終わる恋と始まる恋 『レンアイガク』 2巻

アドバイスの甲斐あって彼女ができた学を見て、
自分の役目は終わったとばかりに姿を消したアイ。
しかし全ては始まりでしかなかった・・・

早稲田大で実際に講義として行われているという恋愛心理学の観点から、
極めて現実的な視点で大人の恋愛を描いた本作。
2巻目にして完結となる今回は、
いざ付き合い始めてから起こるトラブルや失恋などの重い話も交えつつ、
前回伏線だけ張られていたシーンを回収しながら最後の大勝負に出るまで、
見ただけで一生分の体験をしてお腹いっぱいになるほどの、
濃密かつスピーディーな展開が繰り広げられています。

結婚力診断の内容が普通にやってもマイナス評点になるような身にとっては、
逆に現実離れしすぎていると思ってしまうくらいに、
リアルに生々しかった前回と比べると、
今回はストーリー性が強くなってるので、
作中で言うところの恋愛落伍者から見てもリアルと言う意味でのダメージは少ないです。

ストーリー自体に重いところが多くなってる分のダメージはありますがね。
報われずに30年近く生きてきた恋愛がどんな形で決着を見ることになるのか、
そして実用的に用いることができる知識が出てくるのか、
上げて落としてまた上げる展開にドキドキしながら読んでもらいたいものです。


悪い側面を見ることも時には必要となる。
前回のラストで中田さんと付き合い始めた学ですが、
これで終わりなわけないだろと思ったら案の定。
開幕から中田さんのアレっぷりが発揮されている時点からして、
嗚呼こりゃ長く続かないなと思ってしまいますよ。
付き合い初めて4ヶ月の記念日とか面倒臭せぇ・・・
食事も分銅食ってる描写になってるくらい重いですから、
表面上では付き合ってても相当ストレスに感じてたんだろうなぁ。

互いに積み重なったものが吐き出されてからは修羅場状態で、
傍から見ててもこんなトラブルに巻き込まれるくらいだったら、
最初から一人身でいいとか思ってしまうくらいですから、
当事者のSAN値は一気にゼロでしょうね。
普通のラブコメ作品じゃ見られない昼ドラばりの修羅場には、
とにかく恋愛って怖いと思えること請け合いです。

浮気怖いよ浮気。
本格的にヒロイン化してくる大和田さんの背景にも、
これまたなかなかに重い過去が存在してたりもするんですがね。
こっちはこっちで昔好きだった男が女衒だったとかもうね・・・


片やド修羅場ってる一方で一人前進を始めたのが貞夫。
見た目がむさい、口を開けば風俗だのセクハラ発言三昧と、
恋愛とは全く縁が無さそうだったのが一気にキャラ変わりますからね。
きっかけが促されて出会い系サイトでネカマプレイをしたら、
下半身直結な連中のセクハラメッセ責めに遭って、
今までの自分がまさにこの連中そのものだったと自覚するからって理由だけど・・・

これがまた髪も短くして髭も剃り煙草も止め恋愛感情に目覚め、
しっかりともう一人の主役として機能してるんですよ。
前回はダメ男だと思ってた分、妙に格好よく見えてきてしまうから困る。
こちらもこちらで違う形で挫折を知ることになったりはするものの、
最終的には一発大逆転チャンスが巡ってきたようなのでよかったよかった。
ぃゃそれにしてもこの代わり映えを見ると、
自分改革するだけでも案外違うのかなぁ。


リアルでありながらも首を傾げたくなる心理学。
全く意識していない無意識の中に意外な事実が隠れていたりすることは、
心理学としてごく普通のことなんだろうけども、
時折本当かいな!?と思ってしまうところはありますね。
百歩譲って縄文顔がモテるのはいいとして、
頬骨が左右に張り出してるって朝鮮人かよ!?
耳垢が湿ってるって本当にそれって判定基準になるのかよ!?
と、判定基準の中にあるいくつかの要素は本当にツッコみたくなります。
見かけのタイプってさすがに耳垢は誰も見ないだろ・・・
そんなん見てたらただの変態や・・・
とは言っても別にそんなツッコミだらけのものだけではなくて、
錯誤帰属戦略(早い話が釣り橋理論)とか、
遠交近攻戦略(共通の知人を仲介役の第三者とする)とか、
心理学的にも裏付けされている理論も出てくるあたりはさすが。
やっぱ効果あるんだなぁ。
ツッコミとかとは別に驚いたのが手の人差し指と薬指のどっちが長いかで、
男性ホルモン量と大まかな性格タイプまでわかってしまうという話。
手相ってものもあるくらいだから納得はできるけど、
手を見ただけでも案外色んなことがわかるんですね。