それでも町は廻っている 7巻

それでも町は廻っている 7 (ヤングキングコミックス)

それでも町は廻っている 7 (ヤングキングコミックス)

宇宙人が存在しても、実生活への関わり合いは一切なく。


以前に短編作品は世にも奇妙な物語でドラマ化されたことのある石黒作品ですが、
満を持して(?)アニメ化決定にまで至った本作。
作風とか話の内容とかいつかはされてもおかしくないとは思っていたものの、
本当にされるとなると期待と不安が入り混じりますね。
特に本作のような言葉では表せないような特有の世界観を持ってる作品ならばなおのこと。
何となくシャフトあたりと相性が良さそうな気はするけどはてさて。
今回も身近に不思議なことが起こっていながらも
一般市民の方々にそんなものは関係ないと言わんばかりの話の数々。
日常系のはずなんだけど、何処かが平凡な日常とは違う雰囲気、
でもやっぱり裏返してみてみると何も無い日々。
理屈で考えるんじゃなくて何となくで感じ取るもの。
本当に何気ないリアルな日常ってのはこんな感じなのかも。


あらゆる点で平凡な一般的会話なのだけれども、
時折普段では考えないような発想が出てくるから意表を突かれます。
わかりやすい例で言えば一番最初のエピソード。
2ページに渡って何かの説明をしていて、
一体何のゲームについてなんだろうと思っていたら野球だったことの驚き。

言われてみれば確かにそうだとわかるものの、
野球は野球としての視点でしか見られてない固い思考だと
案外気が付かないものです。
そして固定観念に捉われて絶対こういう発想ができなかったり。
こういう例えもまた本作だからこそ味があるもの。
何事もものは考えようなんでしょうね。
本にしてもゲームにしてもどう捉えるか。

世間的には『毒』としてしか見られないのが悲しいところです。
むしろそういう考え方こそが『毒』なんだと思いますが。
そんな会話のみならず、何気ない行動もことごとく庶民の心をくすぐってきます。
子供の個室が欲しいと狭い住宅でありがちな論争が起こってみたり、
全く飾らない、かと言って漫画的でもない食事シーンが出てきたり。
漫画における朝食シーンと言えばパンをくわえて駆け出すとか、
悪く言ってしまえばベタなシチュエーションを想像してしまう中、
平然と目玉焼きをご飯に乗せて醤油をたらして食べるくらい庶民的。

そうそう、生卵の卵かけご飯もいいけど、
目玉焼き丼ってのは熱が通ってるから少し固まり気味の半熟な黄身が
これまたいい具合にご飯と絡んで・・・
うん、今度朝食に目玉焼きが出てきたらご飯に乗せて食べよう。


こういう何気ない日常ものだからこそ、
いつ訪れるともわからない終わりの時をふと考えてしまうもの。
不変な日常の象徴が歩鳥とするならば、
紺先輩は変わりゆく日常の象徴とも言えますね。

先輩である立場からしても進路の話題とかごく一般的ながらも
人生の分岐点と言う意味ではこの上ない変化ですし。
何だろう、祭りのときのエピソードと言い、進路と弁当のエピソードと言い、
今回紺先輩が出てくる回が全般的に重みが他と違います。
とは言ってもタケルとカードゲームの回も地味にくるものがありますよ。
カードゲームのレアカードを純粋に狙うか金に任せて買うかで
子供と大人の差ってものがあまりにも顕著に出ているのはどう捉えるべきか。
大人になるってこういうことなんだろうけど、
同じゲームを楽しむにしても何かが根本的に違うなぁ・・・
それはそうと普段のラフな格好ではない先輩の浴衣姿は非常に新鮮なのでした。