2012年度漫画マイベスト10〜既作編〜

新作限定でのランキングもありましたが、
それだけではない既存の作品でも衝撃の展開があったり、
意外なラストで完結する作品があったりと、
途中から盛り上がってくる作品があるのも事実。
と言う事で昨年に引き続き、
初出が2012年以前で年内に最新刊が登場した作品に関しても、
既作編として挙げてみることにしましょう。

嫁姑の拳Z 2 (A.L.C.DX)

嫁姑の拳Z 2 (A.L.C.DX)

あまりのマイナーさ故に一時期は単行本が売れないことさえもネタにしながらも、
気が付けば通巻で7巻まで登場している本作。
陰鬱な描写になりがちな嫁姑戦争をここまで気持ちのいいギャグにするセンスで、
どこまでいっても変わらぬノリと大胆な展開は、
難しいことを考える必要の無い単純明快な笑いをもたらしてくれます。
巻数を増すごとに人外指数が増している気がしなくもないですが、
その超人ぶりもまたギャグとしてはトンデモっぷりに拍車をかけて、
笑いを誘うのに一役買ってます。

  • 9位:う

う(4) <完> (モーニング KC)

う(4) <完> (モーニング KC)

最初から最後まで、徹頭徹尾うなぎを食べているだけの内容ながら、
全4巻まで続くほどにネタがあったことに驚きだった一作。
近年はシラス稚魚の不作でうなぎが高騰しているために、
なかなかに手を出し難い高級料理となってきてしまっていますが、
そういう特別なものだからこそおいしくいただきたいって気持ちを、
直接食べずとも堪能できる内容になっていて、
読みながら酒でも飲みたくなる気分にさえなってきます。
最終回では当初から婚約していた彼女とようやく結納を済ませ、
ストーリー的にもきっちりと締めてくれたあたりが上手いものですよ。

ヒナまつり 4 (ビームコミックス)

ヒナまつり 4 (ビームコミックス)

超能力少女とヤクザの奇妙な同居生活を描く本作。
今までヤクザとか夜の街の方面が多かったキャラ達の他に、
最新刊では学校を中心にクラスメイトたちのキャラも掘り下げられ、
話の広がりを見せてきたところで進歩ぶりがうかがえます。
直球な単純さにしてシュールなネタの数々は、
素直に声に出して笑える高クオリティでまとまってますし、
中毒性と再読性とを兼ね備えた味のあるスルメ系ギャグです。

  • 7位:リコとハルと温泉とイルカ

リコとハルと温泉とイルカ 3 (電撃コミックス)

リコとハルと温泉とイルカ 3 (電撃コミックス)

地域振興イベントでの一件も片付いて訪れる何気ない夏の日々。
多少の百合要素も含んだスローな田舎ライフは、
ゆるい空気が流れる中にもどこか懐かしいノスタルジックな雰囲気が漂っていて、
とにかく自然に流れる空気が心地良いわけです。
何気ない生活の中にこそ輝くものが隠れている。
そんな大切だけど気付きにくいことを教えてくれる一作ですね。
アホの子っぷりが加速して止まらない星野姉妹可愛いよ。

神々の黄昏編が終了して新章に突入した本作。
それがまた戦う相手がナチスから民主党政権となったことで、
話の危険性もカオスっぷりも更に加速することとなり、
色々と言葉にはし難いような代物へと変貌してきました。
本年から始まる新章では尖閣諸島を巡る問題で、
中国相手に戦うことを匂わせてますし、
竹島絡みで韓国も出てくる可能性も否めず、
そのうち工作員に消されるんじゃないか心配になるレベル。
現実の外交がどうなるかはこれからだけど、
こちらの世界では完膚なきまでに叩き潰してほしいところです。

魔法少女プリティ☆ベル 9 (BLADE COMICS)

魔法少女プリティ☆ベル 9 (BLADE COMICS)

既に魔法少女と言うことすらもおこがましい、
あらゆる意味で規格外すぎる本作。
勿論ボディビルダーの厚志さんの存在は大きいですが、
それ以上に全面戦争の情勢やグロも辞さないハードな描写、
自重しない政治ネタなど、とにかく話題に事欠きません。
特に政治関連については下手な国家論の専門書を読むよりも、
よっぽど早くわかりやすく理解できるのではないかという程で、
回を増すほど強固に描かれているようにさえ感じてきます。
強いて言うなら、わざわざ魔法少女系の作品でやるネタじゃないよね。

  • 4位:据次タカシの憂鬱

ニートが社会復帰してモテまくりのリア充になる話。
なのですが自分のスペックを一分の活かせないヘタレぶりと、
周囲の暴走し続ける勘違いとによって全てがあらぬ方向へと巡るコメディ作品。
何かとトラブル体質で問題ごとが絶えない状況を見ていると、
羨ましいを通り越して哀れだとか、こんなリア充は嫌だと思ったりもしますが、
最近ではラブコメ描写が強まってきてなかなかの壁ドン指数を誇るようになってきました。
ヒロイン勢のスペックも全体的に高いですし、
適度なお色気も華を添えてくれてるのが嬉しいところ。
知名度は低いけどラブコメ作品としてはかなりの高クオリティですよ。
何気にきららフォワードでも最古参の作品の一つであり、
当面はゆるゆると続いてくれそうな感じですね。

けいおん!  highschool (まんがタイムKRコミックス)

けいおん! highschool (まんがタイムKRコミックス)

メインの4人が卒業した後の新たなスタートを切った軽音部。
一月違いで大学編のcollegeも発売されていますが、
高校編のこちらの方が正統な続編としての色合いが強いです。
物事には世代交代は付き物だけれども、
しっかりと自分たちの色を見つけた新世代たち。
恐らく年々伝統的にこのノリは継承されてゆくことになるのかと思ったり、
一度連載が終了した後にアンコールという形で始まった本シリーズをもって、
今度こそ原作としてのけいおん!が終了するのかと思うと、
何かと感慨深いものがありますね。
よもや1巻が発売されたときにここまで盛り上がる作品になるとは思いませんでした。

セカイ魔王 (2) (まんがタイムKRコミックス)

セカイ魔王 (2) (まんがタイムKRコミックス)

勇者とは何なのか、魔王とは何なのか。
それぞれが己のルーツを求める旅を行うファンタジー巨編。
と思わせておいて、その実は以外なまでのゆる系ノリで展開される、
スローペースなお気楽道中。
最新刊の終盤では神まで関連した世界そのものの理にまで抵触してきて、
ただゆるいだけではない一味違う内容に驚かされること請け合いで、
ただの勧善懲悪な魔王退治とは一味違う世界観には、
色々と考えさせられる要素が満載。
何気ない中にすごく深いものを内包している内容は、
既存のファンタジー観をぶち壊してくれることでしょう。

さよなら絶望先生(30)<完> (講談社コミックス)

さよなら絶望先生(30)<完> (講談社コミックス)

7年に渡る連載を終了し、
その間にはアニメ版も三期放送され、
OVAも何度となくリリースされてきた本作。
何と言っても衝撃的な終盤の展開無くしては語れません。
1巻で描かれていたことの大半が伏線であったことや、
ギャグ作品であることを忘れさせるほどのクライマックス、
完全にホラーの領域に踏み込んでいるアフターと、
全てにおいてしてやられたと言わざるを得ない。
それまでの流れに反した結末の意外性で落としてくる、
久米田マジックが見事なまでに炸裂したラストは、
7年を締め括るに相応しい内容であった、そう思います。