それは、贖罪の戦い 『魔法少女まどか☆マギカ〜The different story〜』 下巻

魔法少女まどか☆マギカ ~The different story~ (下) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)

魔法少女まどか☆マギカ ~The different story~ (下) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)

心は救われたものの時既に遅く、
ソウルジェムの魔力が尽きたことにより魔女へと成り果ててしまったさやか。
全ては己の責任と深く背負い込み、一つの覚悟を決めて戦いに赴くマミさんだったが・・・

それは何度となく繰り返された時間の中で有り得た一つの物語。
もし本編三話目でマミさんが死ななかったらというifの考えの基、
ドラマCD設定とを踏まえて集中刊行された本作もいよいよ完結編。
今回はどうあっても魔女化や円環の理から逃れられない、
ある意味安定とも言えてしまうほどのさやかの顛末を発端として、
各々が確固たる意志と覚悟をもって最期の戦いに挑む姿が描かれます。

一度決別を果たした時点から避け様の無かった、
マミさんと杏子の直接対決に始まり、
時間軸が違ってもいつもの外道っぷりを発揮しまくりのQBあり、
本編同様ここまで契約せずにきたまどかが導き出した結論から至る結末と、
最初から最後まで全てが見所で目が離せません。

まどかの願い、そしてワルプルギスの夜に挑む編成の意外性にはびっくりですよ。
しっかりと終盤はマミさんも主役ってましたからね。
最後の最後でまどかが全て持っていったと思わせつつ、
やっぱり全ての主眼はマミさん&杏子に当たっていたのだと実感できる終わり方ですし。
表紙では肝心の二人が背を向けてるのはさておき・・・
例えほむらにリセットされてしまう結末とは言え、
この結末こそがベストだと思う人も居ると信じたい。
本作にしても本編にしても杏子の本心と心意気は泣けますわー。


黒い感情に侵食される心、そのとき決めた彼女の決意は・・・
一応本作はスピンオフということで、
本来のストーリーとか全く異なった視点で話が展開してきたわけですが、
今回はメインキャラとしての面目躍如とばかりにマミさんの出番が多め。
さやかを魔女化させてしまったのは自分のせいだと言わんばかりに落ち込んで、
のっけから心中するつもりで自身が魔女化する寸前までSAN値がだだ下がりになったりと、
さすがは本編10話の「死ぬしかないじゃない」でお馴染み、
杏子射殺事件をやらかしただけあって豆腐マインドとまで呼ばれたほどの、
表面上では優雅に振る舞っても実はいっぱいいっぱいなところは健在ですね。

それでも杏子との直接対決を経て戻す前の高野豆腐くらいの強さにはなったのかな?
なので泣くと水分を吸って戻って弱くなるのは仕様です。
でも本作で辿った軌跡でなければきっとその場で自殺するか魔女化してたんだろうなぁ。
拘束する&銃をぶっ放すだけじゃない、
トラップ的な攻撃とかバリエーションの豊かさも見所の一つではないでしょうか。
前回も「ティロ・リチェルカーレ」なる跳弾アタックを披露してたし、
恐らくこの時間軸のマミさんは他の時間軸と比べても間違いなく最強クラスです。
主役特権としては本当のラストのラストである意味願いが叶えられたと考えてもいいのかな。

「魔女」は居ないけど「魔獣」と戦う運命が待ってるわけだけども・・・


もう一人の主人公が最期の直前までひた隠した本心。
ある意味マミさんよりも主人公していた杏子ですが、
本編でも明かされなかった真意が色々と明るみになり、
あれほど素直だった娘が別人のようになった言動の裏の素顔は、
涙無しには語れないシーンになってます。
上巻のときもそうだったんだけども、今回で更に杏子指数が高まったわ。
一度はマミさんを突き放した中でも悩み苦しんでいた想い。
師弟関係の蜜月の中で友達以上の特別な感情さえ抱いていた想い。
あの時傍に居てくれなかったら自分もさやかと同じく魔女化していたであろう想い。
誰かを救いたいと思い、戦ってたことは間違いじゃなかったんだ。

おりこの時間軸でもゆまを保護していたりと、
根本的には本当に世話焼きのいい子ですよまったくね。
本編での自爆とは異なる形で迎えた最期は直接描写は無く、
QBの語りでのみ描かれることとなりますが、
さぞ壮絶なことだったのでしょう・・・
作中はかなりダークな内容な反面、
カバー下はかなり遊びに入ってるので、
泣き、沈んで下がったSAN値はこちらで補充しましょう。