(百合への)愛ゆえに人は悲しまねばならぬ 『百合男子』 3巻

百合男子 (3)巻 (百合姫コミックス)

百合男子 (3)巻 (百合姫コミックス)

虚構と現実の境目が曖昧になり苦悩しながらも立ち直った啓介。
心待ちにしていた百合オンリーイベント参加当日に、
思いもよらぬトラブルへと巻き込まれることになるのだが・・・
百合専門誌の百合姫においてひたすら高い野郎率を誇り、
一際異彩を放ちまくっている本作も3巻目。

クラスメイトのガチ百合ップルを見守ることは一旦置いといて、
今までに無いほどに濃い野郎どもの百合論争が繰り広げられることになります。
前回では初回限定版に本作の趣向に反して野郎が全く出てこないという、
作品のコンセプトと180度異なる斬新な百合ドラマCDが付いてくるくらい、
激しくも恐ろしい三角関係が繰り広げられていたのに、
今回その三人はまさかの出番ゼロという大胆さ。
百合への愛ゆえに戦い、悲しみ、分かり合う。
無駄なまでに熱い男たちのバトルは心踊り、血が滾りますね。

リアルの百合ップルなんていらんかったんや・・・
本当に掲載誌を間違ってるようにしか思えないですわ。
この我が道を行きまくってる周りの作品ガン無視っぷりがあるからこそ、
一際強いインパクトを放ってるというのはありますが。
元々異質だった作品が更に磨きがかかった今回、
どこかネジの外れたバカなノリながらも熱くなれる内容でした。
百合姫表紙ネタの仕込みにもきっちり気付いてるメタなネタも健在。

ド修羅場でクライマックスを迎えたこのシリーズの顛末も、
確実に作中でネタにされてそうだなぁ。


先生・・・百合が・・・大好きです・・・
即売会で起こった襲撃事件をきっかけに始まる百合論争。
嗚呼、こいつら馬鹿だ、本物の馬鹿だ。
でも一つのことに熱中になれる馬鹿は嫌いじゃないんだぜ。
襲撃してきた主犯格の風華が実は百合男子だったとか、
ある意味お約束ながらも無駄に熱かったです。
特に一度は挫折し百合を捨てた風華の立ち直るまでのくだりは、
いかにもなジャンプ的なノリで笑いすら浮かんできますよ。

実際、今回大半がスラムダンクをリスペクトしてるとあとがきにもありますし。
気付けば表紙でメインを飾ってる風華が半ば主役みたいな状態になってましたね。
超ドヤ顔まで再現した中扉のコロンビアポーズは笑った。
一見するとチャラ男だけど意外な常識派で啓介のことを気にかけるツンデレの籠目、
ヤンキー化して道を踏み外しながらも高校ボクシングチャンピオンの一面を持つ風華と、
本作は見た目がアレな人物ほど熱いですね。
そんな中でもやっぱり別格だったのが師匠でしたがね。

自営業で安定した仕事、妻子持ちで息子も百合属性、
啓介からは師匠、風華からは先生と呼ばれ、
機動隊が爆破して突入するほど頑丈に封鎖した扉をタックルでこじ開ける。
その姿は紛れもなく完璧超人でした。


危うきを知り、一線を守り通すために団結する。
ジャンプ的なノリだったこともあって、
男たちが協力する場面が多々見受けられるところも熱い要素の一つ。
身内バレを防ぐために必死で師匠の奥さんの気を引いたり、
ビル管理者に踏み込まれたら確実に開催中止に追い込まれる乱闘騒ぎを隠蔽したり、
なかなかにやってることは無茶苦茶だけどギャグとしてはたまりませんね。
百合の身内バレってそこまで必死に隠し通さなければならない問題なのかは疑問ではありますが。
しかし本作では乱闘騒ぎだったけども、
一歩間違えば即売会中止って描写は今現在では割と際どいネタだなぁ。
脅迫事件でコミケでは黒バスエリアが壊滅したり、
東方のイベントが開催を断念したりなんてことが現に起こってますし・・・
それはとても悲しいことだけど、
作中に出てくる熱い情熱を持った参加者たちのためにも、
安心して開催できる世の中に戻ってもらいたいものですよ。
即売会キラーという行為がたった一人のエゴで、
各種参加費や会場代に印刷費と、安く見積もっても百万単位、
コミケクラスなら億単位の損害を与えることを肝に銘じなければなりません。