伝える心、難しく・・・ 『いろは坂、上がってすぐ。』 2巻 & 『シスプラス』 3巻
いろは坂、上がってすぐ。(2) (ヤングガンガンコミックス)
- 作者: 勇人
- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
- 発売日: 2013/03/25
- メディア: コミック
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- 作者: 勇人
- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
- 発売日: 2013/03/25
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新たな出会いは新たな騒動の火種となり・・・
ハートウォーミングな人情コメディーに定評のある、
勇人氏の最新刊が二作同時発売となった今回。
いろは坂〜の方はシリアス色の強い若干重めのエピソードがあり、
シスプラスの方はひたすらに超絶シスコン兄貴の変態っぷりに加え、
パロ要素も含んだギャグシーンの比率が高かったりして、
基本的なノリは異なる両作ではありますが、
根本的なところでは共通していたり、
巻末描き下ろしのおまけ等でリンクしている部分があったりして、
今回ばかりは二作ともセットで考えるべきなのかなと思ってしまいました。
同じ世界観を共有していることもあるし、
相互スピンオフって感じが多分に漂ってますので。
形は違うけれど人と人の繋がりを感じて心温まる両作。
次は互いにどんな事件が巻き起こり、
どんな形で心に響かせてくれるかが楽しみです。
同じ異能力者は敵か味方か。
物の声が聞ける能力でもって過去の思い出との再会を手助けしたり、
忘れていた気持ちや隠していた心情に触れることで、
良心を掘り起こさせてくれるいろは坂〜ですが、
雫とはまた異なった「能力者」たちが現れて、
ただの一店舗内で展開される話から少し動き始めました。
常人とは異なるという点で共通意識を持たせて、
仲間へと引き込んでくる彼女たちが一体何者なのか。
一話完結のオムニバス形式や長い時間をかけて実るラブコメと違って、
多少の重めのエピソードを交えながら伏線と謎が張り巡らされてますね。
どうやら国家レベルの大権力が関係してそうな節があるのだけれど・・・
話の展開も最終的にはいい話に帰着するとは言え、
そこに至るまでが今までの作品からはありえないことになっているので、
色々と驚くところがあるかもしれません。
はなまる幼稚園の場合、ヤクザの組長も親バカのいい人だったのに、
本作では他人の良心につけ込んだ詐欺師が登場して、
今までになかった明確な悪人ってものが描かれてますからね・・・
その分、相手が犯罪者であっても決して自分を曲げずに、
真っ向勝負でぶつかる雫の馬鹿正直とも言える姿に、
なかなかに心打たれるところがあるので、
これはこれでありなのかなと。
恋愛フラグ、着実に成長中?
いろは坂〜の方がシリアス要素が強めになってきているのに対し、
変態要素混みのコメディとして平常運転なのがシスプラスの方。
常連さんの江田島平八の真似や姫苺のサウザーカー、
師匠直伝の「ぺかっ」などパロのお笑い要素も散見されますが、
何と言っても男装パティシエの瑞希さんが、
少しずつあの変態兄貴のことを好きになってきているラブコメ要素に尽きます。
兄貴にとっては単純に気持ちを伝える手段程度にしか考えてない上に、
男装時の姿を本当の男と信じてるとは言え、
キスシーンが飛び出してしまう超得展開。
しかもファーストキスときたもんだ。
夜布団で一人ぽつりとこぼすシーンは悶絶必至ですよ。
これだけでも十分すぎるほどなのに、
男装少女に対して男の娘キャラまで登場してしまったり、
何気に顔ぶれが段々と濃くなってきましたね。
詩穂は妹だからさておき、ヒロイン化してきた瑞希さんだけれども、
一方で最初のエピソード以外で出番が無くなってしまった常連さんは・・・
生きろ、マジで強く生きてくれ。
不憫だけどいつか報われると信じてるよ。
人情話としては姫苺の水泳特訓の回がかなりグッとくるものがありますね。
泳げないけれど親友のために身を投げ打って必死にもがいて助けに向かう。
これで泣くなって方が無理ってもんですよ。
両者を繋ぐ架け橋は、とある幼稚園に関係する人物たちにより紡がれる。
元々いろは坂〜の方で前回土田がゲストで登場したこともあるように、
はなまる幼稚園と同じ街、同じ世界観で描かれており、
今後も関連する人物が登場することになるのかと思っていたら、
今回は両作共にゲストが登場する回があったりするため、
この三作は切り離して考えるべきではないのかなと。
しかも互いに登場するキャラが異なっていたりすることもまた、
同時期にその頃別の場所では・・・って風にリンクするんですよね。
いろは坂〜では杏と草野先生が恋愛について、
シスプラスでは小梅とさつきが家族愛について、
それぞれ両作の内容にマッチした人選でその後が描かれているため、
自分の好きだったキャラが登場する方だけでもまずは読んでみるといいかも。
どちらも本編から少しだけ成長した様子も垣間見え、
前回の土田と山本先生のその後のように、
あのキャラはその後どうしたかって気になっていた人にはいいかもですね。
みんなそれなりに元気にしているようでよかった。
と、こちらは前作キャラを介した間接的な作品間の繋がりとなっている一方で、
巻末の描き下ろしではそれぞれのキャラが直接絡む内容となっており、
互いの作品のノリがクロスする様子は本編とはまた一味違う様子が窺えます。
雫と詩穂が同年代ってこともあって、
なかなかに気が合ったいい関係を築いているので、
今度はさつきも含めたJK三人組を見てみたいかも。