好敵手だから、容赦はしない 『ナナマル サンバツ』 5巻

例会2回戦で識とペアを組むことになった相手は、
かつて秋葉原のゲーセンで一触即発状態になった女装男だった。
そうとは知らず、セオリー無視の彼の行動に翻弄される一同だが・・・

知れば知るほど奥の深い、競技クイズ青春活劇の本作も5巻目となり、
益々混迷極まる例会は誰が勝っても負けてもおかしくない状況に。
ある意味正道と邪道の戦争とも言える混戦ぶりに加え、
クイズを通じた人間関係の複雑さも深まってきたことで、
知の格闘技らしいスポ根ノリも熱くなってきましたね。
それを物語るかのように表紙も、
文蔵のメンバーが描かれていた今までとはうって変わって、
御来屋と明良のライバル組になっていることからも、
如何に今回の内容が熱く大変なことになってるかが窺えます。

ゲーセンのゲームではない例会の場において実現した二度目の直接対決が、
どんな顛末を迎えることになるのか楽しみですね。
しかし出題時に問題文を読むイントネーション一つで解答を予測して、
誰よりも先んじて解答権を得なければならないというのは、
ギャンブルのような緊張感に溢れてますね。
0.1秒の中で相手の出題意図を読む必要があるってぇんですから、
そりゃ本気で取り組んでる名門校にもなれば、
現実にクイズ研究会なんてものが普通に存在してるわけだわ。
知識に反射神経もさることながら、
心理学にも通じてる必要があるとも言えますからね。


勝つのは正統派か、それとも・・・
とにかく全体に渡って今回目立っていたのが明良でして、
初登場の時点で識に一喝されたから、
クイズに興味を持って参加してきたのかと思ったらとんでもない。
勝敗もクイズのセオリーさえもガン無視した無茶苦茶ぶりで、
参加者たちのみならず読者までも巻き込んで翻弄してくれています。
前回ラストからして問題文を読んでもないのに早押しボタン押したりしてましたが、
何も考えてないどころか自分が面白ければそれでいいという考えに加え、
そのためには労力を惜しまず手段も選ばないという策士ぶりをもって、
真っ当にクイズをやろうとしてる一同全員を巻き込んで、
これでもかと暴れまくりだから余計にタチが悪い。
出題形式の虚を突いて妨害めいた手段で解答権を得たり、
突然女装してきて動揺を誘ったり、
勝ち抜け圏外の相手を失格にして蹴落としたりと、
誰が見てもこれはひどいと言わざるを得ません。

ルール的には問題ないとしても、それ以前のモラルに問題ありすぎ。
むしろ全てが問題。
ネトゲで言うならPKとかやってるようなものだし、
ベクトルは違うけどノーマナーって意味では、
アタック25の某コロンビアなあれと同類ですからね。
しかも窘められそうになったら中性的な成りを活かした泣き落とし。
見た目によらずいい根性してやがるよこいつ・・・
こういうキャラを許容できるか否かでばっさり評価が割れそうかも。
本気で打ち込む識とか御来屋の姿を見て更正したりは・・・しないか。


どんな状況でも容赦なく全力で立ち向かう、それが好敵手。
大半が明良によって引っ掻き回されてしまっているため、
真剣勝負とまではいかないにしても、
本気でぶつかり合う互いの気持ちにはどんな妨害も入り込む余地が無いのです。
実力を認めてライバル宣言、それに応えようとする関係や、
同じ場に立てば先輩後輩の垣根を越えて全力で倒すのみとする関係など、
しっかりと熱いところは熱いですね。

今回の例会は識と御来屋が出会った新入部員向けではないので、
これまで実力の知れなかった笹島や芦屋といった部長勢が参戦しているのも大きい。
面目躍如と言いますか、さすがにこのあたりは手堅く強いですね。
個人レベルでのライバル関係もあるけれども、
勝ち上がろうとすると明らかに自分より実力が上の面々とも、
対等に立ち向かわなければならない。
当たり前のことでも金星は十分に有り得るからドキドキなのですよ。
実際、クイズ王決定戦的な番組では名だたるベテラン勢を相手に、
高校生が勝利を挙げたりすることも珍しくありませんからね。
時代は常に流れ、新たな問題はそれこそ無限に増え続けるため、
常に知識を蓄え続ける貪欲さが無ければ勝利することはできない。
知れば知るほどテレビで見てるだけじゃわからない奥深さがあるなぁ。


と、火花散るライバルたちに場荒らしの妨害もあったりする中でも、
ネタ問が出てきたりするユーモア性も忘れてはなりません。

ぃゃ、ヌーブラってそんな恥ずかしい解答かなぁ?とは思いますがね。