人体改造と生贄のトライアングル 『マジでカガク』 1巻

自称マッドサイエンティストの「みらい」に改造されそうな日々を送る少女「こもん」。
そんなある日、黒魔術使いの「のえる」が転校してきて生贄にしたいと言い寄られ・・・
以前ぱれっと誌上で月のイナバと地上の因幡を連載されていた、
あらたとしひら氏が本誌リニューアルと共に開始された新作は、
ゆるそうに見えてドタバタ劇が繰り広げられる完全オリジナルとなりました。

科学と魔術、相反する方向から飛び出す展開の数々は、
時にベタで時に予想外でドタバタぶりを楽しく演出しています。
ヘンテコ発明品とか中二病っぽくも時にガチな魔術とか、
騒動を巻き起こす種となるようなネタのピックアップぶりは、
実に抑えるところを抑えた手堅さってものがありますね。

極端に尖った特色よりはある種お約束とも言える
様々な要素の組み合わせとバリエーションで魅せる本作。
百合姫を擁する一迅社クオリティによる若干ソフト百合も相まって、
正しきガールズコメディの一つの在り方を示しているようです。
勿論キャラも可愛いし、それを眺めるだけでも十二分に楽しめますけどね。
どんな話やトンデモ設定も華やかにする魔法、それが萌え力です。


空想科学は何でもありの世界。
本作における主人公的な立場にあるみらいさん。
マッドサイエンティストを自称していたりはしますが、
そういうキャラ特有のアレっぽさは別ベクトルに向かってると言いましょうか。
狂気系ってマッドじゃなくて、残念な子って意味でのマッド。
世の中のトラブルってものはですね、
アホの子が発端になる場合の方がよっぽど怖い場合ってあるんですよ。
何をしでかすかわかりませんからね。
逆にそれが楽しみどころだったりするわけですが。
お約束の爆発オチあり、デフォルメ化したロボットの登場ありと、
トンデモ発明の数々も何かと抑えるところを抑えてます。

たまにどこぞの22世紀からやって来た青タヌキっぽい道具も出てくるのもご愛嬌。
全ての発端は故人らしきみらいの祖母に起因するあたり、
この婆さんが一体どれだけアレだったのかもっと見てみたいですね。
そうしたドタバタ展開に更に拍車をかけるのがのえるさんの存在。
出ずっぱりってほど目立っていないものの、
それが怪しい魔女っぽさを一層際立たせてたりもするし、
登場すればずれた思考や時にボケ、時にマジな魔術も繰り出して、
魅せるところではしっかりと魅せてくれてます。

全てが凝縮された黄金練成のくだりはまさに至高。
中二的なものかと思いきや・・・


周囲も次第にカオスになりゆく。
当初は実験と生贄との間で争奪戦の如きドタバタだったのが、
後半になって新キャラが登場してからは更に構図がおかしくなってきます。
名実共に自称正義の味方まで絡んでくるようになりますからね。

しかもヒーローもののような熱いキャラではなくて、
変身姿を普通に恥ずかしいと思ってる奥ゆかしさもありながら、
正義感をしっかりと持ち合わせた真面目な性格にして、
生徒会長キャラときたもんだ。
更には大食い天才児まで登場して、
片や学園転覆を目論む黒幕を更正させるべく、片や金ヅルとして、
二人からどころか四人に付け狙われることになったこもんさんの明日はいずこへ・・・
と言うか会長さん可愛いな。