一緒に楽しくは最大の調味料 『幸腹グラフィティ』 1巻

幸腹グラフィティ (1) (まんがタイムKRコミックス)

幸腹グラフィティ (1) (まんがタイムKRコミックス)

育ててくれた祖母を亡くし、半ば孤独の身となってしまった主人公・リョウ。
ふとしたきっかけで、はとこの少女・きりんとの週末限定暮らしが始まり・・・
中学生の身でいきなり一人身での生活になってしまうとか、
いくらなんでも酷すぎやしませんかと思うハードな始まりではありますが、
それを吹き飛ばすほどの愛情溢れるハートフルストーリーな本作。
普段当たり前のように感じていることが実は宝であること。
一人暮らしならば当然のこと、
家族が居ても時間の都合で一人だけ用意されているものを後から食べる時の、
何とも言えぬ侘しさと悲しさは常々感じるところなのに、
誰か一緒に食べる相手が居るってことの貴重さには案外気付かないもの。
同じ料理でも気分一つで感じる味も劇的に変わるのだから、
少しでもおいしくいただきたいものです。

そうした家族の食卓ってものが如何に温かいものであり、
かけがえのない大切なものであるかを改めて教えてくれますね。
誰かと一緒に食べることの楽しさが伝わってくる作品では、
ラブラブカップルが美味しく料理を食べる某同人誌がありますが、
あちらがラブコメであるのに対して本作はホームドラマと、
美味しそうなところは共通していてもストーリーは全く異なるため、
また違った気分で温かみを感じながらほっこりできる一作です。
うん、今現在家族揃って食事ができるのなんて日曜夕方くらいだし、
旅行に行けばまだしもそうそう頻繁に行くものでもないから、
数少ない機会をもう少し噛み締めつつ食べることにします。


美味しいは正義、食べたくなればなお良し。
料理ものともなれば最大のキモは何と言っても料理のビジュアル。
見た目とリアクションの両方から見て如何に食べたいと思わせるか。
その点に関しては十二分に期待に応えてくれるものになっています。
特にカラー部分に至ってはトップクラスのクオリティとも言えるほど。
表紙と裏表紙の栗ごはん、帯の天ぷらそば、中扉の肉じゃが、
描き下ろしカラーのハンバーグに焼肉。
どれも普通に食べたくなるし、むしろ夜食テロ注意ってレベル。
本編も非常に描き込みが細かくて白黒でもリアルさが伝わってきます。
寄せ鍋に始まり、筍ご飯にオムライス、手作りうな重や七輪で焼いた秋刀魚、
果てはコンビニ弁当に至るまで、
作中で出てくる料理が揃って家庭的だったりするところも、
身近に感じられて用意に味が想像できるために一層食べたくなってくるわけですよ。

中には自分の知らない食べ方もあったりしますが、
今度機会があったら試してみようと思います。
そうめんの麺つゆに卵は本当にやってみたい。

麺つゆ+卵+とろろで蕎麦は食べたことあるけど美味しかったもんなー。


食べる三人娘はリアクションも三者三様。
行動一つ取っても実によく個性と性格が現れていて、
自分も食べたくなると同時に見ていて飽きませんね。
「食べる」ということに着目すれば、
本作ではきりんの右に出るものは居ません。

見た目も性格も行動も子供っぽいけど、
我を忘れるほどにがっつく様子は食べる楽しみそのものを体現しています。
こんな風に傍から見ていても美味しそうに食べてくれるのを見ていると、
作る方にとっても作り甲斐があるだろうなぁ。
そして主人公のリョウさん。
作る側として妹のような家族ができたことで、
食べる楽しみに目覚めたのはいいのですが、
同時に何か違うものにも目覚めてしまってる気がしてなりません。
何と言っても食べてる様子が非常にエロい。

これで中学生ってぇんだから料理の腕と、
エロチシズムの両面から見ても非常に末恐ろしいです。