特別ではないが格別だった日々 『んぐるわ会報』 4巻

んぐるわ会報 4 (ヤングガンガンコミックス)

んぐるわ会報 4 (ヤングガンガンコミックス)

最近は生徒会を題材にした作品もかなり多く、
しかして作品ごとにかなり毛色の異なった個性的な生徒たちも同比率。
現実的にはありえないものばかりが中心となっている中、
キャラ的にも活動的にも非常に現実に近く、
自分自身こういう活動に携わっていた経験からも感情移入できた本作でしたが、
2年目の卒業シーズンを迎えたことによって完結となりました。

同じ生徒会活動やるにしてもこれくらい活発に活動してるところだったら
もっと色々と違った高校生活とか送れたのかなぁ。
大学ではかなり近いことをやってきてたけど、
年代的にもかなり違ってきてたのでこれまた似て非なるものでしたし。
でもメンバーが入れ替わってからインタビュー的なものはやりました。
録音じゃなくて文章にして生徒会誌に掲載される形式でしたけどね。
今思うととんでもなく中二病的な内容で
抹消したくなるくらい恥ずかしい代物になってた気がしますが・・・


入った直後はどうあれ、最後にはやってよかったと思えるその活動。
よく学級委員はクラスの雑用係であって、
生徒会はそれを広義にしたものに過ぎないって考えがありますが、
決して間違っていませんし、会長だからと言って何か権力があるわけでもありません。
むしろ人にとってはただ面倒なだけとも思えることでしょう。
それを楽しかったと言えることはすごいことです。
同時に、活動状況がそのまま校風を表しているようにも思えます。
主要の生徒会メンバーのみに限らず、一般生徒までもがどこか活き活きしてるんですよね。

傍から見ても通ってみたいと思えること。
そしてその中心にいてよかったと思えること。
きっと三年間通って楽しかったと胸を張って言えるいい学校だと思いますよ。
自分の行動を後悔しない生き方、そしてそういう所属でありたいですね。
最初のカラーページで語られている一言にある意味全てが集約されているとも言えます。

別に大きな変化があるような特別な生活よりも、
自分自身がそうであってよかったと思える格別な生活。
最期のときにそう言えるような人生を送ってゆきたいものです。


活動もさることながら、各々の思いってものもよく描かれてるんですよね。
自分のような人間が入るには分不相応すぎると躊躇っていたものが、
二年間の活動を通して生徒会に所属したことは間違いではなかったと
胸を張って言えるようになり、だからこそ終わりが近付いてくることを自覚して
思わず涙してしまう里見さんの思い。

自分の意思で加入した里見さんに対して強制的に入れられた松戸に対する会長の思いと、
最初から最後まで会長のことを一途に思い続けた松戸の思い。
本編とリンクしている番外編の回がこのあたりの心情を語っていて、
より一層本編が趣深いものになっているわけです。
そして一話目からずっとその思いを見てきているからこその最終回。
最後の最後で全校生徒たちの目の前でついに告白に踏み切った松戸の勇気。

結果はどうあれ、言えたその事実は非常に大きいです。
例え玉砕しようとも、言えずに後悔するくらいなら言ってしまった方が遥かにマシですからね。
事実、少なからずいいなと思っていた相手がいても
何事もなく終了・卒業してしまった自分だからこそなおのことそう感じるわけでして。
やっぱ物事に対して積極的であるべきなんですね。
消極的だと色々と損しますよ。
それにしても終始松戸の扱いの酷さはひたすらに不憫でした。


3年生たちが卒業し、後輩たちも加わった新たな年度で再スタートを切る。
そんな理想的な結末・・・と思わせておいて、
オチに非常に意味深な一言で締めくくります。

『あら里見早いじゃない』
ォーケー、よく考えてみようか。
既に三年生だった面子は卒業しているわけであって、
ともすれば松戸以外に里見さんにタメ口聞く相手はいないはずなんです。
しかし生徒会室の前で松戸と会っているのだからそれもありえない。
(そもそも『あら』なんて女言葉で喋る松戸は想像できませんが)
まさか・・・
会長・・・
ダブリを通り越してトリプったのか!?そうなのか!?
確かに最終回を見返してみると、それらしきフラグは立ってたりしますし。
常磐さんや成子さんが卒業証書を持っているにも関わらず、
会長だけはそんな描写は一切ありませんし、
完全下校の放送に阻まれた言葉。
『それに言い忘れていたけど私―――』
前年に引き続きまたやっちまったことを言おうとしてるんじゃなかろうかとね。
まぁ本当に卒業していてOGとして来ている可能性も否定はできませんが、
新入生入って間もない時期にそれはありえないから・・・
最後の最後でえらいオチを残してくれたもんですよ。