悪戯するのもされるのも、全て愛があればこそ 『鬼灯さん家のアネキ』 1巻

血の繋がっていない間柄である鬼灯家の姉弟
弟・吾郎は今日も姉・ハルにあの手この手でいじられてしまうのでした。

姉ものであり、同時にホームコメディでもある本作。
現実に姉がいない者であれば、こんな姉がほしかったと。
現実に姉がいる身であれば、こんなんありえねぇ!と思いつつも
こんな姉だったらよかったと。
それぞれが思い描いている姉属性のヴィジョンが変わるかもしれません。
少なくとも自分は変わりました。
自分自身、年子で一つ違いの姉がいる身なので特にそう感じます。
当の姉は既に結婚して実家を出ているために同居はしていませんが、
同居していた頃は基本仲が悪くてほとんど口も聞いてなかったですし。
最近はそうでもないけど、当時はもっと優しい姉だったらよかったとか、
こんなんだったら姉なんかいらないとか思ったりしたものです。
悪戯と言うにはかなり酷いことをやっているようにも見えるけれど、
本当に仲がいい姉弟愛があるからこそなので、
何故か見ていて微笑ましく、そして羨ましくなってくるんですよ。
実際、姉弟って更正の場合、弟は姉にいじめられる立場なんです。
ハルにいじられる吾郎って関係がファンタジーながらも現実に近いものを感じるから、
より一層理想の姉像として見てしまうと言う・・・
兎にも角にも姉貴は可愛い、この一言に尽きます。


好きだから弄る姉、好きだから弄られる弟。
傍目から見るといじめに見えてしまうような悪戯も多々あるのだけれど、
どっちも好きだからこそ成立してる絶妙な関係なんです。
吾郎の露骨なシスコン&ドMっぷりは誰の目に見ても明白。
携帯の待ち受け画像は姉の写真、色々と妄想しては鼻血吹き。
一応便宜上は姉弟だからアネキと呼んではいても、
絶対それ以上を望んでますねこれは。
非血縁だから法律上結婚も可能ですし。
一方のハルはただ自分が楽しいから弄っているのかと思うとそうでもない。
こちらはなかなか本心を明らかにしない気まぐれなキャラをしているものの、
時折見せる実は吾郎のことを本当に大切に思っている本心に思わずグっときます。

自分からけしかけたのではなくて、
自分を助けようとして不良に向かっていった吾郎を助けたり、
さすがにやりすぎたと思えばちゃんと謝るし、
吾郎が他の女子と一緒にいるのを目撃してしまったら
気になって思わず後をつけてしまったり。
それでいて嫉妬もするし、所々で弟思いなところを見せてくれるんですよ。
果たしてそれは姉としての思いなのか、それとも・・・
そんなハルの悪戯は色々と種類はあるのですが、
やっぱりぇちぃ方面のことに関するものが目を引きますね。
何しろ中扉を開いた瞬間、カラーで『子作りする?』ですから。

見た瞬間脳裏にこ・づ・く・り・しまっしょと浮かんだり浮かばなかったり。
他にも電話口でぇちぃヴォイスを聞かせて悶々とさせてくれたりも。

お約束でマッサージに対する反応だったりするところがまたニクいです。
うん、やっぱ仲いいよ・・・よすぎるよ・・・
本作に出てくる悪戯シチュエーションの数々、
実際に姉がいる我が身には当然のように何一つ訪れたことはありませんでした・・・


あくまで話の中心はハルと吾郎の姉弟ですが、
周りの人物も負けず劣らず個性豊かです。
長身イケメンでボーイッシュな格好だから吾郎にハルの彼氏だと勘違いされて、
一方的に嫌われてることにショックを受けている
ちょっと不器用な普通の女の子な京ちゃんは見た目とのギャップが可愛いし。

自分の家庭事情に不満を持っていて
吾郎と秘密の密会をすることになる水野さんも
将来的に恋愛感情を抱くかもしれないという意味では非常に気になります。

しかし他の誰よりも強烈すぎる個性を放っていたのが美咲さん。
最初の頃は吾郎のことが格好いいと、好きになってしまったと、
そこまではまだ普通のハルの一友達キャラにすぎなかったはずが・・・
あっという間にSM好きなその異常な性癖を露にして、
変態ロードをひた走るようになってしまっていました。

媚薬を調合して自分で飲んでしまい、我慢できなくなって
吾郎をトイレまで追いかけた挙句にに襲い掛かろうとしたせいで
逆に吾郎からはトラウマを持たれるようになってしまうし、
事あるごとに一服盛ってあわよくば襲ってしまおうと画策してるし。
何しろハルが唯一ドン引きしてるくらいです。

・・・と言うか媚薬に我慢しきれずにトイレに行って何をしたきた!?
まさか・・・自慰・・・
色々と酷いわぁ。


非血縁の事実が語る家庭事情。
今のところわかっている事実と言うのが血が繋がっていないことだけであって、
その経緯とかは一切不明なままなんですよね。
しかも吾郎と本当に血が繋がっている姉も登場してきたりするものの、
こっちの姉とは別居しているってのがまた複雑な事情を持ってそうです。
本当の姉である楓姉さんの口ぶりからすると、
今の状況そのものを良しとは思っていないみたいですし。

両親が離婚してそれぞれに付いていったのかなぁ・・・
吾郎が二人の姉に対して『姉貴』と『姉さん』とで呼び方を変えているのも
実は大きな意味を持っているのかもしれません。
鬼灯家もそうなんだけれど、水野さんの家庭事情も気になるんですよね。
過保護すぎる家族に対して窮屈感を感じているのも、
傍から聞いているだけでは窺い知ることができないほどに深い事情なのかもしれませんし。
基本は姉弟のある意味いちゃついているいじりいじられっぷりだけれども、
こっそりと裏に隠れるこれらの家庭事情が
これからの話の主幹として大きく影響してくることになりそうです。