高杉さん家のおべんとう 1巻

高杉さん家のおべんとう 1

高杉さん家のおべんとう 1

弁当を通じて結ばれる家族の絆。


大学で地理学の博士号は取得したものの、
30過ぎても就職できずにいた主人公の温巳。
そんな彼の元に、ある日姉のように慕っていた叔母の遺言で
12歳の娘を後見人として引き取ることになり・・・

こういう歳の差ものってありそうでないシチュエーションではありますが、
なかなかに現実的な描写が人間的です。
そりゃいくら親類でも年齢が倍以上離れた、
しかも初対面の相手といきなり二人暮しすることになった場合、
最初から親しく接することなんてできませんよ。
片や自分の身の振りすらおぼつかない身、片や母親を亡くして間もない身。
世間の目からは下手すると犯罪じみて見られる中、
ぎこちない関係が弁当を通じて次第に打ち解けていく様子に
家族以上に家族らしい何かを感じます。


家族の絆を繋ぐもの、それは弁当。
今でこそ昼食はコンビニ食で済ませている自分ですが、
学生の頃は高校〜大学まで弁当を持参してた頃を思い出して
たまには弁当ってのもいいなーなんて思ってきますよ。
当時はそれこそ当たり前のように持って行って食べてたけど、
弁当一つ取っても中に込められた思いがどれだけ詰まっているのか。
普段当たり前と思っていることほど当たり前ではない、
そんな風にも思えてきたりして改めて家族って大事だなと。

温巳のところにやって来た翌日に久留里がはじめて作ってくれたきんぴらだけの弁当。
料理こそ一種類だけとは言えども、そこに至るまでなど考えるともうそれだけで泣けてきます。
きんぴらだけだったレパートリーも次第に数を増してきてますし、
それは二人が共に歩んで思い出を作ってきた証なんですね。
これからもきっと思い出と一緒に料理のレパートリーも増えていくことでしょう。
作中に出てくる下味が味噌ベースのハンバーグは食べてみたいなぁ。


次第に変わりゆく関係を象徴する存在とも言える久留里。
元々人付き合いのいい性格ではない上に
温巳のところに来ることになったきっかけがきっかけなものですから、
最初は明らかに距離を置いてる状態だったのが、
段々と後見人と被保護者の立場を超えた感情を抱くようになる様は
世の中の人間模様そのものを示しているようでもあります。

その性格が災いして学校ではいじめに遭っているため、
普段友達と喋ることもないために口下手なんでしょうね。
喋りも言葉の途切れる箇所が何か変わっていたりするのですが、
ぎこちない口調なりに歩み寄ろうとしているのが見て取れるので非常にいじらしいです。
とは言っても久留里が真価を発揮するのはやはり買い物時。
基本コンビニは高いからありえない、チラシでスーパーの特売は欠かさずチェックし、

食材コーナーにレシピ表があれば片っ端からゲット。
当然買い物袋は持参のエコバッグと、見事なまでの主婦っぷり。
この時見せる普段とは全く異なる活き活きした様子とか、
もふもふした笑顔には見事なまでにしてやられました。

普段からこの笑顔でいられるようになればいいのにね。