温泉旅館に秘密あり 『桃源郷へようこそ!』 1巻
- 作者: イダタツヒコ,水谷麻志
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2013/02/19
- メディア: コミック
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一見何の変哲も無い旅館は実は極東随一の魔術拠点で・・・
日頃の疲れを癒したい時、温泉旅行に行きたくなるときってありますよね。
本作はそんな旅館で働く少女たちの仲居奮闘記と思わせておいて、
魔法に人外にと大暴れするトラブル満載のドタバタアクションとなっています。
温泉と魔女と言う取り合わせはミスマッチのようでいて、
その妙な取り合わせの噛み合い方の絶妙さが、
一風変わったエンタメ性を醸し出してくれています。
古い日本家屋はどことなくホラー的なイメージがあるところも、
魔術の要素を演出するのに一役買ってますね。
非現実的要素が加わった現実とファンタジーの境目のような世界観は、
一体次にどんな展開が飛び出してくるのか、
どんな珍客が来訪するのかという楽しみと、
割と何でも有りなトンデモ展開のびっくり箱な驚きが共存していて、
毎回起こる騒動の顛末を新鮮な気分で味わえます。
見習いであるが故の成長譚も垣間見え、
加えて温泉宿らしさは忘れていないため、
どことなく旅情気分をも掻き立てられる一石三鳥ぶり。
騒動に巻き込まれるのはゴメンだけど、
是非とも泊まりに行ってみたくなる気分にさせられますよ。
研修にやって来た本当の目的、それは・・・
主人公からして魔女だったりするわけですが、
勿論こんな設定を持ってるからにはただの仲居修行に来たわけではありません。
目指すは世界征服、倒すべきはかつて悪名高き魔女だった女将さん。
濃い、この時点からして濃いですね。
某まどマギでもそうだったけども、
「魔法少女」と「魔女」って似てここまでイメージが違う言葉も珍しい。
キャラの性格的に、魔女をヤンキーとかに置き換えた場合の違和感の無さが凄まじいわ。
世界を救うとか大義名分はどこへやら、
野望に満ち溢れてるのがまた血気盛んな若さと、
大海の広さを知らない未熟さが混在していて、
一人前へと成長してゆく主人公としての適正はバッチリですよ。
仲間と出会い、共に歩み、己の未熟さを知り、
当初は触れるだけで噛み付いてきそうな刺々しさがあったりしたのも、
段々丸くなってく様子はどことなく微笑ましく思えてきます。
キサラと共に成長してゆくもう一人の主人公とも言えるアサギの存在もまた、
成長譚としての描写をより強いものとしています。
第一印象悪くて喧嘩状態ながらも共闘してからわかり合い、
時として拳を交わすことになろうとも、
いつしか欠かせないパートナーとなってゆく。
将来本当に世界征服に乗り出す場合、二人でやらかしそうな感じですね。
見た目によらず古武術使いの武道家だったりするわけだけれども、
ワケありなこの旅館で代々修行する習わしだったり、
普通の人間には見えないものが見えて普通に殴れたり、
色々と謎めいた背景が潜んでそうなので、
今後どんな風に掘り下げされてゆくのか気になります。
騒動多かれど、温泉宿らしく。
毎回何かしらの騒動が巻き起こったりするものの、
いずれも旅館という場所をうまく活かした描写で、
舞台設定をフル活用しているあたりに本作のらしさが盛り込まれてますね。
ごく普通の一般客や修学旅行生の団体も居れば、
全員が呪詛の被害者で呪いのステータス異常持ちな団体や、
かつて女将さんと激戦を繰り広げた宿敵一同がやって来たりもする。
人間の常識を超えた珍客がこれだけ居ても、
温泉に入りに来たという意味では目的は皆同じ。
確かな効能がある名湯は秘湯でも魅力的ですからね。
誰であろうとも療養する身となれば違いなど無く、
多少の騒ぎも旅先なれば許容できてしまう。
例え普段の仕事上では命のやり取りをする宿敵同士がバッティングしても、
湯けむり旅情サスペンス編のような修羅場になることを許さず、
卓球勝負であくまでも平和的に勝負することになったりもする。
何もかもが普通とは違うぶっ飛び具合なのに、
それもありかと思わせてしまうのが温泉宿の魅力か。
今年に入ってからまだ温泉に行けてないから行きたいねぇ。