テルマエ・ロマエ 1巻

テルマエ・ロマエ I (BEAM COMIX)

テルマエ・ロマエ I (BEAM COMIX)

古代ローマ現代日本に見る入浴文化交流。


時は西暦128年。
古代ローマ帝国にて設計技師を営んでいた男ルシウスは悩んでいた。
ハドリアヌス皇帝のセンスに見合う公衆浴場のデザインについていい案はないかと。
そんな彼が1900年近く未来の現代日本へ突然タイムスリップしてしまったことによる、
風呂限定の文化コメディの幕開けです。
と、改めて言葉にしてみるととんでもない設定だよなぁ。
昔の人が現代にタイムスリップするってネタはそれこそ原始人が〜って設定もあるし、
別段珍しいものでもなかったりするのですが、
話の題材を風呂場一本に絞ってるので何から何まで制限かかりまくりです。
の割には何故こんなにも話の幅が広がるのか!?
一言で風呂と言っても普段気にしないだけでこんなにもバリエーション豊かだったんですね。
構図としてひたすらにシュールなものが連発してくれますし、

題材も題材だからただのアホ作品かと思いきや、
事実古代ローマの時代から公衆浴場と言う文化そのものは存在していたらしいこともあって、
ある意味すごくアカデミックと言えなくもないです。
各話の間には当時の入浴文化について語っているコラムもありますし。
当時から既にシャワーの原型らしきものまであったとか何気にすげぇよ古代ローマ
先人の言葉に『全ての道はローマに通ず』とありますが、
入浴文化についても例外ではなかったようです。
否、実はルシウスのような人間が実在して現代の文化を1900年前に持ち帰っていたのかも・・・
箱根小湧園ユネッサンとかおもひでぽろぽろにも出てきた熱海の大野屋にはローマ風呂ってのがあるし、
このあたりに宿泊してみればちょっと当時の気分を味わえたりするのかな。


話の主軸になっているのが風呂なもんですから、
当然のごとく半分くらいは入浴してるために裸だったりします。
が、ここで色気を期待するのは大いなる間違い。
(自分はホモだって言うなら別に否定はしませんが)
出てくる裸は美術作品の像みたいな顔立ちの青年とジジババばかりですので。

それにしても作中に出てくる日本人の人たちは実に気さくですね。
完全に一期一会なのに温泉宿とかついつい話し込んでしまうことはよくあることなので、
別に珍しい光景ってわけでもありませんが。
実際に自分も入浴してると気付かないけど、
こうして客観的に見てると風呂場の魔力ってのはすごいね。
風呂そのものも銭湯から始まり、猿も入る温泉に、家庭用風呂に、湯治場に。
もっと掘り下げていくとこの先岩盤浴とか砂風呂とかサウナあたりも出てくるのでしょうか。


入浴文化は通じるところはあってもやはり1900年前の人間なルシウス。
色んなところで現代人と感覚がずれてるところがありますね。
一々リアクションが愉快です。
浴衣の着方を盛大に間違えていたり、

風呂場で勧められたものを食べたり飲んだりした反応がグルメ漫画かよと言いたくなったり。

結果として設計技師としては成功しているけど、反面不幸な一面も。
家庭よりも仕事に比率が傾きすぎた結果、妻に逃げられてしまい・・・

そりゃ3年も一度も帰らずなら逃げられもするってもんですが。
離縁された原因が風呂ならば、きっと復縁のきっかけも風呂になると思うんだ。
ぁ、でもウォッシュレットのトイレは便宜上風呂に分類されるのでしょうか?
風呂場とトイレが一緒になってる3点ユニットがあるから問題ないのかな。