カメラ(物理)は剣より強し? 『事件記者トトコ!』 1巻

事件記者トトコ! 1巻 (ビームコミックス)

事件記者トトコ! 1巻 (ビームコミックス)

東京の街を日々騒がせる事件の数々。
一大スクープを追い求め、東へ西へ飛び回っては事件に巻き込まれ・・・
表紙を見た感じではどことなく漂う大正浪漫の香り。
しかしてその実態は、近代テクノロジーが飛び交うSF要素を織り交ぜた、
報道騒動娯楽コメディ活劇となっております。

世界観としてはサクラ大戦とかが好きであれば、
多かれ少なかれ心に響くものがあるのではないでしょうか。
モダンの最先端をひた走り、
常に危険とスクープとの背中合わせに立たされながらも、
持ち前の先走り暴走と食欲魔人っぷりとでトラブルがトラブルを呼び、
騒ぎが大きくなってしまうようで解決してしまっている。

そんなキャラの残念っぷりに思わずのめり込んでしまいます。
いつの時代もアホの子は見ていて可愛いですね。
他の登場人物も総じてどこか残念で、
娯楽映画を見ているような感覚さえしてくるほど。
一体どんな騒動に巻き込まれてくれるのか、
宿敵・大暗黒仮面との捕物劇の行く末はどうなるのか、
トトコさん愛用カメラからどんな機能が飛び出してくるのか、
そして次に何を食べるのか。
ドキドキとワクワクが止まりません。


記者の魂、そして得物はカメラにあり。
さすがに江戸時代じゃありませんから、
写真を撮ると魂を吸い取られるなんて迷信も昔のこと。
スクープ映像を手にするための必須アイテムでありながらも、
当時としては一般層には手が出し難い高級品であったカメラ。
トトコさんは記者なので当然カメラを持っているわけなのですが、
文字通りそのカメラを手に戦います。

主に物理的な意味で。
実際はカメラに見せかけた秘密道具ボックスなこの一品。
無駄に多機能だったりするから困る。
利便性高すぎてちょっと欲しいぞこれ・・・
特に通信機機能でやって来る自律制御式スクーター、
その名も薙兎(ナイト)二〇〇〇は普通に使いたい。

どこかで聞いたことのある名前とかツッコんではいけません。
きっといつか喋りだすと信じてます。
と、あらゆるところでオーバーテクノロジーな要素が出てくるところが、
本作の大きな特徴だったりします。
途中から登場する女中(メイドにあらず)の桔梗さんはこう見えてもロボットだし、
バイオテクノロジーで秘境になった新宿御苑では、
ファンタジー世界に片足突っ込んでる獣人や翼竜まで出てきます。

何ともごった煮な世界観ですが、
違和感なく話に組み込んでいるあたりにエンタメ性を感じますね。
何ともSF要素との親和性のある不思議な時代です。


残念な連中が巻き起こす事件に巻き込まれるは、残念な連中。
兎にも角にも主人公のトトコさん。
開幕からして単身怪盗を追い詰め思いっきり警察の邪魔になっている上に、
捕まえるでもなく独占インタビューに挑むなど、
アホの子っぷりを如何なく発揮しています。
熱意だけはあるけれども結果が伴わず、
食欲を満たすことが第一に優先される思考回路による無茶な行動の数々。
3秒ルール?胃に入っちゃえば同じですよ。
そんな声が聞こえてきそう。
しかも年頃の女性としては残念極まりないつるぺた体型ときたもんだ。
局所的にはすごい需要があるタイプだけど、
一般的な男性からすれば溜息が漏れてしまうレベルでしょうね。
自分は需要として求める側なので全然問題ありませんが。
記者と警察が追い求める怪盗も人間臭さと残念さが共存する、
なかなかに濃い存在感を放っています。
むしろこの大暗黒仮面こそが本作で一番残念なキャラに思えて仕方がありません。

フランスかぶれの中二病で自分のことを恥ずかしい二つ名で呼んじゃうし、
女性アレルギーだったり、犯行声明出した当日に風邪で倒れてしまったり、
全てにおいてこれはひどいと言いたくなる残念さ。
トトコさんと街中でばったり鉢合わせて名乗ろうと思ったら、
食欲魔人モードに入ってたせいで全力スルーされる始末。

怪盗としても明らかに従者のアレニェさんの方が全然優秀だし、
全てにおいて格好悪いのには逆に関心してしまいますよ。
アレニェさんも大変だなぁ。
いい部下を持ったってところは羨ましくもあります。