ニートでも社会復帰は可能なんだ! 『空の下屋根の中』 2巻

空の下屋根の中 (2) (まんがタイムKRコミックス)

空の下屋根の中 (2) (まんがタイムKRコミックス)

高校卒業後に自分がやりたいことを見出せず、
なし崩し的にニートとなってしまっていた主人公の香奈絵。

何とかバイトの働き手を見つけてフリーターとなったが・・・
就職難の現状は相変わらず解消されず、
働きたくても働けない人も多い昨今。
一方で社会的に深刻な問題として取り沙汰されるニートを扱ったストーリーによって、
かなり大きな反響を呼んだ本作ですが、
今回はフリーターとニートとを経て最終的な結論に至るまでの完結編。
やはりキャラクターとしての特徴付けとかではなく、
完全に作品コンセプトそのものの題材としてニートを取り上げているだけあって、
何もかもがリアルで生々しく、一切の妥協をしていないんですよね。
随所に思わず同意してしまいそうであり、
けれども認めたら負けであるような考えや台詞も多く、
終始いろんな意味で心が痛くなってきます。
独白にしても、会話にしても、それぞれが特有の『間』を持っているので、
その微妙な『間』が更に効果を高めてるんですよね。
一言で言ってしまえば駄目人間な香奈絵が自分の置かれている状況に危機感を感じ、
自分なりのペースではあるけれども就職活動を行って・・・
と言う経緯を見てきているからこその結末には涙しました。

ニートだからと開き直ったり悔やんだりしてもいい。
承知した上で脱却しようと行動を起こせば、きっと活路は開かれるんです。


いつ唐突としてやって来るかもわからない無職と言う状況。
香奈絵は確かにニートでしたが、働いているからと言っても
強制的に無職にならざるを得ないって場合もないとは限らないんですよね。
会社が倒産してしまったり、人件費削減のためにリストラ対象となってしまったり・・・
作中でも倒産によって再就職活動を余儀なくされることとなった木津君とか出てきますが、
仮に自分がそういう立場になった場合、
木津君のようにすぐさま就職活動に取り掛かって職を手にすることができるのか、
それとも香奈絵のようにだらだらと過ごすようになってしまうのか。
10年ほど前のかなり厳しい時期ではあった中、
15〜6社くらい受けてようやく内定を手にしたものですし、
中途にしてもボーダーラインを超えるくらいの歳になった今、
再度就職活動を行った場合に果たして内定を手にすることができるのか。
どちらかと言うと香奈絵のようになりそうな身としては
決して他人事の話ではなかったりするんですよね。

本当に痛いところをとことん抉るように突いてくるところばかりです。


香奈絵がニート、フリーター、ハローワーク通いと経験して得たものとは・・・
せっかくフリーターになったのはいいものの、
安定した生活基盤を得るのであれば必然と就職への道が立ちはだかり、
バイトと就職活動が両立できずに再び無職に戻ることにどれだけ覚悟があったのか。

正直なところ、覚悟も何もないただの甘えであったと思います。
現にバイトをやめた直後は1巻当初の焼き直しとも見えるような
自堕落状態へと逆戻りすることへの落胆。

通して感じたことだけど、香奈絵は何事をも深刻に考えすぎるタイプかなと。
基本、香奈絵の独白による進行が多いこともありますし、
危機感を感じるのはいいとしても、全体的にネガティブ寄りだし。

やっぱあれなのかな・・・
本作を読んでいて、こんなにも心が痛くなるのは
自分自身が香奈絵に近いタイプの人間であるが故に
重ね合わせて見てしまうからなのかな。
でも最終的に香奈絵はちゃんと自分なりの結論を導き出していますね。
生きるということは勉強すること。
仕事と言っても働くのは同じ人間、そこまで深刻に考えるものではないこと。

これから長い社会人生活を送る中、何度も障害にぶつかることもあるでしょう。
しかし、就職するまでの間に得た経験と心構えさえ忘れなければ、
きっと乗り越えていけるでしょう。


前回は本編の合間合間に入っていたとある男の話もありましたが、
今回は巻末一編で十分すぎるほどに痛い人間っぷりを発揮しています。
本編の香奈絵をいい例とするのであれば、こちらは明らかに悪い例。
ただ、この悪い例に該当する人がニートの大半を占めるのが現状だと思います。
そんな人でも本作を読めば少しは気持ちが変わるのかもしれません。
この番外編の最後のページは、どことなくそれを示唆しているようにも見えますし。
現在、日本にニートは60万人超いると言われています。
本作を読んで例え60万分の1の人数であっても心に届くのであれば幸いです。
香奈絵がそうであったように、頑張ればきっと道は開けるものなのです。
(香奈絵の場合、周りの人間に恵まれていたこともありますが)
ニートでも、社会復帰は十分に可能である。
最低限、これだけは間違いないと断言します。
そしてそういう気持ちにさせてくれます。