマグロだったりして、
さすがに前回と比べると表現上のエグさは薄れてはいるものの、
逆にストーリー性が増しているので差し引きゼロです。
まぁきっちりと血塗られたシーンはありますけどね。
女共はイカれた連中ばっかり、黒一点の六助も最低レベルの人間と、
癖の強すぎるキャラが多い中、乙女さんの時折見せる笑顔と
全てに振り回されて涙目で慌てふためく九重は癒しでした。
もう中扉の九重三昧がひたすらに愛玩的な意味で可愛くてですね。

成程、これは思わずいじめたくなってしまうのがわかる。
尻を撫で回して、そのまま・・・

ヤンデレ属性だからこそのキャラ性云々ってのはさておき、
乙女さんも趣味は危険すぎるけど、それさえ除けば一級品の可愛さですし。

紅さんの艶めかしさも捨て難いですけどね。

何だ、心根を覗かないであくまで客として行くのであればいい宿じゃないか。


宿から出ることができなくなったものの、
このまま地に根を張って住み着くようなことなどするわけがありません。
更には六助が研究していた成果が認められることとなり、
迎えがやって来てしまったのだからなおのこと。
世に功績を残す偉人には変人が多いとか言うけれど、
六助の場合は普通に最低な部類の人間です。
土台このような話の主人公としてはあるまじき行動ばかりで、
宿から外に出るために人柱を捧げそうになってしまうまでに・・・
最後の最後で思い留まったのはいいとしても、経緯が経緯ですからね。
ある意味一番人間らしいのは確かだし、本作ならではの主人公像です。

同時に明らかになる紅さんの魔女としての能力の根源や、
マリーさんのオーナーとしての真価、そして宿の本質。
まさかのバトル展開な終盤にはびっくりです。
と言うかキレたマリーさん怖い。
何とか色々と丸く収まって迎えたラストもその大団円ぶりが逆に怖いです。
本編には出てきていないけれど、おまけページで明らかになっている
六助が終始左前の死装束合わせで浴衣を着ていた秘密も、
最後の最後でゾっとさせる終わらせ方であり、
そのサプライズに本当にびっくりだよ。


その人を(に)、殺し(殺され)ても愛することができますか?
ある意味本作を象徴付ける存在であり、最もイカれた存在だった乙女さん。
紅さんみたいに魔女でもない、九重みたいに猫又でもない普通の人間のはずなのに、
全てにおいて人間の枠を超越しすぎです。
元々好きになった相手を自前のメスで解体せずにはいられないと言う
異常性癖の持ち主で、文字通りのヤンデレキャラではあったけれど、
愛だけでどうにかできるようなものじゃありません。
裏表紙も確かにハートマークが飛び交ってることは間違いない。
しかしそれ以上に禍々しいオーラが漂ってます。
さすがに前回のように放尿シーンとかはなかったにしても、
紅さんと一緒に寝る地味に百合属性に目覚めかけている節もあれば、
のっけからマグロではあるけれどアレな目で解体していたりと
あらゆる行動のインパクトは十二分なまでに発揮しています。

極めつけは人柱の生贄として食べられてしまったかと思いきや、
相手の腹をご自慢のメスで掻っ捌いて自力脱出。

愛の奇跡と言うにはあまりにも無敵すぎる・・・
絶対このまま断裁分離〜の方に出てきても違和感ありませんて。
自身が殺人者な上に殺人遺品どころかめっちゃ現役のメスだって持ってるし、
このメスだったら祝の髪の毛も切れそうだし。
とは言ってもその一途な思いは紛れもなく本物。

男として生まれた以上、一度は殺されてもいいほどに愛されたいものです。