この超展開に果たして君は付いて来られるか!? 『マジカルシェフ少女しずる』 1巻

マジカルシェフ少女しずる(1) (アース・スターコミックス)

マジカルシェフ少女しずる(1) (アース・スターコミックス)

不況による節約術が一般的となり、自炊技術の驚異的発達により、
料理に特化した超能力が発現するようになった世界。
伝説の料理人と呼ばれた母を追い求め、
料理の名門校へと入学した主人公・しずるだったが・・・
様々な作品の中でも赤面少女に定評のある水あさと氏が、
新たに手掛けるは料理バトル+魔法少女という、
題材からしてとんでもないカオス臭溢れる組み合わせな本作。
蓋を開けてみたら徹頭徹尾カオスなんて言葉では済まされないほど、
油断してると完全置いてけぼりを喰らうレベルの超展開満載で、
色んな意味で凄まじいものを見てしまったという感覚に、
思わず言葉を失ってしまうレベルです。
簡潔に言うなれば、丸一冊分ずっとソードマスターヤマトを見ているような感じ。

深く突き詰めれば恐らく本作の一話分で一巻描けるんじゃなかろうか。
最初から狙って作られたバカゲーのような内容ではありますが、
別に話が破綻しているわけでもなく、
どちらかと言えばお約束のオンパレードと言った方が適切でもあり、
料理自体は意外なまでにしっかりと作られていたりと、
ただ大味なだけの作品ではないあたり侮れません。
それにしても、掲載誌がメディアミックスを主としたアーススターなのですが、
本作もやる・・・もといやってしまうのでしょうか。
テンションだけは凄まじいことになりそうですけど。


一ページでも見逃すと付いて行けなくなるほどの超展開。
まだ最初は主人公が能力覚醒するって流れで割りと普通なのだけれども、
二話目からはキングクリムゾンでも発動したのかってくらいに本領発揮。
「生徒会長」が下っ端な更に上位の組織が存在するなんて序の口、
敵の本拠地に乗り込めば既に壊滅していて、
ライバルキャラが登場したかと思えば後半で実は・・・な正体が発覚、
唐突に大会に出場することになって主催者が黒幕、
主人公が更に覚醒して第二変身を遂げる、
勝負は基本後出し側の方が勝つ等々、
バトルものらしいお約束展開のオンパレード。
意図的にこんな風にしたのだとは思いますよ。
思いますが、それでも全てがあっという間に突きぬけすぎ。
しずるがはじめて能力を発現したら能力名が「賢者タイム」って、
別の意味で捉えてしまうととんでもないことになってしまう名前だし、

唐突にトーナメントが始まったかと思えば、
登場する選手がどこの超人オリンピックだって感じだし、

黒幕を倒すときに粉塵爆発ぶちかまして思いっきり爆殺してるくせに、
人殺しの道具じゃないだの説得力ゼロの発言しちゃってるし、
ツッコみ始めたらきりがありません。

しかも何気に話がまとまったところで終わってしまってるけれども、
巻数はしっかりと1巻と明記されてるあたり、本当に続くの?
むしろ続いてしまうんですか?
ここから新展開って超展開に更なる超展開の上書きで大変なことになりそう・・・
見たいじゃないかコンチクショウ。


実は料理は本格派。
ひたすらに話の展開が超展開のみで構成されているため、
料理も大雑把なのかと思いきや、
意外にも料理描写自体はまともに描かれており、
普通に家庭で作れそうな一工夫が凝らされています。

料理対決も弁当のみの一本に絞ったことで、
必要以上に話が広がりすぎることを避けているのと共に、
お手軽に美味しく作れることを強調しているのが嬉しいところですね。
コンパクトで冷めても保存性があり、
何よりも食べるときの楽しみが詰まっているという、
弁当として大切なことをしっかりと押さえていて、
実践してみたいと思えてしまうあたりがすごいところ。
作中で作ってるこんにゃく入りウィンナーを筆頭に、
揚げないからあげとか高野豆腐入りミートボールとか、
どんな味がするのか実際に食べてみたいわ。
見えないところの一工夫で味も変わってくる、
こうした描写は本作と言う名の料理の隠し味としてしっかりと機能してますよ。